校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・こうはい
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
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Michi Kigoshi
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Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
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その比按察大納言ときこゆるは故致仕のおとゝの次郎なりうせ給にし右衛門督
その比按察大納言ときこゆるは故致仕のおとゝの次郎なりうせ給にし右衛門督
のさしつきよわらはよりらう〱しうはなやかなる心はへものし給し人にて成
のさしつきよわらはよりらう〱しうはなやかなる心はへものし給し人にて成
のほりたまふ年月にそへてまいていとよにあるかひありあらまほしうもてなし
のほりたまふ年月にそへてまいていとよにあるかひありあらまほしうもてなし
御おほえいとやむことなかりける北の方ふたり物し給ひしをもとよりのはなく
御おほえいとやむことなかりける北の方ふたり物し給ひしをもとよりのはなく
なり給ていまものし給は後のおほきおとゝの御むすめまきはしらはなれかたく
なり給ていまものし給は後のおほきおとゝの御むすめまきはしらはなれかたく
したまひしきみを式部卿の宮にて故兵部卿のみこにあはせたてまつり給へりし
したまひしきみを式部卿の宮にて故兵部卿のみこにあはせたてまつり給へりし
を御子うせ給て後しのひつゝかよひ給しかと年月ふれはえさしもはゝかり給は
を御子うせ給て後しのひつゝかよひ給しかと年月ふれはえさしもはゝかり給は
ぬなめり御子はこ北のかたの御はらに二人のみそおはしけれはさう〱しとて
ぬなめり御子はこ北のかたの御はらに二人のみそおはしけれはさう〱しとて
神仏にいのりていまの御はらにそおとこ君ひとりまうけ給へるこ宮の御かたに
神仏にいのりていまの御はらにそおとこ君ひとりまうけ給へるこ宮の御かたに
女きみひとゝころおはすへたてわかすいつれをもおなしことおもひきこえかは
女きみひとゝころおはすへたてわかすいつれをもおなしことおもひきこえかは
し給へるををの〱御かたの人なとはうるはしうもあらぬこゝろはへうちまし
し給へるををの〱御かたの人なとはうるはしうもあらぬこゝろはへうちまし
りなまくね〱しきこともいてくる時〻あれと北の方いとはれ〱しくいまめ
りなまくね〱しきこともいてくる時〻あれと北の方いとはれ〱しくいまめ
きたる人にてつみなくとりなし我御かたさまにくるしかるへきことをもなたら
きたる人にてつみなくとりなし我御かたさまにくるしかるへきことをもなたら
かにきゝなしおもひなをし給へはきゝにくからてめやすかりけり君たちおなし
かにきゝなしおもひなをし給へはきゝにくからてめやすかりけり君たちおなし
Page 1448
ほとにすき〱おとなひ給ぬれは御裳なときせたてまつり給七間のしむてんひ
ほとにすき〱おとなひ給ぬれは御裳なときせたてまつり給七間のしむてんひ
ろくおほきにつくりて南おもてに大納言殿おほいきみ西に中の君ひんかしに宮
ろくおほきにつくりて南おもてに大納言殿おほいきみ西に中の君ひんかしに宮
の御かたとすませたてまつり給へりおほかたにうちおもふ程はちゝ宮のおはせ
の御かたとすませたてまつり給へりおほかたにうちおもふ程はちゝ宮のおはせ
ぬ心くるしきやうなれとこなたかなたの御たから物おほくなとしてうち〱の
ぬ心くるしきやうなれとこなたかなたの御たから物おほくなとしてうち〱の
きしきありさまなと心にくゝけたかくなともてなしてけはひあらまほしくおは
きしきありさまなと心にくゝけたかくなともてなしてけはひあらまほしくおは
すれいのかくかしつき給きこえありてつき〱にしたかひつゝきこえ給人おほ
すれいのかくかしつき給きこえありてつき〱にしたかひつゝきこえ給人おほ
くうち春宮より御けしきあれと内には中宮おはしますいかはかりの人かはかの
くうち春宮より御けしきあれと内には中宮おはしますいかはかりの人かはかの
御けはひにならひきこえむさりとておもひをとりひけせんもかひなかるへし春
御けはひにならひきこえむさりとておもひをとりひけせんもかひなかるへし春
宮には右大臣殿のならふ人なけにてさふらひ給はきしろひにくけれとさのみい
宮には右大臣殿のならふ人なけにてさふらひ給はきしろひにくけれとさのみい
ひてやは人にまさらむとおもふ女こを宮つかへにおもひたえてはなにのほいか
ひてやは人にまさらむとおもふ女こを宮つかへにおもひたえてはなにのほいか
はあらむとおほしたちてまいらせたてまつり給ふ十七八のほとにてうつくしう
はあらむとおほしたちてまいらせたてまつり給ふ十七八のほとにてうつくしう
にほひおほかるかたちし給へり中の君もうちすかひてあてになまめかしうすみ
にほひおほかるかたちし給へり中の君もうちすかひてあてになまめかしうすみ
たるさまはまさりてをかしうおはすめれはたゝ人にてはあたらしくみせまうき
たるさまはまさりてをかしうおはすめれはたゝ人にてはあたらしくみせまうき
御さまを兵部卿の宮のさもおほしたらはなとおほしたる此わか君をうちにてな
御さまを兵部卿の宮のさもおほしたらはなとおほしたる此わか君をうちにてな
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とみつけ給ふ時はめしまとはしたはふれかたきにし給心はへありておくおしは
とみつけ給ふ時はめしまとはしたはふれかたきにし給心はへありておくおしは
からるゝまみひたいつき也せうとをみてのみはえやましと大納言に申せよなと
からるゝまみひたいつき也せうとをみてのみはえやましと大納言に申せよなと
の給かくるをさなむときこゆれはうちゑみていとかひありとおほしたり人にお
の給かくるをさなむときこゆれはうちゑみていとかひありとおほしたり人にお
とらむ宮つかひよりは此宮にこそはよろしからむをんなこはみせたてまつらま
とらむ宮つかひよりは此宮にこそはよろしからむをんなこはみせたてまつらま
ほしけれ心ゆくにまかせてかしつきてみたてまつらんにいのちのひぬへき宮の
ほしけれ心ゆくにまかせてかしつきてみたてまつらんにいのちのひぬへき宮の
御さまなりとの給ひなからまつ春宮の御ことをいそき給てかすかのかみの御こ
御さまなりとの給ひなからまつ春宮の御ことをいそき給てかすかのかみの御こ
とはりも我よにやもしいてきて故おとゝの院の女御の御ことをむねいたくおほ
とはりも我よにやもしいてきて故おとゝの院の女御の御ことをむねいたくおほ
してやみにしなくさめのこともあらなむとこゝろのうちにいのりてまいらせた
してやみにしなくさめのこともあらなむとこゝろのうちにいのりてまいらせた
てまつり給ついとゝきめき給よし人〻きこゆかゝる御ましらひのなれ給はぬほ
てまつり給ついとゝきめき給よし人〻きこゆかゝる御ましらひのなれ給はぬほ
とにはか〱しき御うしろみなくてはいかゝとて北のかたそひてさふらひ給は
とにはか〱しき御うしろみなくてはいかゝとて北のかたそひてさふらひ給は
まことにかきりもなくおもひかしつきうしろみきこえ給殿はつれ〱なる心地
まことにかきりもなくおもひかしつきうしろみきこえ給殿はつれ〱なる心地
して西の御かたはひとつにならひ給ていとさう〱しくなかめ給ひんかしの姫
して西の御かたはひとつにならひ給ていとさう〱しくなかめ給ひんかしの姫
君もうと〱しくかたみにもてなし給はてよる〱はひとゝころに御とのこも
君もうと〱しくかたみにもてなし給はてよる〱はひとゝころに御とのこも
りよろつの御ことならひはかなき御あそひわさをも此方を師のやうにおもひき
りよろつの御ことならひはかなき御あそひわさをも此方を師のやうにおもひき
Page 1450
こそてそ誰もならひあそひ給ける物はちを世のつねならすし給て母北のかたに
こそてそ誰もならひあそひ給ける物はちを世のつねならすし給て母北のかたに
たにさやかにはおさ〱さしむかひたてまつり給はすかたはなるまてもてなし
たにさやかにはおさ〱さしむかひたてまつり給はすかたはなるまてもてなし
給物から心はへけはひのむもれたるさまならすあい行つき給へることはた人よ
給物から心はへけはひのむもれたるさまならすあい行つき給へることはた人よ
りすくれ給へりかくうちまいりやなにやと我かたさまをのみおもひいそくやう
りすくれ給へりかくうちまいりやなにやと我かたさまをのみおもひいそくやう
なるも心くるしなとおほしてさるへからむさまにおほしさためての給へおなし
なるも心くるしなとおほしてさるへからむさまにおほしさためての給へおなし
ことゝこそはつかうまつらめとはゝ君にもきこえ給けれとさらにさやうのよつ
ことゝこそはつかうまつらめとはゝ君にもきこえ給けれとさらにさやうのよつ
きたるさまおもひたつへきにもあらぬけしきなれは中〱ならむ事は心くるし
きたるさまおもひたつへきにもあらぬけしきなれは中〱ならむ事は心くるし
かるへし御すくせにまかせてよにあらむかきりはみたてまつらむのちそ哀にう
かるへし御すくせにまかせてよにあらむかきりはみたてまつらむのちそ哀にう
しろめたけれとよをそむくかたにてもをのつから人わらへにあはつけきことな
しろめたけれとよをそむくかたにてもをのつから人わらへにあはつけきことな
くて過し給はなんなとうちなきて御心はせのおもふやうなることをそきこえ給
くて過し給はなんなとうちなきて御心はせのおもふやうなることをそきこえ給
いつれもわかす親かり給へと御かたちをみはやとゆかしうおほしてかくれ給こ
いつれもわかす親かり給へと御かたちをみはやとゆかしうおほしてかくれ給こ
そ心うけれとうらみて人しれすみえたまひぬへしやとのそきありき給へとたえ
そ心うけれとうらみて人しれすみえたまひぬへしやとのそきありき給へとたえ
てかたそはをたにえみたてまつり給はすうへおはせぬほとはたちかはりてまい
てかたそはをたにえみたてまつり給はすうへおはせぬほとはたちかはりてまい
りくへきをうと〱しくおほしわくる御けしきなれは心うくこそなときこえみ
りくへきをうと〱しくおほしわくる御けしきなれは心うくこそなときこえみ
Page 1451
すのまへにゐ給へは御いらへなとほのかにきこえ給御こゑけはひなとあてにを
すのまへにゐ給へは御いらへなとほのかにきこえ給御こゑけはひなとあてにを
かしうさまかたちおもひやられて哀におほゆる人の御ありさまなりわか御姫君
かしうさまかたちおもひやられて哀におほゆる人の御ありさまなりわか御姫君
たちを人におとらしと思おこれと此君にえしもまさらすやあらむかゝれはこそ
たちを人におとらしと思おこれと此君にえしもまさらすやあらむかゝれはこそ
世中のひろきうちはわつらはしけれたくひあらしと思にまさるかたもをのつか
世中のひろきうちはわつらはしけれたくひあらしと思にまさるかたもをのつか
らありぬへかめりなといとゝいふかしう思きこえ給月比なにとなく物さはかし
らありぬへかめりなといとゝいふかしう思きこえ給月比なにとなく物さはかし
き程に御ことのねをたにうけたまはらてひさしう成はへりにけりにしのかたに
き程に御ことのねをたにうけたまはらてひさしう成はへりにけりにしのかたに
侍る人はひわをこゝろに入て侍るさもまねひとりつへくやおほえ侍らんなまか
侍る人はひわをこゝろに入て侍るさもまねひとりつへくやおほえ侍らんなまか
たほにしたるにきゝにくき物のねから也おなしくは御心とゝめてをしへさせ給
たほにしたるにきゝにくき物のねから也おなしくは御心とゝめてをしへさせ給
へおきなはとりたてゝならふ物侍らさりしかとそのかみさかりなりしよにあそ
へおきなはとりたてゝならふ物侍らさりしかとそのかみさかりなりしよにあそ
ひ侍しちからにやきゝしるはかりのわきまへはなにことにもいとつきなうはは
ひ侍しちからにやきゝしるはかりのわきまへはなにことにもいとつきなうはは
へらさりしをうちとけてもあそはさねと時〻うけ給御ひはのねなむ昔おほえ侍
へらさりしをうちとけてもあそはさねと時〻うけ給御ひはのねなむ昔おほえ侍
る故六条院の御つたへにて右のおとゝなんこの比よにのこり給へる源中納言兵
る故六条院の御つたへにて右のおとゝなんこの比よにのこり給へる源中納言兵
部卿の宮なに事にもむかしの人におとるましういと契ことに物し給人〻にてあ
部卿の宮なに事にもむかしの人におとるましういと契ことに物し給人〻にてあ
そひのかたはとりわきて心とゝめたまへるをてつかひすこしなよひたるはちを
そひのかたはとりわきて心とゝめたまへるをてつかひすこしなよひたるはちを
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となとなんおとゝにはをよひ給はすと思ふ給ふるを此御ことのねこそいとよく
となとなんおとゝにはをよひ給はすと思ふ給ふるを此御ことのねこそいとよく
おほえ給へれひはゝおしてしつやかなるをよきにする物なるにちうさすほとは
おほえ給へれひはゝおしてしつやかなるをよきにする物なるにちうさすほとは
ちをとのさまかはりてなまめかしうきこえたるをんなの御ことにて中〱をか
ちをとのさまかはりてなまめかしうきこえたるをんなの御ことにて中〱をか
しかりけるいてあそはさんや御ことまいれとの給女房なとはかくれたてまつる
しかりけるいてあそはさんや御ことまいれとの給女房なとはかくれたてまつる
もおさ〱なしいとわかき上臘たつかみえたてまつらしと思はしも心にまかせ
もおさ〱なしいとわかき上臘たつかみえたてまつらしと思はしも心にまかせ
てゐたれはさふらふ人さへかくもてなすかやすからぬとはらたち給わか君うち
てゐたれはさふらふ人さへかくもてなすかやすからぬとはらたち給わか君うち
へまいらむとゝのひすかたにてまいり給へるわさとうるはしきみつらよりもい
へまいらむとゝのひすかたにてまいり給へるわさとうるはしきみつらよりもい
とをかしくみえていみしうゝつくしとおほしたり麗景殿に御ことつけきこえ給
とをかしくみえていみしうゝつくしとおほしたり麗景殿に御ことつけきこえ給
ゆつりきこえてこよひもえまいるましくなやましくなときこえよとの給てふえ
ゆつりきこえてこよひもえまいるましくなやましくなときこえよとの給てふえ
すこしつかうまつれともすれは御前の御あそひにめしいてらるゝかたはらいた
すこしつかうまつれともすれは御前の御あそひにめしいてらるゝかたはらいた
しやまたいとわかきふえをとうちゑみてそうてうふかせ給いとをかしうふい給
しやまたいとわかきふえをとうちゑみてそうてうふかせ給いとをかしうふい給
へはけしうはあらす成ゆくは此わたりにてをのつから物にあはするけなり猶か
へはけしうはあらす成ゆくは此わたりにてをのつから物にあはするけなり猶か
きあはせさせ給へとせめきこえ給へはくるしとおほしたるけしきなからつまひ
きあはせさせ給へとせめきこえ給へはくるしとおほしたるけしきなからつまひ
きにいとよくあはせてたゝすこしかきならい給かはふえふつゝかになれたるこ
きにいとよくあはせてたゝすこしかきならい給かはふえふつゝかになれたるこ
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ゑして此ひんかしのつまに軒ちかき紅梅のいとをもしろくにほひたるをみ給て
ゑして此ひんかしのつまに軒ちかき紅梅のいとをもしろくにほひたるをみ給て
おまへのはな心はへありてみゆめり兵部卿宮うちにおはすなりひとえたおりて
おまへのはな心はへありてみゆめり兵部卿宮うちにおはすなりひとえたおりて
まいれしる人そしるとてあはれひかる源氏といはゆる御さかりの大将なとにお
まいれしる人そしるとてあはれひかる源氏といはゆる御さかりの大将なとにお
はせし比わらはにてかやうにてましらひなれきこえしこそよとゝもに恋しう侍
はせし比わらはにてかやうにてましらひなれきこえしこそよとゝもに恋しう侍
れこの宮たちを世人もいとことにおもひきこえけに人にめてられんとなり給へ
れこの宮たちを世人もいとことにおもひきこえけに人にめてられんとなり給へ
る御ありさまなれとはしかはしにもおほえ給はぬは猶たくひあらしとおもひき
る御ありさまなれとはしかはしにもおほえ給はぬは猶たくひあらしとおもひき
こえし心のなしにやありけんおほかたにて思いてたてまつるにむねあくよなく
こえし心のなしにやありけんおほかたにて思いてたてまつるにむねあくよなく
かなしきをけちかき人のおくれたてまつりていきめくらふはおほろけのいのち
かなしきをけちかき人のおくれたてまつりていきめくらふはおほろけのいのち
なかさなりかしとこそおほえはへれなときこえいてたまひて物あはれにすこく
なかさなりかしとこそおほえはへれなときこえいてたまひて物あはれにすこく
思ひめくらしゝほれ給ついての忍かたきにや花おらせていそきまいらせ給ふい
思ひめくらしゝほれ給ついての忍かたきにや花おらせていそきまいらせ給ふい
かゝはせんむかしの恋しき御かたみにはこの宮はかりこそはほとけのかくれた
かゝはせんむかしの恋しき御かたみにはこの宮はかりこそはほとけのかくれた
まひけむ御名こりにはあなんか光はなちけんをふたゝひいて給へるかとうたか
まひけむ御名こりにはあなんか光はなちけんをふたゝひいて給へるかとうたか
ふさかしきひしりのありけるをやみにまとふはるけところにきこえをかさむか
ふさかしきひしりのありけるをやみにまとふはるけところにきこえをかさむか
しとて
しとて
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こゝろありて風のにほはすそのゝ梅にまつ鴬のとはすやあるへきとくれな
こゝろありて風のにほはすそのゝ梅にまつ鴬のとはすやあるへきとくれな
ひのかみにわかやきかきてこのきみのふところかみにとりませおしたゝみてい
ひのかみにわかやきかきてこのきみのふところかみにとりませおしたゝみてい
たしたてたまふをおさなきこゝろにいとなれきこえまほしとおもへはいそきま
たしたてたまふをおさなきこゝろにいとなれきこえまほしとおもへはいそきま
いりたまひぬ中宮のうへの御つほねより御とのゐところにいて給ほとなり殿上
いりたまひぬ中宮のうへの御つほねより御とのゐところにいて給ほとなり殿上
人あまた御をくりにまいる中にみつけ給てきのふはなといとゝくはまかてにし
人あまた御をくりにまいる中にみつけ給てきのふはなといとゝくはまかてにし
いつまいりつるそなとの給ふとくまかて侍にしくやしさにまたうちにおはしま
いつまいりつるそなとの給ふとくまかて侍にしくやしさにまたうちにおはしま
すと人の申つれはいそきまいりつるやとおさなけなるものからなれきこゆうち
すと人の申つれはいそきまいりつるやとおさなけなるものからなれきこゆうち
ならて心やすき所にも時〻はあそへかしわかき人とものそこはかとなくあつま
ならて心やすき所にも時〻はあそへかしわかき人とものそこはかとなくあつま
る所そとの給ふこの君めしはなちてかたらひ給へは人〻はちかうもまいらすま
る所そとの給ふこの君めしはなちてかたらひ給へは人〻はちかうもまいらすま
かてちりなとしてしめやかに成ぬれは春宮にはいとますこしゆるされためりな
かてちりなとしてしめやかに成ぬれは春宮にはいとますこしゆるされためりな
いとしけうおほしまとはすめりしをときとられて人わろかめりとの給へはまつ
いとしけうおほしまとはすめりしをときとられて人わろかめりとの給へはまつ
はさせ給しこそくるしかりしかおまへにはしもときこえさしてゐたれは我をは
はさせ給しこそくるしかりしかおまへにはしもときこえさしてゐたれは我をは
人けなしと思ひはなれたるとなことはり也されとやすからすこそふるめかしき
人けなしと思ひはなれたるとなことはり也されとやすからすこそふるめかしき
おなしすちにてひんかしときこゆなるはあひ思ひ給てんやとしのひてかたらひ
おなしすちにてひんかしときこゆなるはあひ思ひ給てんやとしのひてかたらひ
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きこえよなとの給ついてにこの花をたてまつれはうちゑみてうらみて後ならま
きこえよなとの給ついてにこの花をたてまつれはうちゑみてうらみて後ならま
しかはとてうちもをかすこらむすえたのさま花ふさ色もかも世のつねならすそ
しかはとてうちもをかすこらむすえたのさま花ふさ色もかも世のつねならすそ
のにゝほへるくれなゐのいろにとられて香なんしろきむめにはおとれるといふ
のにゝほへるくれなゐのいろにとられて香なんしろきむめにはおとれるといふ
めるをいとかしこくとりならへてもさきけるかなとて御心とゝめ給ふ花なれは
めるをいとかしこくとりならへてもさきけるかなとて御心とゝめ給ふ花なれは
かひありてもてはやし給こよひはとのゐなめりやかてこなたにをとめしこめつ
かひありてもてはやし給こよひはとのゐなめりやかてこなたにをとめしこめつ
れは春宮にもえまいらす花もはつかしくおもひぬへくかうはしくてけちかくふ
れは春宮にもえまいらす花もはつかしくおもひぬへくかうはしくてけちかくふ
せ給へるをわかき心地にはたくひなくうれしくなつかしうおもひきこゆ此花の
せ給へるをわかき心地にはたくひなくうれしくなつかしうおもひきこゆ此花の
あるしはなと春宮にはうつろひ給はさりししらす心しらむ人になとこそきゝ侍
あるしはなと春宮にはうつろひ給はさりししらす心しらむ人になとこそきゝ侍
しかなとかたりきこゆ大納言のみ心はへはわかゝたさまに思へかめれときゝあ
しかなとかたりきこゆ大納言のみ心はへはわかゝたさまに思へかめれときゝあ
はせ給へとおもふ心はことにしみぬれは此かへりことけさやかにもの給やらす
はせ給へとおもふ心はことにしみぬれは此かへりことけさやかにもの給やらす
つとめてこの君のまかつるになをさりなるやうにて
つとめてこの君のまかつるになをさりなるやうにて
花のかにさそはれぬへき身なりせはかせのたよりをすくさましやはさて猶
花のかにさそはれぬへき身なりせはかせのたよりをすくさましやはさて猶
いまはおきなともにさかしらせさせてしのひやかにとかへす〱の給てこのき
いまはおきなともにさかしらせさせてしのひやかにとかへす〱の給てこのき
みもひんかしのをはやんことなくむつましう思ましたりなか〱こと方のひめ
みもひんかしのをはやんことなくむつましう思ましたりなか〱こと方のひめ
Page 1456
君はみえ給なとしてれいのはらからのさまなれとわらは心地にいとおもりかに
君はみえ給なとしてれいのはらからのさまなれとわらは心地にいとおもりかに
あらまほしうおはする心はへをかひあるさまにてみたてまつらはやとおもひあ
あらまほしうおはする心はへをかひあるさまにてみたてまつらはやとおもひあ
りくに春宮の御かたのいと花やかにもてなし給につけておなしことゝは思なか
りくに春宮の御かたのいと花やかにもてなし給につけておなしことゝは思なか
らいとあかすくちおしけれは此宮をたにけちかくてみたてまつらはやとおもひ
らいとあかすくちおしけれは此宮をたにけちかくてみたてまつらはやとおもひ
ありくにうれしき花のついてなりこれはきのふの御かへりなれはみせたてまつ
ありくにうれしき花のついてなりこれはきのふの御かへりなれはみせたてまつ
るねたけにもの給へるかなあまりすきたる方にすゝみ給へるをゆるしきこえす
るねたけにもの給へるかなあまりすきたる方にすゝみ給へるをゆるしきこえす
ときゝ給て右のおとゝわれらかみたてまつるにはいと物まめやかに御心をさめ
ときゝ給て右のおとゝわれらかみたてまつるにはいと物まめやかに御心をさめ
給ふこそをかしけれあた人とせんにたらひ給へる御さまをしゐてまめたち給は
給ふこそをかしけれあた人とせんにたらひ給へる御さまをしゐてまめたち給は
んもみところすくなくやならましなとしりうこちてけふもまいらせ給ふに又
んもみところすくなくやならましなとしりうこちてけふもまいらせ給ふに又
もとつかのにほへるきみか袖ふれは花もえならぬ名をやちらさむとすき
もとつかのにほへるきみか袖ふれは花もえならぬ名をやちらさむとすき
〱しやあなかしことまめやかにきこえたまへりまことにいひなさむとおもふ
〱しやあなかしことまめやかにきこえたまへりまことにいひなさむとおもふ
ところあるにやとさすかに御心ときめきし給て
ところあるにやとさすかに御心ときめきし給て
花のかをにほはす宿にとめゆかは色にめつとや人のとかめんなと猶心とけ
花のかをにほはす宿にとめゆかは色にめつとや人のとかめんなと猶心とけ
すいらへ給へるを心やましとおもひゐ給へり北のかたまかてたまひてうちわた
すいらへ給へるを心やましとおもひゐ給へり北のかたまかてたまひてうちわた
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りのことの給ふついてにわか君の一夜とのひしてまかりいてたりしにほひのい
りのことの給ふついてにわか君の一夜とのひしてまかりいてたりしにほひのい
とをかしかりしを人はなをとおもひしを宮のいとおもほしよりて兵部卿のみや
とをかしかりしを人はなをとおもひしを宮のいとおもほしよりて兵部卿のみや
にちかつきゝこえにけりむへ我をはすさめたりとけしきとりえんし給へりしか
にちかつきゝこえにけりむへ我をはすさめたりとけしきとりえんし給へりしか
こゝに御せうそこやありしさもみえさりしをとの給へはさかし梅の花めて給ふ
こゝに御せうそこやありしさもみえさりしをとの給へはさかし梅の花めて給ふ
きみなれはあなたのつまの紅梅いとさかりにみえしをたゝならておりてたてま
きみなれはあなたのつまの紅梅いとさかりにみえしをたゝならておりてたてま
つれたりしなりうつり香はけにこそ心ことなれはれましらひし給はんをんなな
つれたりしなりうつり香はけにこそ心ことなれはれましらひし給はんをんなな
とはさはえしめぬかな源中納言はかうさまにこのましうはたきにほはさて人か
とはさはえしめぬかな源中納言はかうさまにこのましうはたきにほはさて人か
らこそよになけれあやしうさきの世の契いかなりけるむくひにかとゆかしきこ
らこそよになけれあやしうさきの世の契いかなりけるむくひにかとゆかしきこ
とにこそあれおなしはなの名なれと梅はおひいてけむねこそ哀なれ此宮なとの
とにこそあれおなしはなの名なれと梅はおひいてけむねこそ哀なれ此宮なとの
めて給ふさることそかしなと花によそへてもまつかけきこえ給ふ宮の御かたは
めて給ふさることそかしなと花によそへてもまつかけきこえ給ふ宮の御かたは
物おほししるほとにねひまさり給へれはなにこともみしりきゝとゝめ給はぬに
物おほししるほとにねひまさり給へれはなにこともみしりきゝとゝめ給はぬに
はあらねと人にみえよつきたらむありさまはさらにとおほしはなれたりよの人
はあらねと人にみえよつきたらむありさまはさらにとおほしはなれたりよの人
も時による心ありてにやさしむかひたる御かた〱には心をつくしきこえわひ
も時による心ありてにやさしむかひたる御かた〱には心をつくしきこえわひ
いまめかしきことおほかれと此方はよろつにつけ物しめやかにひき入給へるを
いまめかしきことおほかれと此方はよろつにつけ物しめやかにひき入給へるを
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宮は御ふさひのかたにきゝつたへたまひてふかういかてとおもほしなりにけり
宮は御ふさひのかたにきゝつたへたまひてふかういかてとおもほしなりにけり
わかきみをつねにまつはしよせ給つゝしのひやかに御文あれと大納言の君ふか
わかきみをつねにまつはしよせ給つゝしのひやかに御文あれと大納言の君ふか
く心かけきこえ給てさも思たちての給ことあらはとけしきとり心まうけし給を
く心かけきこえ給てさも思たちての給ことあらはとけしきとり心まうけし給を
みるにいとをしうひきたかへてかう思よるへうもあらぬ方にしもなけのことの
みるにいとをしうひきたかへてかう思よるへうもあらぬ方にしもなけのことの
葉をつくし給ふかひなけなることゝ北方もおほしの給ふはかなき御返りなとも
葉をつくし給ふかひなけなることゝ北方もおほしの給ふはかなき御返りなとも
なけれはまけしの御心そひておもほしやむへくもあらすなにかは人の御ありさ
なけれはまけしの御心そひておもほしやむへくもあらすなにかは人の御ありさ
まなとかはさてもみたてまつらまほしうおひさき遠くなとはみえさせ給になと
まなとかはさてもみたてまつらまほしうおひさき遠くなとはみえさせ給になと
北方おもほしよる時〱あれといといたう色めき給てかよひ給ふしのひ所おほ
北方おもほしよる時〱あれといといたう色めき給てかよひ給ふしのひ所おほ
く八の宮の姫君にも御心さしのあさからていとしけうまうてありき給たのもし
く八の宮の姫君にも御心さしのあさからていとしけうまうてありき給たのもし
けなき御心のあた〱しさなともいとゝつゝましけれはまめやかにはおもほし
けなき御心のあた〱しさなともいとゝつゝましけれはまめやかにはおもほし
たえたるをかたしけなきはかりに忍てはゝ君そたまさかにさかしらかりきこえ
たえたるをかたしけなきはかりに忍てはゝ君そたまさかにさかしらかりきこえ
給ふ
給ふ