校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・梅かえ
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
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御もきのことおほしいそく御こゝろをきて世のつねならす東宮もおなし二月に
御もきのことおほしいそく御こゝろをきて世のつねならす東宮もおなし二月に
御かうふりのことあるへけれはやかて御まいりもうちつゝくへきにや正月のつ
御かうふりのことあるへけれはやかて御まいりもうちつゝくへきにや正月のつ
こもりなれはおほやけわたくしのとやかなるころをひにたき物あはせ給大弐の
こもりなれはおほやけわたくしのとやかなるころをひにたき物あはせ給大弐の
たてまつれるかうとも御覧するになをいにしへのにはをとりてやあらむとおほ
たてまつれるかうとも御覧するになをいにしへのにはをとりてやあらむとおほ
して二条院のみくらあけさせ給てからのものともとりわたさせ給て御らむしく
して二条院のみくらあけさせ給てからのものともとりわたさせ給て御らむしく
らふるにゝしきあやなとも猶ふるき物こそなつかしうこまやかにはありけれと
らふるにゝしきあやなとも猶ふるき物こそなつかしうこまやかにはありけれと
てちかき御しつらひのものゝおほひしきものしとねなとのはしともに故院の御
てちかき御しつらひのものゝおほひしきものしとねなとのはしともに故院の御
よのはしめつかたこまうとのたてまつれりけるあやひこんきともなといまの世
よのはしめつかたこまうとのたてまつれりけるあやひこんきともなといまの世
のものにゝすなをさま〱御らむしあてつゝせさせ給てこのたひのあやうすも
のものにゝすなをさま〱御らむしあてつゝせさせ給てこのたひのあやうすも
のなとは人〻に給はすかうともはむかしいまのとりならへさせ給て御かた〱
のなとは人〻に給はすかうともはむかしいまのとりならへさせ給て御かた〱
にくはりたてまつらせ給ふたくさつゝあはせさせ給へときこえさせ給へりをく
にくはりたてまつらせ給ふたくさつゝあはせさせ給へときこえさせ給へりをく
りものかんたちめのろくなと世になきさまにうちにもとにもことしけくいとな
りものかんたちめのろくなと世になきさまにうちにもとにもことしけくいとな
み給にそへてかた〱にえりとゝのへてかなうすのをとみゝかしかましきころ
み給にそへてかた〱にえりとゝのへてかなうすのをとみゝかしかましきころ
なりおとゝはしんてんにはなれおはしまして承和の御いましめのふたつのほう
なりおとゝはしんてんにはなれおはしまして承和の御いましめのふたつのほう
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をいかてか御みゝにはつたへ給けん心にしめてあはせ給うへはひんかしのなか
をいかてか御みゝにはつたへ給けん心にしめてあはせ給うへはひんかしのなか
のはなちいてに御しつらひことにふかうしなさせ給て八条の式部卿の御ほうを
のはなちいてに御しつらひことにふかうしなさせ給て八条の式部卿の御ほうを
つたへてかたみにいとみあはせ給ほといみしうひし給へはにほひのふかさあさ
つたへてかたみにいとみあはせ給ほといみしうひし給へはにほひのふかさあさ
ゝもかちまけのさためあるへしとおとゝの給人の御おやけなき御あらそひ心な
ゝもかちまけのさためあるへしとおとゝの給人の御おやけなき御あらそひ心な
りいつかたにもおまへにさふらふ人あまたならす御てうとゝもゝそこらのきよ
りいつかたにもおまへにさふらふ人あまたならす御てうとゝもゝそこらのきよ
らをつくし給へるなかにもかうこの御はことものやうつほのすかたひとりのこ
らをつくし給へるなかにもかうこの御はことものやうつほのすかたひとりのこ
ゝろはへもめなれぬさまにいまめかしうやうかへさせ給へるにところ〱のこ
ゝろはへもめなれぬさまにいまめかしうやうかへさせ給へるにところ〱のこ
ゝろをつくし給へらむにほひとものすくれたらむともをかきあはせていれんと
ゝろをつくし給へらむにほひとものすくれたらむともをかきあはせていれんと
おほすなりけり二月の十日あめすこしふりておまへちかきこうはいさかりに色
おほすなりけり二月の十日あめすこしふりておまへちかきこうはいさかりに色
もかもにるものなきほとに兵部卿の宮わたり給へり御いそきのけふあすになり
もかもにるものなきほとに兵部卿の宮わたり給へり御いそきのけふあすになり
にけることともとふらひきこえ給むかしよりとりわきたる御なかなれはへたて
にけることともとふらひきこえ給むかしよりとりわきたる御なかなれはへたて
なくそのことかのことゝきこえあはせ給てはなをめてつゝおはするほとに前斎
なくそのことかのことゝきこえあはせ給てはなをめてつゝおはするほとに前斎
院よりとてちりすきたる梅のえたにつけたる御文もてまひれり宮きこしめすこ
院よりとてちりすきたる梅のえたにつけたる御文もてまひれり宮きこしめすこ
ともあれはいかなる御せうそこのすゝみまいれるにかとておかしとおほしたれ
ともあれはいかなる御せうそこのすゝみまいれるにかとておかしとおほしたれ
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はほゝゑみていとなれ〱しきこときこえつけたりしをまめやかにいそきもの
はほゝゑみていとなれ〱しきこときこえつけたりしをまめやかにいそきもの
し給へるなめりとて御文は引かくし給つちむのはこにるりのつきふたつすゑて
し給へるなめりとて御文は引かくし給つちむのはこにるりのつきふたつすゑて
おほきにまろかしつゝいれ給へりこゝろはこむるりには五えうのえたしろきに
おほきにまろかしつゝいれ給へりこゝろはこむるりには五えうのえたしろきに
は梅をえりておなしく引むすひたるいとのさまもなよひやかになまめかしうそ
は梅をえりておなしく引むすひたるいとのさまもなよひやかになまめかしうそ
し給へるえんあるものゝさまかなとて御めとめ給へるに
し給へるえんあるものゝさまかなとて御めとめ給へるに
花の香はちりにし枝にとまらねとうつらむ袖にあさくしまめやほのかなる
花の香はちりにし枝にとまらねとうつらむ袖にあさくしまめやほのかなる
を御覧しつけてみやはこと〱しうすし給さいしやうの中将御つかひたつねと
を御覧しつけてみやはこと〱しうすし給さいしやうの中将御つかひたつねと
ゝめさせ給ていたうゑはし給こうはいかさねのからのほそなかそへたる女のさ
ゝめさせ給ていたうゑはし給こうはいかさねのからのほそなかそへたる女のさ
うそくかつけ給御返も其色のかみにておまへの花をおらせてつけさせ給宮うち
うそくかつけ給御返も其色のかみにておまへの花をおらせてつけさせ給宮うち
のことおもひやらるゝ御ふみかなゝにことのかくろへあるにかふかくかくし給
のことおもひやらるゝ御ふみかなゝにことのかくろへあるにかふかくかくし給
とうらみていとゆかしとおほしたりなにことか侍らむくま〱しくおほしたる
とうらみていとゆかしとおほしたりなにことか侍らむくま〱しくおほしたる
こそくるしけれとて御すゝりのついてに
こそくるしけれとて御すゝりのついてに
花のえにいとゝこゝろをしむるかな人のとかめん香をはつゝめとゝやあり
花のえにいとゝこゝろをしむるかな人のとかめん香をはつゝめとゝやあり
つらむまめやかにはすき〱しきやうなれとまたもなかめる人のうへにてこれ
つらむまめやかにはすき〱しきやうなれとまたもなかめる人のうへにてこれ
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こそはことはりのいとなみなめれとおもひたまへなしてなんいとみにくけれは
こそはことはりのいとなみなめれとおもひたまへなしてなんいとみにくけれは
うとき人はかたはらいたさに中宮まかてさせたてまつりてと思給るしたしきほ
うとき人はかたはらいたさに中宮まかてさせたてまつりてと思給るしたしきほ
とになれきこえかよへとはつかしきところのふかうおはする宮なれはなにこと
とになれきこえかよへとはつかしきところのふかうおはする宮なれはなにこと
もよのつねにてみせたてまつらんかたしけなくてなむなときこえ給あえ物もけ
もよのつねにてみせたてまつらんかたしけなくてなむなときこえ給あえ物もけ
にかならすおほしよるへきことなりけりとことはり申給このついてに御方〱
にかならすおほしよるへきことなりけりとことはり申給このついてに御方〱
のあはせ給ともをの〱御つかひしてこのゆふ暮のしめりにこゝろみんときこ
のあはせ給ともをの〱御つかひしてこのゆふ暮のしめりにこゝろみんときこ
え給へれはさま〱おかしうしなしてたてまつり給へりこれわかせ給へたれに
え給へれはさま〱おかしうしなしてたてまつり給へりこれわかせ給へたれに
かみせんときこえ給て御ひとりともめしてこゝろみさせ給しる人にもあらすや
かみせんときこえ給て御ひとりともめしてこゝろみさせ給しる人にもあらすや
とひけし給へといひしらぬにほひとものすゝみをくれたるかうひとくさなとか
とひけし給へといひしらぬにほひとものすゝみをくれたるかうひとくさなとか
いさゝかのとかをわきてあなかちにおとりまさりのけちめをゝき給かのわかお
いさゝかのとかをわきてあなかちにおとりまさりのけちめをゝき給かのわかお
ほむふたくさのはいまそとうてさせ給うこむのちんのみかは水のほとりになす
ほむふたくさのはいまそとうてさせ給うこむのちんのみかは水のほとりになす
らへてにしのわたとのゝしたよりいつるみきはちかうゝつませ給へるをこれみ
らへてにしのわたとのゝしたよりいつるみきはちかうゝつませ給へるをこれみ
つのさい相のこの兵衛のそうほりてまひれり宰相中将とりてつたへまいらせ給
つのさい相のこの兵衛のそうほりてまひれり宰相中将とりてつたへまいらせ給
宮いとくるしきはむさにもあたりて侍かないとけふたしやとなやみ給おなしう
宮いとくるしきはむさにもあたりて侍かないとけふたしやとなやみ給おなしう
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こそはいつくにもちりつゝひろこるへかめるを人〻のこゝろ〱にあはせ給へ
こそはいつくにもちりつゝひろこるへかめるを人〻のこゝろ〱にあはせ給へ
るふかさあさゝをかきあはせ給へるにいとけふあることおほかりさらにいつれ
るふかさあさゝをかきあはせ給へるにいとけふあることおほかりさらにいつれ
ともなきなかに斎院の御くろほうさいへとも心にくゝしつやかなるにほひこと
ともなきなかに斎院の御くろほうさいへとも心にくゝしつやかなるにほひこと
なりしゝうはおとゝの御はすくれてなまめかしうなつかしきかなりとさため給
なりしゝうはおとゝの御はすくれてなまめかしうなつかしきかなりとさため給
たいのうへのおほむはみくさあるなかにはい花はなやかにいまめかしうすこし
たいのうへのおほむはみくさあるなかにはい花はなやかにいまめかしうすこし
はやき心しらひをそへてめつらしきかほりくはゝれりこのころの風にたくへん
はやき心しらひをそへてめつらしきかほりくはゝれりこのころの風にたくへん
にはさらにこれにまさるにほひあらしとめて給夏の御方には人〻のかう心〱
にはさらにこれにまさるにほひあらしとめて給夏の御方には人〻のかう心〱
にいとみ給なる中にかす〱にもたちいてすやとけふりをさへおもひきえ給へ
にいとみ給なる中にかす〱にもたちいてすやとけふりをさへおもひきえ給へ
る御心にてたゝ荷葉をひとくさあはせ給へりさまかはりしめやかなるかしてあ
る御心にてたゝ荷葉をひとくさあはせ給へりさまかはりしめやかなるかしてあ
はれになつかし冬の御かたにもときときによれるにほひのさたまれるにけたれ
はれになつかし冬の御かたにもときときによれるにほひのさたまれるにけたれ
んもあいなしとおほしてくのえかうのほうのすくれたるはさきのすさく院のを
んもあいなしとおほしてくのえかうのほうのすくれたるはさきのすさく院のを
うつさせ給てきむたゝのあそむのことにえらひつかうまつれりし百ふのほうな
うつさせ給てきむたゝのあそむのことにえらひつかうまつれりし百ふのほうな
と思えて世にゝすなまめかしさをとりあつめたる心をきてすくれたりといつれ
と思えて世にゝすなまめかしさをとりあつめたる心をきてすくれたりといつれ
をもむとくならすさため給ふを心きたなきはん者なめりときこえ給月さしいて
をもむとくならすさため給ふを心きたなきはん者なめりときこえ給月さしいて
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ぬれはおほみきなとまいりてむかしの御物かたりなとし給かすめる月のかけ心
ぬれはおほみきなとまいりてむかしの御物かたりなとし給かすめる月のかけ心
にくきをあめのなこりの風すこし吹て花のかなつかしきにおとゝのあたりいひ
にくきをあめのなこりの風すこし吹て花のかなつかしきにおとゝのあたりいひ
しらすにほひみちて人の御心ちいとえんありくら人所のかたにもあすの御あそ
しらすにほひみちて人の御心ちいとえんありくら人所のかたにもあすの御あそ
ひのうちならしに御ことゝものさうそくなとして殿上人なとあまたまいりてお
ひのうちならしに御ことゝものさうそくなとして殿上人なとあまたまいりてお
かしきふえのねともきこゆうちのおほいとのゝ頭中将弁の少将なともけさむは
かしきふえのねともきこゆうちのおほいとのゝ頭中将弁の少将なともけさむは
かりにてまかつるをとゝめさせ給て御ことゝもめす宮の御まへにひはおとゝに
かりにてまかつるをとゝめさせ給て御ことゝもめす宮の御まへにひはおとゝに
さうの御ことまいりて頭中将わこむ給てはなやかにかきたてたるほといとおも
さうの御ことまいりて頭中将わこむ給てはなやかにかきたてたるほといとおも
しろくきこゆさい相中将よこふえふき給おりにあひたるてうし雲井とをるはか
しろくきこゆさい相中将よこふえふき給おりにあひたるてうし雲井とをるはか
りふきたてたり弁の少将ひやうしとりてむめかえいたしたるほといとおかしわ
りふきたてたり弁の少将ひやうしとりてむめかえいたしたるほといとおかしわ
らはにてゐんふたきのおりたかさこうたひし君なり宮もおとゝもさしいらへし
らはにてゐんふたきのおりたかさこうたひし君なり宮もおとゝもさしいらへし
給てこと〱しからぬものからおかしきよの御あそひなり御かはらけまいるに
給てこと〱しからぬものからおかしきよの御あそひなり御かはらけまいるに
宮
宮
うくひすのこゑにやいとゝあくかれんこゝろしめつる花のあたりにちよも
うくひすのこゑにやいとゝあくかれんこゝろしめつる花のあたりにちよも
へぬへしときこえ給へは
へぬへしときこえ給へは
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色も香もうつるはかりにこの春は花さくやとをかれすもあらなん頭中将に
色も香もうつるはかりにこの春は花さくやとをかれすもあらなん頭中将に
たまへはとりて宰相中将にさす
たまへはとりて宰相中将にさす
鴬のねくらのえたもなひくまてなをふきとをせよはの笛竹宰相中将
鴬のねくらのえたもなひくまてなをふきとをせよはの笛竹宰相中将
心ありて風のよくめるはなの木にとりあへぬまてふきやよるへきなさけな
心ありて風のよくめるはなの木にとりあへぬまてふきやよるへきなさけな
くとみなうちわらひ給弁の少将
くとみなうちわらひ給弁の少将
かすみたに月と花とをへたてすはねくらの鳥もほころひなましまことにあ
かすみたに月と花とをへたてすはねくらの鳥もほころひなましまことにあ
けかたになりてそ宮かへり給ふ御をくり物に身つからの御れうの御なをしの御
けかたになりてそ宮かへり給ふ御をくり物に身つからの御れうの御なをしの御
よそひひとくたりてふれ給はぬたき物ふたつほそへて御車にたてまつらせ給宮
よそひひとくたりてふれ給はぬたき物ふたつほそへて御車にたてまつらせ給宮
花の香をえならぬ袖にうつしもてことあやまりといもやとかめむとあれは
花の香をえならぬ袖にうつしもてことあやまりといもやとかめむとあれは
いとくつしたりやとわらひ給ふ御車かくるほとにをいて
いとくつしたりやとわらひ給ふ御車かくるほとにをいて
めつらしとふる里人もまちそみむ花のにしきをきてかへる君またなき事と
めつらしとふる里人もまちそみむ花のにしきをきてかへる君またなき事と
おほさるらむとあれはいといたうからかり給つき〱の君たちにもこと〱し
おほさるらむとあれはいといたうからかり給つき〱の君たちにもこと〱し
からぬさまにほそなかこうちきなとかつけ給かくてにしのおとゝにいぬの時に
からぬさまにほそなかこうちきなとかつけ給かくてにしのおとゝにいぬの時に
わたり給宮のおはしますにしのはなちいてをしつらひて御くしあけの内侍なと
わたり給宮のおはしますにしのはなちいてをしつらひて御くしあけの内侍なと
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もやかてこなたにまいれりうへもこのついてに中宮に御たいめんあり御かた
もやかてこなたにまいれりうへもこのついてに中宮に御たいめんあり御かた
〱の女房をしあはせたるかすしらすみえたりねの時に御もたてまつるおほと
〱の女房をしあはせたるかすしらすみえたりねの時に御もたてまつるおほと
なふらほのかなれと御けはひいとめてたしと宮はみたてまつれ給ふおとゝおほ
なふらほのかなれと御けはひいとめてたしと宮はみたてまつれ給ふおとゝおほ
しすつましきをたのみにてなめけなるすかたをすゝみ御覧せられ侍なりのちの
しすつましきをたのみにてなめけなるすかたをすゝみ御覧せられ侍なりのちの
世のためしにやと心せはくしのひ思たまふるなときこえ給宮いかなるへきこと
世のためしにやと心せはくしのひ思たまふるなときこえ給宮いかなるへきこと
ゝも思たまへわき侍らさりつるをかうこと〱しうとりなさせたまふになん中
ゝも思たまへわき侍らさりつるをかうこと〱しうとりなさせたまふになん中
〱心をかれぬへくとの給けつほとの御けはひいとわかくあいきやうつきたる
〱心をかれぬへくとの給けつほとの御けはひいとわかくあいきやうつきたる
におとゝもおほすさまにおかしき御けはひとものさしつとひ給へるをあはひめ
におとゝもおほすさまにおかしき御けはひとものさしつとひ給へるをあはひめ
てたくおほさるはゝ君のかゝるおりたにえみたてまつらぬをいみしとおもへり
てたくおほさるはゝ君のかゝるおりたにえみたてまつらぬをいみしとおもへり
しも心くるしうてまうのほらせやせましとおほせと人のものいひをつゝみてす
しも心くるしうてまうのほらせやせましとおほせと人のものいひをつゝみてす
くし給つかゝる所のきしきはよろしきにたにいとことおほくうるさきをかたは
くし給つかゝる所のきしきはよろしきにたにいとことおほくうるさきをかたは
しはかりれいのしとけなくまねはむも中〱にやとてこまかにかゝす春宮の御
しはかりれいのしとけなくまねはむも中〱にやとてこまかにかゝす春宮の御
けんふくは廿よひのほとになんありけるいとおとなしくおはしませはひとのむ
けんふくは廿よひのほとになんありけるいとおとなしくおはしませはひとのむ
すめともきほひまいらすへきことを心さしおほすなれと此とのゝおほしきさす
すめともきほひまいらすへきことを心さしおほすなれと此とのゝおほしきさす
Page 983
さまのいとことなれは中〱にてやましらはんと左のおとゝなともおほしとゝ
さまのいとことなれは中〱にてやましらはんと左のおとゝなともおほしとゝ
まるなるをきこしめしていとたい〱しきことなりみやつかへのすちはあまた
まるなるをきこしめしていとたい〱しきことなりみやつかへのすちはあまた
あるなかにすこしのけちめをいとまむこそほいならめそこらのきやうさくのひ
あるなかにすこしのけちめをいとまむこそほいならめそこらのきやうさくのひ
めきみたちひきこめられなは世にはえあらしとの給て御まいりのひぬつき〱
めきみたちひきこめられなは世にはえあらしとの給て御まいりのひぬつき〱
にもとしつめ給けるをかゝるよしところ〱にきゝ給て左大臣殿三の君まいり
にもとしつめ給けるをかゝるよしところ〱にきゝ給て左大臣殿三の君まいり
給ぬれいけい殿ときこゆるこの御かたはむかしの御とのゐ所しけいさをあらた
給ぬれいけい殿ときこゆるこの御かたはむかしの御とのゐ所しけいさをあらた
めしつらひて御まいりのひぬるを宮にも心もとなからせ給へは四月にとさため
めしつらひて御まいりのひぬるを宮にも心もとなからせ給へは四月にとさため
させ給御てうとゝもゝもとあるよりもとゝのへて御身つからもものゝしたかた
させ給御てうとゝもゝもとあるよりもとゝのへて御身つからもものゝしたかた
ゑやうなとをも御らむしいれつゝすくれたるみち〱の上手ともをめしあつめ
ゑやうなとをも御らむしいれつゝすくれたるみち〱の上手ともをめしあつめ
てこまかにみかきとゝのへさせ給さうしのはこにいるへきさうしとものやかて
てこまかにみかきとゝのへさせ給さうしのはこにいるへきさうしとものやかて
ほむにもし給へきをえらせ給いにしへのかみなきゝはの御てともの世になをの
ほむにもし給へきをえらせ給いにしへのかみなきゝはの御てともの世になをの
こしたまへるたくひのもいとおほくさふらふよろつのことむかしにはおとりさ
こしたまへるたくひのもいとおほくさふらふよろつのことむかしにはおとりさ
まにあさくなりゆくよのすゑなれとかむなのみなんいまのよはいときはなくな
まにあさくなりゆくよのすゑなれとかむなのみなんいまのよはいときはなくな
りたるふるきあとはさたまれるやうにはあれとひろき心ゆたかならすひとすち
りたるふるきあとはさたまれるやうにはあれとひろき心ゆたかならすひとすち
Page 984
にかよひてなんありけるたへにおかしきことはとよりてこそかきいつる人〻あ
にかよひてなんありけるたへにおかしきことはとよりてこそかきいつる人〻あ
りけれと女てを心にいれてならひしさかりにこともなきて本おほくつとへたり
りけれと女てを心にいれてならひしさかりにこともなきて本おほくつとへたり
しなかに中宮のはゝみやす所の心にもいれすはしりかい給へりしひとくたりは
しなかに中宮のはゝみやす所の心にもいれすはしりかい給へりしひとくたりは
かりわさとならぬをえてきはことにおほえしはやさてあるましき御名もたてき
かりわさとならぬをえてきはことにおほえしはやさてあるましき御名もたてき
こえしそかしくやしきことに思しみ給へりしかとさしもあらさりけり宮にかく
こえしそかしくやしきことに思しみ給へりしかとさしもあらさりけり宮にかく
うしろみつかうまつることを心ふかうおはせしかはなき御かけにもみなをし給
うしろみつかうまつることを心ふかうおはせしかはなき御かけにもみなをし給
らん宮の御てはこまかにおかしけなれとかとやをくれたらんとうちさゝめきて
らん宮の御てはこまかにおかしけなれとかとやをくれたらんとうちさゝめきて
きこえ給ふこ入道の宮の御てはいと気色ふかうなまめきたるすちはありしかと
きこえ給ふこ入道の宮の御てはいと気色ふかうなまめきたるすちはありしかと
よはき所ありてにほひそすくなかりし院のないしのかみこそいまの世の上すに
よはき所ありてにほひそすくなかりし院のないしのかみこそいまの世の上すに
おはすれとあまりそほれてくせそそひためるさはありともかの君と前斎院とこ
おはすれとあまりそほれてくせそそひためるさはありともかの君と前斎院とこ
ゝにとこそはかき給はめとゆるしきこえ給へはこのかすにはまはゆくやときこ
ゝにとこそはかき給はめとゆるしきこえ給へはこのかすにはまはゆくやときこ
え給へはいたうなすくし給そにこやかなるかたのなつかしさはことなるものを
え給へはいたうなすくし給そにこやかなるかたのなつかしさはことなるものを
まんなのすゝみたるほとにかなはしとけなきもしこそましるめれとてまたかゝ
まんなのすゝみたるほとにかなはしとけなきもしこそましるめれとてまたかゝ
ぬさうしともつくりくはへてへうしひもなといみしうせさせ給ふ兵部卿の宮さ
ぬさうしともつくりくはへてへうしひもなといみしうせさせ給ふ兵部卿の宮さ
Page 985
へもんのかみなとにものせんみつからひとよろひはかくへしけしきはみいます
へもんのかみなとにものせんみつからひとよろひはかくへしけしきはみいます
かりともえかきならへしやと我ほめをしたまふすみふてならひなくえりいてゝ
かりともえかきならへしやと我ほめをしたまふすみふてならひなくえりいてゝ
れいの所〱にたゝならぬ御せうそこあれはひとひとかたきことにおほしてか
れいの所〱にたゝならぬ御せうそこあれはひとひとかたきことにおほしてか
へさひ申給もあれはまめやかにきこえ給ふこまのかみのうすやうたちたるかせ
へさひ申給もあれはまめやかにきこえ給ふこまのかみのうすやうたちたるかせ
めてなまめかしきをこのものこのみするわかき人〻心みんとて宰相の中将式部
めてなまめかしきをこのものこのみするわかき人〻心みんとて宰相の中将式部
卿の宮の兵衛督うちのおほいとのゝとうの中将なとにあしてうたゑを思〱に
卿の宮の兵衛督うちのおほいとのゝとうの中将なとにあしてうたゑを思〱に
かけとの給へはみな心〱にいとむへかめりれいのしん殿にはなれおはしまし
かけとの給へはみな心〱にいとむへかめりれいのしん殿にはなれおはしまし
てかき給ふ花さかり過てあさみとりなる空うらゝかなるにふるきことゝもなと
てかき給ふ花さかり過てあさみとりなる空うらゝかなるにふるきことゝもなと
おもひすまし給ひて御心のゆくかきりさうのもたゝのも女てもいみしうかきつ
おもひすまし給ひて御心のゆくかきりさうのもたゝのも女てもいみしうかきつ
くし給ふ御まへに人しけからす女房二三人はかりすみなとすらせ給てゆへある
くし給ふ御まへに人しけからす女房二三人はかりすみなとすらせ給てゆへある
ふるきしうの歌なといかにそやなとえりいて給ふにくちおしからぬかきりさふ
ふるきしうの歌なといかにそやなとえりいて給ふにくちおしからぬかきりさふ
らふみすあけわたしてけうそくのうへにさうしうちをきはしちかくうちみたれ
らふみすあけわたしてけうそくのうへにさうしうちをきはしちかくうちみたれ
てふてのしりくはへておもひめくらし給へるさまあくよなくめてたししろきあ
てふてのしりくはへておもひめくらし給へるさまあくよなくめてたししろきあ
かきなとけちえんなるひらはふてとりなをしよういし給へるさまさへみしらむ
かきなとけちえんなるひらはふてとりなをしよういし給へるさまさへみしらむ
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人はけにめてぬへき御ありさまなり兵部卿の宮わたり給ときこゆれはおとろき
人はけにめてぬへき御ありさまなり兵部卿の宮わたり給ときこゆれはおとろき
て御なをしたてまつり御しとねまいりそへさせ給てやかてまちとりいれたてま
て御なをしたてまつり御しとねまいりそへさせ給てやかてまちとりいれたてま
つり給ふこの宮もいときよけにてみはしさまよくあゆみのほり給ふほとうちに
つり給ふこの宮もいときよけにてみはしさまよくあゆみのほり給ふほとうちに
も人〻のそきてみたてまつるうちかしこまりてかたみにうるはしたち給へるも
も人〻のそきてみたてまつるうちかしこまりてかたみにうるはしたち給へるも
いときよらなりつれ〱にこもり侍もくるしきまておもふ給へらるゝこゝろの
いときよらなりつれ〱にこもり侍もくるしきまておもふ給へらるゝこゝろの
のとけさにおりよくわたらせ給へるとよろこひきこえ給ふかの御さうしもたせ
のとけさにおりよくわたらせ給へるとよろこひきこえ給ふかの御さうしもたせ
てわたりたまへるなりけりやかて御覧すれはすくれてしもあらぬ御てをたゝか
てわたりたまへるなりけりやかて御覧すれはすくれてしもあらぬ御てをたゝか
たかとにいといたうふてすみたるけしきありてかきなし給へりうたもことさら
たかとにいといたうふてすみたるけしきありてかきなし給へりうたもことさら
めきそはみたるふることともをえりてたゝみくたりはかりにもしすくなにこの
めきそはみたるふることともをえりてたゝみくたりはかりにもしすくなにこの
ましくそかき給へるおとゝ御覧しおとろきぬかうまてはおもひたまへすこそあ
ましくそかき給へるおとゝ御覧しおとろきぬかうまてはおもひたまへすこそあ
りつれさらにふてなけすてつへしやとねたかり給ふかゝる御中におもなくくた
りつれさらにふてなけすてつへしやとねたかり給ふかゝる御中におもなくくた
すふてのほとさりともとなんおもふたまふるなとたはふれ給ふかき給へるさう
すふてのほとさりともとなんおもふたまふるなとたはふれ給ふかき給へるさう
しともゝかくし給へきならねはとうて給てかたみに御覧すからのかみのいとす
しともゝかくし給へきならねはとうて給てかたみに御覧すからのかみのいとす
くみたるにさうかき給へるすくれてめてたしとみ給にこまのかみのはたこまか
くみたるにさうかき給へるすくれてめてたしとみ給にこまのかみのはたこまか
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になこうなつかしきか色なとははなやかならてなまめきたるにおほとかなる女
になこうなつかしきか色なとははなやかならてなまめきたるにおほとかなる女
てのうるはしう心とゝめてかき給へるたとうへきかたなしみ給ふ人のなみたさ
てのうるはしう心とゝめてかき給へるたとうへきかたなしみ給ふ人のなみたさ
へ水くきになかれそふ心地してあくよあるましきにまたこゝのかんやのしきし
へ水くきになかれそふ心地してあくよあるましきにまたこゝのかんやのしきし
の色あひはなやかなるにみたれたるさうのうたをふてにまかせてみたれかき給
の色あひはなやかなるにみたれたるさうのうたをふてにまかせてみたれかき給
へるみところかきりなししとろもとろにあひきやうつきみまほしけれはさらに
へるみところかきりなししとろもとろにあひきやうつきみまほしけれはさらに
のこりともにめもみやり給はすさへもんのかみはこと〱しうかしこけなるす
のこりともにめもみやり給はすさへもんのかみはこと〱しうかしこけなるす
ちをのみこのみてかきたれとふてのをきてすまぬ心地していたはりくはへたる
ちをのみこのみてかきたれとふてのをきてすまぬ心地していたはりくはへたる
けしきなりうたなともことさらめきてえりかきたり女の御はまほにもとりいて
けしきなりうたなともことさらめきてえりかきたり女の御はまほにもとりいて
給はす斎院のなとはましてとうて給はさりけりあしてのさうしともそ心〱に
給はす斎院のなとはましてとうて給はさりけりあしてのさうしともそ心〱に
はかなふおかしきさいしやうの中将のはみつのいきをいゆたかにかきなしそゝ
はかなふおかしきさいしやうの中将のはみつのいきをいゆたかにかきなしそゝ
けたるあしのおいさまなとなにはのうらにかよひてこなたかなたいきましりて
けたるあしのおいさまなとなにはのうらにかよひてこなたかなたいきましりて
いたうすみたるところありまたいといかめしうひきかへてもしやういしなとの
いたうすみたるところありまたいといかめしうひきかへてもしやういしなとの
たゝすまひこのみかき給へるひらもあめりめもをよはすこれはいとまいりぬへ
たゝすまひこのみかき給へるひらもあめりめもをよはすこれはいとまいりぬへ
きものかなとけうしめて給ふなにこともものこのみしえんかりおはするみこに
きものかなとけうしめて給ふなにこともものこのみしえんかりおはするみこに
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ていといみしうめてきこえ給けふはまたてのことゝもの給くらしさま〱のつ
ていといみしうめてきこえ給けふはまたてのことゝもの給くらしさま〱のつ
きかみのほんともえりいてさせ給へるつゐてに御このしゝうして宮にさふらふ
きかみのほんともえりいてさせ給へるつゐてに御このしゝうして宮にさふらふ
ほんともとりにつかはすさかの御かとの古万葉集をえらひかゝせ給へる四巻延
ほんともとりにつかはすさかの御かとの古万葉集をえらひかゝせ給へる四巻延
喜のみかとの古今和歌集をからのあさはなたのかみをつきておなし色のこきも
喜のみかとの古今和歌集をからのあさはなたのかみをつきておなし色のこきも
んのきのへうしおなしきたまのちくたむのからくみのひもなとなまめかしうて
んのきのへうしおなしきたまのちくたむのからくみのひもなとなまめかしうて
まきことに御てのすちをかへつゝいみしうかきつくさせ給へるおほとなふらみ
まきことに御てのすちをかへつゝいみしうかきつくさせ給へるおほとなふらみ
しかくまいりて御らんするにつきせぬものかなこのころの人はたゝかたそはを
しかくまいりて御らんするにつきせぬものかなこのころの人はたゝかたそはを
けしきはむにこそありけれなとめてたまふやかてこれはとゝめたてまつり給ふ
けしきはむにこそありけれなとめてたまふやかてこれはとゝめたてまつり給ふ
女こなとをもて侍らましにたにおさ〱みはやすましきにはつたふましきをま
女こなとをもて侍らましにたにおさ〱みはやすましきにはつたふましきをま
してくちぬへきをなときこえてたてまつれ給しゝうにからのほんなとのいとわ
してくちぬへきをなときこえてたてまつれ給しゝうにからのほんなとのいとわ
さとかましきちんのはこにいれていみしきこまふえそへて奉れ給又この比はた
さとかましきちんのはこにいれていみしきこまふえそへて奉れ給又この比はた
ゝかんなのさためをし給て世中にてかくとおほえたる上中下の人〻にもさるへ
ゝかんなのさためをし給て世中にてかくとおほえたる上中下の人〻にもさるへ
きものともおほしはからひて尋つゝかゝせ給この御はこにはたちくたれるをは
きものともおほしはからひて尋つゝかゝせ給この御はこにはたちくたれるをは
ませ給はすわさと人のほとしなわかせ給つゝさうしまき物みなかゝせたてまつ
ませ給はすわさと人のほとしなわかせ給つゝさうしまき物みなかゝせたてまつ
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り給よろつにめつらかなる御たから物とも人のみかとまてありかたけなるなか
り給よろつにめつらかなる御たから物とも人のみかとまてありかたけなるなか
にこのほんともなんゆかしと心うこき給わか人よにおほかりける御ゑともとゝ
にこのほんともなんゆかしと心うこき給わか人よにおほかりける御ゑともとゝ
のへさせ給なかにかのすまの日記はすゑにもつたへしらせむとおほせといます
のへさせ給なかにかのすまの日記はすゑにもつたへしらせむとおほせといます
こし世をもおほししりなんにとおほしかへしてまたとりいて給はすうちのおと
こし世をもおほししりなんにとおほしかへしてまたとりいて給はすうちのおと
ゝはこの御いそきを人のうへにてきゝ給ふもいみしう心もとなくさう〱しと
ゝはこの御いそきを人のうへにてきゝ給ふもいみしう心もとなくさう〱しと
おほすひめ君の御有様さかりにとゝのひてあたらしううつくしけなりつれ〱
おほすひめ君の御有様さかりにとゝのひてあたらしううつくしけなりつれ〱
とうちしめり給へるほといみしき御なけきくさなるにかの人の御けしきはたお
とうちしめり給へるほといみしき御なけきくさなるにかの人の御けしきはたお
なしやうになたらかなれは心よはくすゝみよらむも人はらはれに人のねんころ
なしやうになたらかなれは心よはくすゝみよらむも人はらはれに人のねんころ
なりしきさみになひきなましかはなと人しれすおほしなけきてひとかたにつみ
なりしきさみになひきなましかはなと人しれすおほしなけきてひとかたにつみ
をもおほせ給はすかくすこしたはみ給へる御気色を宰相の君はきゝ給へとしは
をもおほせ給はすかくすこしたはみ給へる御気色を宰相の君はきゝ給へとしは
しつらかりし御心をうしとおもへはつれなくもてなしゝつめてさすかにほかさ
しつらかりし御心をうしとおもへはつれなくもてなしゝつめてさすかにほかさ
まの心はつくへくもおほえす心つからたはふれにくきおりおほかれとあさみと
まの心はつくへくもおほえす心つからたはふれにくきおりおほかれとあさみと
りきこえこちし御めのとゝもに納言にのほりてみえんの御心ふかゝるへしおと
りきこえこちし御めのとゝもに納言にのほりてみえんの御心ふかゝるへしおと
ゝはあやしううきたるさまかなとおほしなやみてかのわたりのことおもひたえ
ゝはあやしううきたるさまかなとおほしなやみてかのわたりのことおもひたえ
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にたらはみきのおとゝ中務の宮なとのけしきはみいはせ給めるをいつくもおも
にたらはみきのおとゝ中務の宮なとのけしきはみいはせ給めるをいつくもおも
ひさためられよとの給へとものもきこえ給はすかしこまりたる御さまにてさふ
ひさためられよとの給へとものもきこえ給はすかしこまりたる御さまにてさふ
らひ給ふかやうのことはかしこき御をしへにたにしたかふへくもおほえさりし
らひ給ふかやうのことはかしこき御をしへにたにしたかふへくもおほえさりし
かはことませまうけれといまおもひあはするにはかの御をしへこそなかきため
かはことませまうけれといまおもひあはするにはかの御をしへこそなかきため
しにはありけれつれ〱とものすれは思所あるにやと世人もおしはかるらんを
しにはありけれつれ〱とものすれは思所あるにやと世人もおしはかるらんを
すくせのひくかたにてなを〱しきことにあり〱てなひくいとしりひに人わ
すくせのひくかたにてなを〱しきことにあり〱てなひくいとしりひに人わ
ろきことそやいみしうおもひのほれと心にしもかなはすかきりのある物からす
ろきことそやいみしうおもひのほれと心にしもかなはすかきりのある物からす
き〱しき心つかはるないはけなくより宮のうちにおいいてゝ身を心にまかせ
き〱しき心つかはるないはけなくより宮のうちにおいいてゝ身を心にまかせ
す所せくいさゝかの事のあやまりもあらはかろ〱しきそしりをやおはむとつ
す所せくいさゝかの事のあやまりもあらはかろ〱しきそしりをやおはむとつ
ゝみしたになをすき〱しきとかをおいてよにはしたなめられき位あさくなに
ゝみしたになをすき〱しきとかをおいてよにはしたなめられき位あさくなに
となきみのほとうちとけ心のまゝなるふるまひなと物せらるな心をのつからお
となきみのほとうちとけ心のまゝなるふるまひなと物せらるな心をのつからお
こりぬれはおもひしつむへきくさはひなきとき女のことにてなむかしこき人む
こりぬれはおもひしつむへきくさはひなきとき女のことにてなむかしこき人む
かしもみたるゝためしありけるさるましきことに心をつけて人のなをもたてみ
かしもみたるゝためしありけるさるましきことに心をつけて人のなをもたてみ
つからもうらみをおふなむつゐのほたしとなりけるとりあやまりつゝみん人の
つからもうらみをおふなむつゐのほたしとなりけるとりあやまりつゝみん人の
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わか心にかなはすしのはむことかたきふしありともなをおもひかへさん心をな
わか心にかなはすしのはむことかたきふしありともなをおもひかへさん心をな
らひてもしはおやの心にゆつりもしはおやなくて世中かたほにありとも人から
らひてもしはおやの心にゆつりもしはおやなくて世中かたほにありとも人から
心くるしうなとあらむひとをはそれをかたかとによせてもみ給へ我ため人のた
心くるしうなとあらむひとをはそれをかたかとによせてもみ給へ我ため人のた
めついによかるへき心そふかうあるへきなとのとやかにつれ〱なるおりはか
めついによかるへき心そふかうあるへきなとのとやかにつれ〱なるおりはか
ゝる御心つかひをのみをしへたまふかやうなる御いさめにつきてたはふれにて
ゝる御心つかひをのみをしへたまふかやうなる御いさめにつきてたはふれにて
もほかさまの心をおもひかゝるはあはれに人やりならすおほえ給ふをんなもつ
もほかさまの心をおもひかゝるはあはれに人やりならすおほえ給ふをんなもつ
ねよりことにおとゝの思なけき給へる御けしきにはつかしううき身とおほしし
ねよりことにおとゝの思なけき給へる御けしきにはつかしううき身とおほしし
つめとうへはつれなくおほとかにてなかめすくし給御ふみはおもひあまり給折
つめとうへはつれなくおほとかにてなかめすくし給御ふみはおもひあまり給折
ゝあはれに心ふかきさまにきこえ給ふたかまことをかとおもひなからよなれ
ゝあはれに心ふかきさまにきこえ給ふたかまことをかとおもひなからよなれ
たる人こそあなかちに人の心をもうたかふなれあはれとみたまふふしおほかり
たる人こそあなかちに人の心をもうたかふなれあはれとみたまふふしおほかり
なかつかさの宮なんおほとのにも御けしき給りてさもやとおほしかはしたなる
なかつかさの宮なんおほとのにも御けしき給りてさもやとおほしかはしたなる
と人の聞えけれはおとゝはひきかへし御むねふたかるへしゝのひてさることを
と人の聞えけれはおとゝはひきかへし御むねふたかるへしゝのひてさることを
こそきゝしかなさけなき人の御こゝろにもありけるかなおとゝのくちいれ給し
こそきゝしかなさけなき人の御こゝろにもありけるかなおとゝのくちいれ給し
にしふねかりきとてひきたかへ給ふなるへし心よはくなひきても人はらへなら
にしふねかりきとてひきたかへ給ふなるへし心よはくなひきても人はらへなら
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ましことなとなみたをうけての給へはひめ君いとはつかしきにもそこはかとな
ましことなとなみたをうけての給へはひめ君いとはつかしきにもそこはかとな
くなみたのこほるれははしたなくてそむき給へるらうたけさかきりなしいかに
くなみたのこほるれははしたなくてそむき給へるらうたけさかきりなしいかに
せましなをやすゝみいてゝ気色をとらましなとおほしみたれてたち給ぬるなこ
せましなをやすゝみいてゝ気色をとらましなとおほしみたれてたち給ぬるなこ
りもやかてはしちかうなかめ給あやしく心をくれてもすゝみいてつるなみたか
りもやかてはしちかうなかめ給あやしく心をくれてもすゝみいてつるなみたか
ないかにおほしつらんなとよろつにおもひゐ給へるほとに御ふみありさすかに
ないかにおほしつらんなとよろつにおもひゐ給へるほとに御ふみありさすかに
そみたまふこまやかにて
そみたまふこまやかにて
つれなさはうき世のつねになりゆくをわすれぬ人や人にことなるとありけ
つれなさはうき世のつねになりゆくをわすれぬ人や人にことなるとありけ
しきはかりもかすめぬつれなさよとおもひつつけ給はうけれと
しきはかりもかすめぬつれなさよとおもひつつけ給はうけれと
かきりとて忘かたきをわするゝもこや世になひく心なるらむとあるをあや
かきりとて忘かたきをわするゝもこや世になひく心なるらむとあるをあや
しとうちをかれすかたふきつゝみゐたまへり
しとうちをかれすかたふきつゝみゐたまへり