校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・さわらひ
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
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やふしわかねは春のひかりをみたまふにつけてもいかてかくなからへにける月
やふしわかねは春のひかりをみたまふにつけてもいかてかくなからへにける月
日ならむとゆめのやうにのみおほえ給ゆきかふ時〱にしたかひはなとりのい
日ならむとゆめのやうにのみおほえ給ゆきかふ時〱にしたかひはなとりのい
ろをもねをもおなし心におきふしみつゝはかなきことをもゝとすゑをとりてい
ろをもねをもおなし心におきふしみつゝはかなきことをもゝとすゑをとりてい
ひかはし心ほそき世のうさもつらさもうちかたらひあはせきこえしにこそなく
ひかはし心ほそき世のうさもつらさもうちかたらひあはせきこえしにこそなく
さむかたもありしかおかしきことあはれなるふしをもきゝしる人もなきまゝに
さむかたもありしかおかしきことあはれなるふしをもきゝしる人もなきまゝに
よろつかきくらし心ひとつをくたきて宮のおはしまさすなりにしかなしさより
よろつかきくらし心ひとつをくたきて宮のおはしまさすなりにしかなしさより
もやゝうちまさりてこひしくわひしきにいかにせむとあけくるゝもしらすまと
もやゝうちまさりてこひしくわひしきにいかにせむとあけくるゝもしらすまと
はれたまへと世にとまるへきほとはかきりあるわさなりけれはしなれぬもあさ
はれたまへと世にとまるへきほとはかきりあるわさなりけれはしなれぬもあさ
ましあさりのもとよりとしあらたまりてはなに事かおはしますらむ御いのりは
ましあさりのもとよりとしあらたまりてはなに事かおはしますらむ御いのりは
たゆみなくつかうまつり侍りいまはひとゝころの御ことをなむやすからすねむ
たゆみなくつかうまつり侍りいまはひとゝころの御ことをなむやすからすねむ
しきこえさするなときこえてわらひつく〱しおかしきこにいれてこれはわら
しきこえさするなときこえてわらひつく〱しおかしきこにいれてこれはわら
はへのくやうして侍るはつをなりとてたてまつれりてはいとあしうてうたはわ
はへのくやうして侍るはつをなりとてたてまつれりてはいとあしうてうたはわ
さとかましくひきはなちてそかきたる
さとかましくひきはなちてそかきたる
きみにとてあまたの春をつみしかはつねをわすれぬはつわらひなり御前に
きみにとてあまたの春をつみしかはつねをわすれぬはつわらひなり御前に
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よみ申さしめたまへとありたいしと思まはしてよみいたしつらむとおほせはう
よみ申さしめたまへとありたいしと思まはしてよみいたしつらむとおほせはう
たの心はへもいとあはれにてなをさりにさしもおほさぬなめりとみゆることの
たの心はへもいとあはれにてなをさりにさしもおほさぬなめりとみゆることの
はをめてたくこのましけにかきつくしたまへる人の御ふみよりはこよなくめと
はをめてたくこのましけにかきつくしたまへる人の御ふみよりはこよなくめと
まりてなみたもこほるれは返事かゝせ給
まりてなみたもこほるれは返事かゝせ給
このはるはたれにかみせむなき人のかたみにつめるみねのさわらひつかひ
このはるはたれにかみせむなき人のかたみにつめるみねのさわらひつかひ
にろくとらせさせ給いとさかりにゝほひおほくおはする人のさま〱の御物お
にろくとらせさせ給いとさかりにゝほひおほくおはする人のさま〱の御物お
もひにすこしうちおもやせたまへるいとあてになまめかしきけしきまさりてむ
もひにすこしうちおもやせたまへるいとあてになまめかしきけしきまさりてむ
かし人にもおほえ給へりならひたまへりしおりはとり〱にてさらにゝたまへ
かし人にもおほえ給へりならひたまへりしおりはとり〱にてさらにゝたまへ
りともみえさりしをうちわすれてはふとそれかとおほゆるまてかよひたまへる
りともみえさりしをうちわすれてはふとそれかとおほゆるまてかよひたまへる
を中納言殿のからをたにとゝめてみたてまつる物ならましかはとあさゆふにこ
を中納言殿のからをたにとゝめてみたてまつる物ならましかはとあさゆふにこ
ひきこえ給めるにおなしくはみえたてまつり給御すくせならさりけむよとみた
ひきこえ給めるにおなしくはみえたてまつり給御すくせならさりけむよとみた
てまつる人〱はくちおしかるかの御あたりの人のかよひくるたよりに御あり
てまつる人〱はくちおしかるかの御あたりの人のかよひくるたよりに御あり
さまはたえすきゝかはしたまひけりつきせすおもひほれたまひてあたらしきと
さまはたえすきゝかはしたまひけりつきせすおもひほれたまひてあたらしきと
しともいはすいやめになむなりたまへるときゝ給てもけにうちつけの心あさゝ
しともいはすいやめになむなりたまへるときゝ給てもけにうちつけの心あさゝ
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には物したまはさりけりといとゝいまそあはれもふかくおもひしらるゝ宮はお
には物したまはさりけりといとゝいまそあはれもふかくおもひしらるゝ宮はお
はしますことのいとゝころせくありかたけれは京にわたしきこえむとおほした
はしますことのいとゝころせくありかたけれは京にわたしきこえむとおほした
ちにたりないえんなと物さはかしきころすくして中納言の君心にあまることを
ちにたりないえんなと物さはかしきころすくして中納言の君心にあまることを
もまたゝれにかはかたらはむとおほしわひて兵部卿の宮の御かたにまいりたま
もまたゝれにかはかたらはむとおほしわひて兵部卿の宮の御かたにまいりたま
へりしめやかなるゆふくれなれは宮うちなかめたまひてはしちかくそおはしま
へりしめやかなるゆふくれなれは宮うちなかめたまひてはしちかくそおはしま
しけるさうの御ことかきならしつゝれいの御心よせなるむめのかをめておはす
しけるさうの御ことかきならしつゝれいの御心よせなるむめのかをめておはす
るしつえをゝしおりてまいり給へるにほひのいとえんにめてたきをおりおかし
るしつえをゝしおりてまいり給へるにほひのいとえんにめてたきをおりおかし
うおほして
うおほして
おる人の心にかよふはなゝれやいろにはいてすしたにゝほへるとのたまへ
おる人の心にかよふはなゝれやいろにはいてすしたにゝほへるとのたまへ
は
は
みる人にかことよせける花のえを心してこそおるへかりけれわつらはしく
みる人にかことよせける花のえを心してこそおるへかりけれわつらはしく
とたはふれかはしたまへるいとよき御あはひなりこまやかなる御物かたりとも
とたはふれかはしたまへるいとよき御あはひなりこまやかなる御物かたりとも
になりてはかの山さとの御ことをそまつはいかにと宮はきこえ給中納言もすき
になりてはかの山さとの御ことをそまつはいかにと宮はきこえ給中納言もすき
にしかたのあかすかなしきことそのかみよりけふまておもひのたえぬよしおり
にしかたのあかすかなしきことそのかみよりけふまておもひのたえぬよしおり
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〱につけてあはれにもおかしくもなきみわらひみとかいふらむやうにきこえ
〱につけてあはれにもおかしくもなきみわらひみとかいふらむやうにきこえ
いて給にましてさはかりいろめかしくなみたもろなる御くせは人の御うへにて
いて給にましてさはかりいろめかしくなみたもろなる御くせは人の御うへにて
さへそてもしほるはかりになりてかゐ〱しくそあひしらひきこえ給めるそら
さへそてもしほるはかりになりてかゐ〱しくそあひしらひきこえ給めるそら
のけしきも又けにそあはれしりかほにかすみわたれるよるになりてはけしうふ
のけしきも又けにそあはれしりかほにかすみわたれるよるになりてはけしうふ
きいつるかせのけしきまたふゆめきていとさむけにおほとなふらもきえつゝや
きいつるかせのけしきまたふゆめきていとさむけにおほとなふらもきえつゝや
みはあやなきたと〱しさなれとかたみにきゝさしたまふへくもあらすつきせ
みはあやなきたと〱しさなれとかたみにきゝさしたまふへくもあらすつきせ
ぬ御物かたりをえはるけやりたまはて夜もいたうふけぬ世にためしありかたか
ぬ御物かたりをえはるけやりたまはて夜もいたうふけぬ世にためしありかたか
りける中のむつひをいてさりともいとさのみはあらさりけむとのこりありけに
りける中のむつひをいてさりともいとさのみはあらさりけむとのこりありけに
とひなしたまふそわりなき御心ならひなめるかしさりなからも物に心えたまひ
とひなしたまふそわりなき御心ならひなめるかしさりなからも物に心えたまひ
てなけかしき心のうちもあきらむはかりかつはなくさめまたあはれをもさまし
てなけかしき心のうちもあきらむはかりかつはなくさめまたあはれをもさまし
さま〱にかたらひたまふ御さまのおかしきにすかされたてまつりてけに心に
さま〱にかたらひたまふ御さまのおかしきにすかされたてまつりてけに心に
あまるまておもひむすほゝるゝことゝもすこしつゝかたりきこえ給そこよなく
あまるまておもひむすほゝるゝことゝもすこしつゝかたりきこえ給そこよなく
むねのひまあく心ちしたまふ宮もかの人ちかくわたしきこえてむとするほとの
むねのひまあく心ちしたまふ宮もかの人ちかくわたしきこえてむとするほとの
ことゝもかたらひきこえ給をいとうれしきことにも侍かなあいなく身つからの
ことゝもかたらひきこえ給をいとうれしきことにも侍かなあいなく身つからの
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あやまちとなむおもふたまへらるゝあかぬむかしのなこりをまたたつぬへきか
あやまちとなむおもふたまへらるゝあかぬむかしのなこりをまたたつぬへきか
たも侍らねはおほかたにはなにことにつけても心よせきこゆへき人となむおも
たも侍らねはおほかたにはなにことにつけても心よせきこゆへき人となむおも
ふたまふるをもしひなくやおほしめさるへきとてかのこと人となおもひわきそ
ふたまふるをもしひなくやおほしめさるへきとてかのこと人となおもひわきそ
とゆつり給し心をきてをもすこしはかたりきこえ給へといはせのもりのよふこ
とゆつり給し心をきてをもすこしはかたりきこえ給へといはせのもりのよふこ
とりめいたりしよのことはのこしたりけり心のうちにはかくなくさめかたきか
とりめいたりしよのことはのこしたりけり心のうちにはかくなくさめかたきか
たみにもけにさてこそかやうにもあつかひきこゆへかりけれとくやしきことや
たみにもけにさてこそかやうにもあつかひきこゆへかりけれとくやしきことや
う〱まさりゆけといまはかひなき物ゆへつねにかうのみおもはゝあるましき
う〱まさりゆけといまはかひなき物ゆへつねにかうのみおもはゝあるましき
心もこそいてくれたかためにもあちきなくおこかましからむと思はなるさても
心もこそいてくれたかためにもあちきなくおこかましからむと思はなるさても
おはしまさんにつけてもまことにおもひうしろみきこえんかたはまたゝれかは
おはしまさんにつけてもまことにおもひうしろみきこえんかたはまたゝれかは
とおほせは御わたりのことゝもゝ心まうけせさせ給かしこにもよきわか人わら
とおほせは御わたりのことゝもゝ心まうけせさせ給かしこにもよきわか人わら
はなともとめて人〱は心ゆきかほにいそきおもひたれといまはとてこのふし
はなともとめて人〱は心ゆきかほにいそきおもひたれといまはとてこのふし
みをあらしはてむもいみしく心ほそけれはなけかれ給ことつきせぬをさりとて
みをあらしはてむもいみしく心ほそけれはなけかれ給ことつきせぬをさりとて
も又せめて心こはくたえこもりてもたけかるましくあさからぬ中のちきりもた
も又せめて心こはくたえこもりてもたけかるましくあさからぬ中のちきりもた
えはてぬへき御すまゐをいかにおほしえたるそとのみうらみきこえ給もすこし
えはてぬへき御すまゐをいかにおほしえたるそとのみうらみきこえ給もすこし
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はことはりなれはいかゝすへからむとおもひみたれたまへりきさらきのついた
はことはりなれはいかゝすへからむとおもひみたれたまへりきさらきのついた
ちころとあれはほとちかくなるまゝにはなの木とものけしきはむものこりゆか
ちころとあれはほとちかくなるまゝにはなの木とものけしきはむものこりゆか
しくみねのかすみのたつをみすてむこともおのかとこよにてたにあらぬたひね
しくみねのかすみのたつをみすてむこともおのかとこよにてたにあらぬたひね
にていかにはしたなく人わらはれなることもこそなとよろつにつゝましく心ひ
にていかにはしたなく人わらはれなることもこそなとよろつにつゝましく心ひ
とつにおもひあかしくらしたまふ御ふくもかきりあることなれはぬきすてたま
とつにおもひあかしくらしたまふ御ふくもかきりあることなれはぬきすてたま
ふにみそきもあさき心ちそするおやひとゝころはみたてまつらさりしかはこひ
ふにみそきもあさき心ちそするおやひとゝころはみたてまつらさりしかはこひ
しきことはおもほえすその御かはりにもこのたひの衣をふかくそめむと心には
しきことはおもほえすその御かはりにもこのたひの衣をふかくそめむと心には
おほしのたまへとさすかにさるへきゆへもなきわさなれはあかすかなしきこと
おほしのたまへとさすかにさるへきゆへもなきわさなれはあかすかなしきこと
かきりなし中納言とのより御くるま御前の人〱はかせなとたてまつれたまへ
かきりなし中納言とのより御くるま御前の人〱はかせなとたてまつれたまへ
り
り
はかなしやかすみのころもたちしまに花のひもとくおりもきにけりけにい
はかなしやかすみのころもたちしまに花のひもとくおりもきにけりけにい
ろ〱いときよらにてたてまつれたまへり御わたりのほとのかつけものともな
ろ〱いときよらにてたてまつれたまへり御わたりのほとのかつけものともな
とこと〱しからぬ物からしな〱にこまやかにおほしやりつゝいとおほかり
とこと〱しからぬ物からしな〱にこまやかにおほしやりつゝいとおほかり
おりにつけてはわすれぬさまなる御心よせのありかたくはらからなともえいと
おりにつけてはわすれぬさまなる御心よせのありかたくはらからなともえいと
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かうまてはおはせぬわさそなと人〱はきこえしらすあさやかならぬふる人と
かうまてはおはせぬわさそなと人〱はきこえしらすあさやかならぬふる人と
もの心にはかゝるかたを心にしめてきこゆわかき人は時〱もみたてまつりな
もの心にはかゝるかたを心にしめてきこゆわかき人は時〱もみたてまつりな
らひていまはとことさまになりたまはむをさう〱しくいかにこひしくおほえ
らひていまはとことさまになりたまはむをさう〱しくいかにこひしくおほえ
させたまはんときこえあへり身つからはわたり給はむことあすとてのまたつと
させたまはんときこえあへり身つからはわたり給はむことあすとてのまたつと
めておはしたりれいのまらうとゐのかたにおはするにつけてもいまはやう〱
めておはしたりれいのまらうとゐのかたにおはするにつけてもいまはやう〱
物なれてわれこそ人よりさきにかうやうにもおもひそめしかなとありしさまの
物なれてわれこそ人よりさきにかうやうにもおもひそめしかなとありしさまの
たまひし心はへを思いてつゝさすかにかけはなれことのほかになとははしたな
たまひし心はへを思いてつゝさすかにかけはなれことのほかになとははしたな
めたまはさりしをわか心もてあやしうもへたゝりにしかなとむねいたくおもひ
めたまはさりしをわか心もてあやしうもへたゝりにしかなとむねいたくおもひ
つゝけられ給かいはみせしさうしのあなも思いてらるれはよりてみたまへとこ
つゝけられ給かいはみせしさうしのあなも思いてらるれはよりてみたまへとこ
の中をはおろしこめたれはいとかひなしうちにも人〱おもひいてきこえつゝ
の中をはおろしこめたれはいとかひなしうちにも人〱おもひいてきこえつゝ
うちひそみあへり中の宮はましてもよをさるゝ御なみたのかはにあすのわたり
うちひそみあへり中の宮はましてもよをさるゝ御なみたのかはにあすのわたり
もおほえ給はすほれ〱しけにてなかめふしたまへるにつきころのつもりもそ
もおほえ給はすほれ〱しけにてなかめふしたまへるにつきころのつもりもそ
こはかとなけれといふせく思たまへらるゝをかたはしもあきらめきこえさせて
こはかとなけれといふせく思たまへらるゝをかたはしもあきらめきこえさせて
なくさめ侍らはやれいのはしたなくなさしはなたせたまひそいとゝあらぬ世の
なくさめ侍らはやれいのはしたなくなさしはなたせたまひそいとゝあらぬ世の
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心ちし侍りときこえ給へれはゝしたなしとおもはれたてまつらむとしもおもは
心ちし侍りときこえ給へれはゝしたなしとおもはれたてまつらむとしもおもは
ねといさや心ちもれいのやうにもおほえすかきみたりつゝいとゝはか〱しか
ねといさや心ちもれいのやうにもおほえすかきみたりつゝいとゝはか〱しか
らぬひかこともやとつゝましうてなとくるしけにおほいたれといとおしなとこ
らぬひかこともやとつゝましうてなとくるしけにおほいたれといとおしなとこ
れかれきこえて中のさうしのくちにてたいめんしたまへりいと心はつかしけに
れかれきこえて中のさうしのくちにてたいめんしたまへりいと心はつかしけに
なまめきてまたこのたひはねひまさりたまひにけりとめもおとろくまてにほひ
なまめきてまたこのたひはねひまさりたまひにけりとめもおとろくまてにほひ
おほく人にもにぬようゐなとあなめてたの人やとのみゝえたまへるをひめ宮は
おほく人にもにぬようゐなとあなめてたの人やとのみゝえたまへるをひめ宮は
おもかけさらぬ人の御ことをさへおもひいてきこえ給にいとあはれとみたてま
おもかけさらぬ人の御ことをさへおもひいてきこえ給にいとあはれとみたてま
つり給つきせぬ御ものかたりなともけふはこといみすへくやなといひさしつゝ
つり給つきせぬ御ものかたりなともけふはこといみすへくやなといひさしつゝ
わたらせ給へきところちかくこのころすくしてうつろひ侍へけれはよ中あか月
わたらせ給へきところちかくこのころすくしてうつろひ侍へけれはよ中あか月
とつき〱しき人のいひ侍めるなにことのをりにもうとからすおほしのたまは
とつき〱しき人のいひ侍めるなにことのをりにもうとからすおほしのたまは
せは世に侍らむかきりはきこえさせうけ給はりてすくさまほしくなん侍るをい
せは世に侍らむかきりはきこえさせうけ給はりてすくさまほしくなん侍るをい
かゝはおほしめすらむ人の心さま〱に侍る世なれはあいなくやなとひとかた
かゝはおほしめすらむ人の心さま〱に侍る世なれはあいなくやなとひとかた
にもえこそおもひ侍らねときこえ給へはやとをはかれしと思心ふかくはへるを
にもえこそおもひ侍らねときこえ給へはやとをはかれしと思心ふかくはへるを
ちかくなとのたまはするにつけてもよろつにみたれ侍りてきこえさせやるへき
ちかくなとのたまはするにつけてもよろつにみたれ侍りてきこえさせやるへき
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かたもなくなと所〱いひけちていみしく物あはれとおもひたまへるけはひな
かたもなくなと所〱いひけちていみしく物あはれとおもひたまへるけはひな
といとようおほえたまへるを心からよその物にみなしつるといとくやしくおも
といとようおほえたまへるを心からよその物にみなしつるといとくやしくおも
ひゐたまへれとかひなけれはそのよのことかけてもいはすわすれにけるにやと
ひゐたまへれとかひなけれはそのよのことかけてもいはすわすれにけるにやと
みゆるまてけさやかにもてなしたまへり御まへちかきこうはいのいろもかもな
みゆるまてけさやかにもてなしたまへり御まへちかきこうはいのいろもかもな
つかしきにうくひすたにみすくしかたけにうちなきてわたるめれはましてはる
つかしきにうくひすたにみすくしかたけにうちなきてわたるめれはましてはる
やむかしのと心をまとはしたまふとちの御ものかたりにおりあはれなりかしか
やむかしのと心をまとはしたまふとちの御ものかたりにおりあはれなりかしか
せのさとふきいるゝにはなのかもまらうとの御にほひもたち花ならねとむかし
せのさとふきいるゝにはなのかもまらうとの御にほひもたち花ならねとむかし
おもひいてらるゝつまなりつれ〱のまきらはしにも世のうきなくさめにも心
おもひいてらるゝつまなりつれ〱のまきらはしにも世のうきなくさめにも心
とゝめてもてあそひたまひし物をなと心にあまりたまへは
とゝめてもてあそひたまひし物をなと心にあまりたまへは
みる人もあらしにまよふ山さとにむかしおほゆる花のかそするいふとてな
みる人もあらしにまよふ山さとにむかしおほゆる花のかそするいふとてな
くほのかにてたえ〱きこえたるをなつかしけにうちすんしなして
くほのかにてたえ〱きこえたるをなつかしけにうちすんしなして
そてふれしむめはかはらぬにほひにてねこめうつろふやとやことなるたえ
そてふれしむめはかはらぬにほひにてねこめうつろふやとやことなるたえ
ぬなみたをさまよくのこひかくしてことおほくもあらすまたも猶かやうにてな
ぬなみたをさまよくのこひかくしてことおほくもあらすまたも猶かやうにてな
むなにこともきこえさせよかるへきなときこえをきてたち給ぬ御わたりにある
むなにこともきこえさせよかるへきなときこえをきてたち給ぬ御わたりにある
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へきことゝも人〱にのたまひをくこのやともりにかのひけかちのとのゐ人な
へきことゝも人〱にのたまひをくこのやともりにかのひけかちのとのゐ人な
とはさふらふへけれはこのわたりのちかき御さうともなとにそのことゝもゝの
とはさふらふへけれはこのわたりのちかき御さうともなとにそのことゝもゝの
たまひあつけなとまめやかなることゝもをさへさためをき給弁そかやうの御と
たまひあつけなとまめやかなることゝもをさへさためをき給弁そかやうの御と
もにもおもひかけすなかきいのちいとつらくおほえ侍るを人もゆゝしくみおも
もにもおもひかけすなかきいのちいとつらくおほえ侍るを人もゆゝしくみおも
ふへけれはいまは世にある物ともひとにしられ侍らしとてかたちもかへてける
ふへけれはいまは世にある物ともひとにしられ侍らしとてかたちもかへてける
をしゐてめしいてゝいとあはれとみたまふれいのむかし物かたりなとせさせ給
をしゐてめしいてゝいとあはれとみたまふれいのむかし物かたりなとせさせ給
てこゝには猶とき〱はまいりくへきをいとたつきなく心ほそかるへきにかく
てこゝには猶とき〱はまいりくへきをいとたつきなく心ほそかるへきにかく
て物したまはんはいとあはれにうれしかるへきことになむなとえもいひやらす
て物したまはんはいとあはれにうれしかるへきことになむなとえもいひやらす
なき給いとふにはえてのひ侍るいのちのつらくまたいかにせよとてうちすてさ
なき給いとふにはえてのひ侍るいのちのつらくまたいかにせよとてうちすてさ
せ給けんとうらめしくなへての世をおもひたまへしつむにつみもいかにふかく
せ給けんとうらめしくなへての世をおもひたまへしつむにつみもいかにふかく
侍らむと思けることゝもをうれへかけきこゆるもかたくなしけなれといとよく
侍らむと思けることゝもをうれへかけきこゆるもかたくなしけなれといとよく
いひなくさめ給いたくねひにたれとむかしきよけなりけるなこりをそきすてた
いひなくさめ給いたくねひにたれとむかしきよけなりけるなこりをそきすてた
れはひたひのほとさまかはれるにすこしわかくなりてさるかたにみやひかなり
れはひたひのほとさまかはれるにすこしわかくなりてさるかたにみやひかなり
おもひわひてはなとかゝるさまにもなしたてまつらさりけむそれにのふるやう
おもひわひてはなとかゝるさまにもなしたてまつらさりけむそれにのふるやう
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もやあらましさてもいかに心ふかくかたらひきこえてあらましなとひとかたな
もやあらましさてもいかに心ふかくかたらひきこえてあらましなとひとかたな
らすおほえ給にこの人さへうらやましけれはかくろへたる木丁をすこしひきや
らすおほえ給にこの人さへうらやましけれはかくろへたる木丁をすこしひきや
りてこまかにそかたらひ給けにむけにおもひほけたるさまなから物うちいひた
りてこまかにそかたらひ給けにむけにおもひほけたるさまなから物うちいひた
るけしきようゐくちおしからすゆへありける人のなこりとみえたり
るけしきようゐくちおしからすゆへありける人のなこりとみえたり
さきにたつなみたのかはにみをなけは人にをくれぬいのちならましとうち
さきにたつなみたのかはにみをなけは人にをくれぬいのちならましとうち
ひそみきこゆそれもいとつみふかゝなることにこそかのきしにいたることなと
ひそみきこゆそれもいとつみふかゝなることにこそかのきしにいたることなと
かさしもあるましきことにてさへふかきそこにしつみすくさむもあいなしすへ
かさしもあるましきことにてさへふかきそこにしつみすくさむもあいなしすへ
てなへてむなしくおもひとるへき世になむなとの給
てなへてむなしくおもひとるへき世になむなとの給
身をなけむなみたのかはにしつみてもこひしきせゝにわすれしもせしいか
身をなけむなみたのかはにしつみてもこひしきせゝにわすれしもせしいか
ならむ世にすこしもおもひなくさむることありなむとはてもなき心ちし給かへ
ならむ世にすこしもおもひなくさむることありなむとはてもなき心ちし給かへ
らむかたもなくなかめられて日もくれにけれとすゝろにたひねせむも人のとか
らむかたもなくなかめられて日もくれにけれとすゝろにたひねせむも人のとか
むることやとあひなけれは返たまひぬおもほしのたまへるさまをかたりて弁は
むることやとあひなけれは返たまひぬおもほしのたまへるさまをかたりて弁は
いとゝなくさめかたくゝれまとひたりみな人は心ゆきたるけしきにて物ぬひい
いとゝなくさめかたくゝれまとひたりみな人は心ゆきたるけしきにて物ぬひい
となみつゝおひゆかめるかたちもしらすつくろひさまよふにいよ〱やつして
となみつゝおひゆかめるかたちもしらすつくろひさまよふにいよ〱やつして
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人はみないそきたつめるそてのうらにひとりもしほをたるゝあま哉とうれ
人はみないそきたつめるそてのうらにひとりもしほをたるゝあま哉とうれ
へきこゆれは
へきこゆれは
しほたるゝあまの衣にことなれやうきたるなみにぬるゝわかそて世にすみ
しほたるゝあまの衣にことなれやうきたるなみにぬるゝわかそて世にすみ
つかむこともいとありかたかるへきわさとおほゆれはさまにしたかひてこゝを
つかむこともいとありかたかるへきわさとおほゆれはさまにしたかひてこゝを
はあれはてしとなむおもふをさらはたいめんもありぬへけれとしはしのほとも
はあれはてしとなむおもふをさらはたいめんもありぬへけれとしはしのほとも
心ほそくてたちとまりたまふをみをくにいとゝ心もゆかすなむかゝるかたちな
心ほそくてたちとまりたまふをみをくにいとゝ心もゆかすなむかゝるかたちな
る人もかならすひたふるにしもたえこもらぬわさなめるを猶世のつねにおもひ
る人もかならすひたふるにしもたえこもらぬわさなめるを猶世のつねにおもひ
なして時〱もみえ給へなといとなつかしくかたらひ給むかしの人のもてつか
なして時〱もみえ給へなといとなつかしくかたらひ給むかしの人のもてつか
ひたまひしさるへき御てうとゝもなとはみなこの人にとゝめをき給てかく人よ
ひたまひしさるへき御てうとゝもなとはみなこの人にとゝめをき給てかく人よ
りふかくおもひしつみたまへるをみれはさきの世もとりわきたるちきりもや物
りふかくおもひしつみたまへるをみれはさきの世もとりわきたるちきりもや物
したまひけむとおもふさへむつましくあはれになむとのたまふにいよ〱わら
したまひけむとおもふさへむつましくあはれになむとのたまふにいよ〱わら
はへのこひてなくやうに心おさめんかたなくおほゝれゐたりみなかきはらひよ
はへのこひてなくやうに心おさめんかたなくおほゝれゐたりみなかきはらひよ
ろつとりしたゝめて御くるまともよせて御せんの人〱四ゐ五ゐいとおほかり
ろつとりしたゝめて御くるまともよせて御せんの人〱四ゐ五ゐいとおほかり
御身つからもいみしうおはしまさまほしけれとこと〱しくなりて中〱あし
御身つからもいみしうおはしまさまほしけれとこと〱しくなりて中〱あし
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かるへけれはたゝしのひたるさまにもてなして心もとなくおほさる中納言殿よ
かるへけれはたゝしのひたるさまにもてなして心もとなくおほさる中納言殿よ
りも御せんの人かすおほくたてまつれたまへりおほかたのことをこそ宮よりは
りも御せんの人かすおほくたてまつれたまへりおほかたのことをこそ宮よりは
おほしをきつめれこまやかなるうち〱の御あつかひはたゝこの殿よりおもひ
おほしをきつめれこまやかなるうち〱の御あつかひはたゝこの殿よりおもひ
よらぬことなくとふらひきこえ給日くれぬへしとうちにもとにもゝよほしきこ
よらぬことなくとふらひきこえ給日くれぬへしとうちにもとにもゝよほしきこ
ゆるに心あはたゝしくいつちならむとおもふにもいとはかなくかなしとのみお
ゆるに心あはたゝしくいつちならむとおもふにもいとはかなくかなしとのみお
もほえたまふに御くるまにのるたいふの君といふ人のいふ
もほえたまふに御くるまにのるたいふの君といふ人のいふ
ありふれはうれしきせにもあひけるを身をうちかはになけてましかはうち
ありふれはうれしきせにもあひけるを身をうちかはになけてましかはうち
ゑみたるを弁のあまの心はへにこよなうもあるかなと心つきなうもみたまふい
ゑみたるを弁のあまの心はへにこよなうもあるかなと心つきなうもみたまふい
まひとり
まひとり
すきにしかこひしきこともわすれねとけふはたまつもゆく心かないつれも
すきにしかこひしきこともわすれねとけふはたまつもゆく心かないつれも
としへたる人〱にてみなかの御かたをは心よせましきこえためりしをいまは
としへたる人〱にてみなかの御かたをは心よせましきこえためりしをいまは
かくおもひあらためてこといみするも心うの世やとおほえたまへは物もいはれ
かくおもひあらためてこといみするも心うの世やとおほえたまへは物もいはれ
たまはすみちのほとのはるけくはけしき山みちのありさまをみたまふにそつら
たまはすみちのほとのはるけくはけしき山みちのありさまをみたまふにそつら
きにのみおもひなされし人の御中のかよひをことはりのたえまなりけりとすこ
きにのみおもひなされし人の御中のかよひをことはりのたえまなりけりとすこ
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しおほししられける七日の月のさやかにさしいてたるかけおかしくかすみたる
しおほししられける七日の月のさやかにさしいてたるかけおかしくかすみたる
をみたまひつゝいとゝほきにならはすくるしけれはうちなかめられて
をみたまひつゝいとゝほきにならはすくるしけれはうちなかめられて
なかむれは山よりいてゝゆく月も世にすみわひてやまにこそいれさまかは
なかむれは山よりいてゝゆく月も世にすみわひてやまにこそいれさまかは
りてつゐにいかならむとのみあやうくゆくすゑうしろめたきにとしころなにこ
りてつゐにいかならむとのみあやうくゆくすゑうしろめたきにとしころなにこ
とをかおもひけんとそとりかへさまほしきやよひうちすきてそおはしつきたる
とをかおもひけんとそとりかへさまほしきやよひうちすきてそおはしつきたる
みもしらぬさまにめもかゝやくやうなる殿つくりのみつはよつはなる中にひき
みもしらぬさまにめもかゝやくやうなる殿つくりのみつはよつはなる中にひき
いれてみやいつしかとまちおはしましけれは御くるまのもとに身つからよらせ
いれてみやいつしかとまちおはしましけれは御くるまのもとに身つからよらせ
給ておろしたてまつり給御しつらひなとあるへきかきりして女はうのつほね
給ておろしたてまつり給御しつらひなとあるへきかきりして女はうのつほね
〱まて御心とゝめさせ給けるほとしるくみえていとあらまほしけなりいかは
〱まて御心とゝめさせ給けるほとしるくみえていとあらまほしけなりいかは
かりのことにかとみえたまへる御ありさまのにはかにかくさたまりたまへはお
かりのことにかとみえたまへる御ありさまのにはかにかくさたまりたまへはお
ほろけならすおほさるゝことなめりと世人も心にくゝおもひおとろきけり中納
ほろけならすおほさるゝことなめりと世人も心にくゝおもひおとろきけり中納
言は三条の宮にこの廿よ日のほとにわたりたまはんとてこのころはひゝにおは
言は三条の宮にこの廿よ日のほとにわたりたまはんとてこのころはひゝにおは
しつゝみたまふにこの院ちかきほとなれはけはひもきかむとてよふくるまてお
しつゝみたまふにこの院ちかきほとなれはけはひもきかむとてよふくるまてお
はしけるにたてまつれたまへる御せんの人〱かへりまいりてありさまなとか
はしけるにたてまつれたまへる御せんの人〱かへりまいりてありさまなとか
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たりきこゆいみしう御心にいりてもてなしたまふなるをきゝ給にもかつはうれ
たりきこゆいみしう御心にいりてもてなしたまふなるをきゝ給にもかつはうれ
しき物からさすかにわか心なからおこかましくむねうちつふれてものにもかな
しき物からさすかにわか心なからおこかましくむねうちつふれてものにもかな
やとかへす〱ひとりこたれて
やとかへす〱ひとりこたれて
しなてるやにほのみつうみにこく舟のまほならねともあひみし物をとそい
しなてるやにほのみつうみにこく舟のまほならねともあひみし物をとそい
ひくたさまほしき右のおほとのは六のきみを宮にたてまつり給はんことこの月
ひくたさまほしき右のおほとのは六のきみを宮にたてまつり給はんことこの月
にとおほしさためたりけるにかくおもひのほかの人をこのほとよりさきにとお
にとおほしさためたりけるにかくおもひのほかの人をこのほとよりさきにとお
ほしかほにかしつきすゑたまひてはなれおはすれはいと物しけにおほしたりと
ほしかほにかしつきすゑたまひてはなれおはすれはいと物しけにおほしたりと
きゝ給もいとおしけれは御ふみは時〱たてまつり給御もきのこと世にひゝき
きゝ給もいとおしけれは御ふみは時〱たてまつり給御もきのこと世にひゝき
ていそき給へるをのへたまはんも人わらへなるへけれははつかあまりにきせた
ていそき給へるをのへたまはんも人わらへなるへけれははつかあまりにきせた
てまつり給おなしゆかりにめつらしけなくともこの中納言をよそ人にゆつらむ
てまつり給おなしゆかりにめつらしけなくともこの中納言をよそ人にゆつらむ
かくちおしきにさもやなしてましとしころ人しれぬものにおもひけむ人をもな
かくちおしきにさもやなしてましとしころ人しれぬものにおもひけむ人をもな
くなしてもの心ほそくなかめゐたまふなるをなとおほしよりてさるへき人して
くなしてもの心ほそくなかめゐたまふなるをなとおほしよりてさるへき人して
けしきとらせ給けれと世のはかなさをめにちかくみしにいと心うく身もゆゝし
けしきとらせ給けれと世のはかなさをめにちかくみしにいと心うく身もゆゝし
うおほゆれはいかにも〱さやうのありさまは物うくなんとすさましけなるよ
うおほゆれはいかにも〱さやうのありさまは物うくなんとすさましけなるよ
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しきゝ給ていかてかこのきみさへおほな〱こといつることを物うくはもてな
しきゝ給ていかてかこのきみさへおほな〱こといつることを物うくはもてな
すへきそとうらみたまひけれとしたしき御中らひなからも人さまのいと心はつ
すへきそとうらみたまひけれとしたしき御中らひなからも人さまのいと心はつ
かしけに物し給へはえしゐてしもきこえうこかしたまはさりけりはなさかりの
かしけに物し給へはえしゐてしもきこえうこかしたまはさりけりはなさかりの
ほと二条の院のさくらをみやり給にぬしなきやとのまつ思やられたまへは心や
ほと二条の院のさくらをみやり給にぬしなきやとのまつ思やられたまへは心や
すくやなとひとりこちあまりて宮の御もとにまいりたまへりこゝかちにおはし
すくやなとひとりこちあまりて宮の御もとにまいりたまへりこゝかちにおはし
ましつきていとようすみなれたまひにたれはめやすのわさやとみたてまつるも
ましつきていとようすみなれたまひにたれはめやすのわさやとみたてまつるも
のかられいのいかにそやおほゆる心のそひたるそあやしきやされとしちの御心
のかられいのいかにそやおほゆる心のそひたるそあやしきやされとしちの御心
はへはいとあはれにうしろやすくそ思きこえ給けるなにくれと御物かたりきこ
はへはいとあはれにうしろやすくそ思きこえ給けるなにくれと御物かたりきこ
えかはしたまひてゆふつかた宮は内へまいり給はんとて御くるまのさうそくし
えかはしたまひてゆふつかた宮は内へまいり給はんとて御くるまのさうそくし
て人〱おほくまいりあつまりなとすれはたちいて給てたいの御かたへまいり
て人〱おほくまいりあつまりなとすれはたちいて給てたいの御かたへまいり
たまへり山さとのけはひゝきかへてみすのうち心にくゝすみなしておかしけな
たまへり山さとのけはひゝきかへてみすのうち心にくゝすみなしておかしけな
るわらはのすきかけほのみゆるして御せうそこきこえ給へれは御しとねさしい
るわらはのすきかけほのみゆるして御せうそこきこえ給へれは御しとねさしい
てゝむかしの心しれる人なるへしいてきて御返きこゆあさゆふのへたてもある
てゝむかしの心しれる人なるへしいてきて御返きこゆあさゆふのへたてもある
ましうおもふたまへらるゝほとなからそのことゝなくてきこえさせんも中〱
ましうおもふたまへらるゝほとなからそのことゝなくてきこえさせんも中〱
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なれ〱しきとかめやとつゝみ侍るほとに世中かはりにたる心ちのみそし侍る
なれ〱しきとかめやとつゝみ侍るほとに世中かはりにたる心ちのみそし侍る
や御まへのこすゑもかすみへたてゝみえ侍るにあはれなることおほくも侍るか
や御まへのこすゑもかすみへたてゝみえ侍るにあはれなることおほくも侍るか
なときこえてうちなかめて物し給けしき心くるしけなるをけにおはせましかは
なときこえてうちなかめて物し給けしき心くるしけなるをけにおはせましかは
おほつかなからすゆき返かたみに花のいろとりのこゑをもをりにつけつゝすこ
おほつかなからすゆき返かたみに花のいろとりのこゑをもをりにつけつゝすこ
し心ゆきてすくしつへかりける世をなとおほしいつるにつけてはひたふるにた
し心ゆきてすくしつへかりける世をなとおほしいつるにつけてはひたふるにた
えこもりたまへりしすまゐの心ほそさよりもあかすかなしうくちおしきことそ
えこもりたまへりしすまゐの心ほそさよりもあかすかなしうくちおしきことそ
いとゝまさりける人〱も世のつねにうと〱しくなもてなしきこえさせ給そ
いとゝまさりける人〱も世のつねにうと〱しくなもてなしきこえさせ給そ
かきりなき御心のほとをはいましもこそみたてまつりしらせたまふさまをもみ
かきりなき御心のほとをはいましもこそみたてまつりしらせたまふさまをもみ
えたてまつらせたまふへけれなときこゆれとひとつてならすふとさしいてきこ
えたてまつらせたまふへけれなときこゆれとひとつてならすふとさしいてきこ
えむことのなをつゝましきをやすらひたまふほとに宮いてたまはんとて御まか
えむことのなをつゝましきをやすらひたまふほとに宮いてたまはんとて御まか
り申しにわたりたまへりいときよらにひきつくろひけさうしたまひてみるかひ
り申しにわたりたまへりいときよらにひきつくろひけさうしたまひてみるかひ
ある御さまなり中納言はこなたになりけりとみたまひてなとかむけにさしはな
ある御さまなり中納言はこなたになりけりとみたまひてなとかむけにさしはな
ちてはいたしすゑたまへる御あたりにはあまりあやしと思まてうしろやすかり
ちてはいたしすゑたまへる御あたりにはあまりあやしと思まてうしろやすかり
し心よせをわかためはおこかましきこともやとおほゆれとさすかにむけにへた
し心よせをわかためはおこかましきこともやとおほゆれとさすかにむけにへた
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ておほからむはつみもこそうれちかやかにてむかし物かたりもうちかたらひた
ておほからむはつみもこそうれちかやかにてむかし物かたりもうちかたらひた
まへかしなときこえ給ものからさはありともあまり心ゆるひせんもまたいかに
まへかしなときこえ給ものからさはありともあまり心ゆるひせんもまたいかに
そやうたかはしきしたの心にそあるやとうちかへしのたまへはひとかたならす
そやうたかはしきしたの心にそあるやとうちかへしのたまへはひとかたならす
わつらはしけれとわか御心にもあはれふかくおもひしられにし人の御心をいま
わつらはしけれとわか御心にもあはれふかくおもひしられにし人の御心をいま
しもをろかなるへきならねはかの人もおもひのたまふめるやうにいにしへの御
しもをろかなるへきならねはかの人もおもひのたまふめるやうにいにしへの御
かはりとなすらへきこえてかうおもひしりけりとみえたてまつるふしもあらは
かはりとなすらへきこえてかうおもひしりけりとみえたてまつるふしもあらは
やとはおほせとさすかにとかくやとかた〱にやすからすきこえなしたまへは
やとはおほせとさすかにとかくやとかた〱にやすからすきこえなしたまへは
くるしうおほされけり
くるしうおほされけり