校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・野わき
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
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中宮の御まへに秋の花をうへさせ給へることつねの年よりもみところおほくい
中宮の御まへに秋の花をうへさせ給へることつねの年よりもみところおほくい
ろくさをつくしてよしあるくろきあかきのませおゆひませつゝおなしき花のえ
ろくさをつくしてよしあるくろきあかきのませおゆひませつゝおなしき花のえ
たさしすかたあさゆふ露のひかりもよのつねならす玉かとかゝやきてつくりわ
たさしすかたあさゆふ露のひかりもよのつねならす玉かとかゝやきてつくりわ
たせるのへの色をみるにはた春の山もわすられてすゝしうおもしろく心もあく
たせるのへの色をみるにはた春の山もわすられてすゝしうおもしろく心もあく
かるゝやうなり春秋のあらそひにむかしより秋に心よする人はかすまさりける
かるゝやうなり春秋のあらそひにむかしより秋に心よする人はかすまさりける
をなたゝる春のおまへのはなそのに心よせし人〻又ひきかへしうつろふけしき
をなたゝる春のおまへのはなそのに心よせし人〻又ひきかへしうつろふけしき
世のありさまにゝたりこれを御らむしつきてさとゐしたまふほと御あそひなと
世のありさまにゝたりこれを御らむしつきてさとゐしたまふほと御あそひなと
もあらまほしけれと八月はこせむはうの御き月なれは心もとなくおほしつゝあ
もあらまほしけれと八月はこせむはうの御き月なれは心もとなくおほしつゝあ
けくるゝに此花のいろまさるけしきともを御らむするにのわきれいのとしより
けくるゝに此花のいろまさるけしきともを御らむするにのわきれいのとしより
もおとろ〱しく空の色かはりてふきいつはなとものしほるゝをいとさしも思
もおとろ〱しく空の色かはりてふきいつはなとものしほるゝをいとさしも思
しまぬ人たにあなわりなとおもひさはかるゝをまして草むらの露の玉のをみた
しまぬ人たにあなわりなとおもひさはかるゝをまして草むらの露の玉のをみた
るゝまゝに御心まとひもしぬへくおほしたりおほふはかりのそては秋の空にし
るゝまゝに御心まとひもしぬへくおほしたりおほふはかりのそては秋の空にし
もこそほしけなりけれくれゆくまゝにものもみえすふきまよはしていとむくつ
もこそほしけなりけれくれゆくまゝにものもみえすふきまよはしていとむくつ
けゝれはみかうしなとまいりぬるにうしろめたくいみしとはなのうへをおほし
けゝれはみかうしなとまいりぬるにうしろめたくいみしとはなのうへをおほし
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なけくみなみのおとゝにもせむさいつくろはせ給ひけるおりにしもかくふきい
なけくみなみのおとゝにもせむさいつくろはせ給ひけるおりにしもかくふきい
てゝもとあらのこはきはしたなくまちえたる風のけしきなりおれかへり露もと
てゝもとあらのこはきはしたなくまちえたる風のけしきなりおれかへり露もと
まるましくふきちらすをすこしはしちかくてみたまふおとゝはひめ君の御かた
まるましくふきちらすをすこしはしちかくてみたまふおとゝはひめ君の御かた
におはします程に中将の君まいり給ひてひむかしのわたとのゝこさうしのかみ
におはします程に中将の君まいり給ひてひむかしのわたとのゝこさうしのかみ
よりつまとのあきたるひまをなに心もなくみいれ給へるに女房のあまたみゆれ
よりつまとのあきたるひまをなに心もなくみいれ給へるに女房のあまたみゆれ
はたちとまりてをともせてみる御屏風もかせのいたくふきけれはをしたゝみよ
はたちとまりてをともせてみる御屏風もかせのいたくふきけれはをしたゝみよ
せたるにみとをしあらはなるひさしのおましにゐ給へる人ものにまきるへくも
せたるにみとをしあらはなるひさしのおましにゐ給へる人ものにまきるへくも
あらすけたかくきよらにさとにほふ心ちして春のあけほのゝかすみのまよりお
あらすけたかくきよらにさとにほふ心ちして春のあけほのゝかすみのまよりお
もしろきかはさくらのさきみたれたるをみる心ちすあちきなくみたてまつるわ
もしろきかはさくらのさきみたれたるをみる心ちすあちきなくみたてまつるわ
かかほにもうつりくるやうにあい行はにほひちりてまたなくめつらしき人の御
かかほにもうつりくるやうにあい行はにほひちりてまたなくめつらしき人の御
さまなりみすのふきあけらるゝをひと〱をさへていかにしたるにかあらむう
さまなりみすのふきあけらるゝをひと〱をさへていかにしたるにかあらむう
ちわらひたまへるいといみしくみゆはなともを心くるしかりてえみすてゝいり
ちわらひたまへるいといみしくみゆはなともを心くるしかりてえみすてゝいり
給はす御まへなる人〻もさま〱にものきよけなるすかたともはみわたさるれ
給はす御まへなる人〻もさま〱にものきよけなるすかたともはみわたさるれ
とめうつるへくもあらすおとゝのいとけとをくはるかにもてなし給へるはかく
とめうつるへくもあらすおとゝのいとけとをくはるかにもてなし給へるはかく
Page 865
みる人たゝにはえ思ふましき御ありさまをいたりふかき御心にてもしかゝるこ
みる人たゝにはえ思ふましき御ありさまをいたりふかき御心にてもしかゝるこ
ともやとおほすなりけりと思ふにけはひおそろしうてたちさるにそにしの御方
ともやとおほすなりけりと思ふにけはひおそろしうてたちさるにそにしの御方
よりうちのみさうしひきあけてわたり給ふいとうたてあはたゝしきかせなめり
よりうちのみさうしひきあけてわたり給ふいとうたてあはたゝしきかせなめり
みかうしおろしてよをのこともあるらむをあらはにもこそあれときこえ給ふを
みかうしおろしてよをのこともあるらむをあらはにもこそあれときこえ給ふを
またよりてみれはものきこえておとゝもほゝゑみてみたてまつり給ふおやとも
またよりてみれはものきこえておとゝもほゝゑみてみたてまつり給ふおやとも
おほえすわかくきよけになまめきていみしき御かたちのさかりなりをんなもね
おほえすわかくきよけになまめきていみしき御かたちのさかりなりをんなもね
ひとゝのひあかぬことなき御さまともなるをみにしむはかりおほゆれとこのわ
ひとゝのひあかぬことなき御さまともなるをみにしむはかりおほゆれとこのわ
た殿のかうしもふきはなちてたてるところのあらはになれはおそろしうてたち
た殿のかうしもふきはなちてたてるところのあらはになれはおそろしうてたち
のきぬいまゝいれるやうにうちこはつくりてすのこの方にあゆみいて給へれは
のきぬいまゝいれるやうにうちこはつくりてすのこの方にあゆみいて給へれは
されはよあらはなりつらむとてかのつまとのあきたりけるよといまそみとかめ
されはよあらはなりつらむとてかのつまとのあきたりけるよといまそみとかめ
たまふとしころかゝることのつゆなかりつるをかせこそけにいはほもふきあけ
たまふとしころかゝることのつゆなかりつるをかせこそけにいはほもふきあけ
つへきものなりけれさはかりの御心ともをさはかしてめつらしくうれしきめを
つへきものなりけれさはかりの御心ともをさはかしてめつらしくうれしきめを
みつるかなとおほゆ人〱まいりていといかめしうふきぬへきかせにはへりう
みつるかなとおほゆ人〱まいりていといかめしうふきぬへきかせにはへりう
しとらのかたよりふき侍れはこの御まへはのとけきなりむまはのおとゝみなみ
しとらのかたよりふき侍れはこの御まへはのとけきなりむまはのおとゝみなみ
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のつりとのなとはあやうけになむとてとかくことをこなひのゝしる中将はいつ
のつりとのなとはあやうけになむとてとかくことをこなひのゝしる中将はいつ
こよりものしつるそ三条の宮に侍つるをかせいたくふきぬへしと人〻の申つれ
こよりものしつるそ三条の宮に侍つるをかせいたくふきぬへしと人〻の申つれ
はおほつかなさにまいり侍つるかしこにはまして心ほそくかせのをとをもいま
はおほつかなさにまいり侍つるかしこにはまして心ほそくかせのをとをもいま
はかへりてわかきこのやうにをち給めれは心くるしさにまかて侍なむと申給へ
はかへりてわかきこのやうにをち給めれは心くるしさにまかて侍なむと申給へ
はけにはやまうて給ひねおいもていきて又わかうなることよにあるましき事な
はけにはやまうて給ひねおいもていきて又わかうなることよにあるましき事な
れとけにさのみこそあれなとあはれかりきこえ給てかくさはかしけにはへめる
れとけにさのみこそあれなとあはれかりきこえ給てかくさはかしけにはへめる
をこのあそむさふらへはと思たまへゆつりてなむと御せうそこきこえ給ふみち
をこのあそむさふらへはと思たまへゆつりてなむと御せうそこきこえ給ふみち
すからいりもみする風なれとうるはしくものし給ふ君にて三条の宮と六条院と
すからいりもみする風なれとうるはしくものし給ふ君にて三条の宮と六条院と
にまいりて御らむせられ給はぬ日なしうちの御ものいみなとにえさらすこもり
にまいりて御らむせられ給はぬ日なしうちの御ものいみなとにえさらすこもり
給へき日よりほかはいそかしきおほやけことせちゑなとのいとまいるへくこと
給へき日よりほかはいそかしきおほやけことせちゑなとのいとまいるへくこと
しけきにあはせてもまつこの院にまいり宮よりそいて給ひけれはましてけふか
しけきにあはせてもまつこの院にまいり宮よりそいて給ひけれはましてけふか
ゝる空のけしきによりかせのさきにあくかれありき給ふもあはれにみゆ宮いと
ゝる空のけしきによりかせのさきにあくかれありき給ふもあはれにみゆ宮いと
うれしうたのもしとまちうけ給てこゝらのよはひにまたかくさはかしき野わき
うれしうたのもしとまちうけ給てこゝらのよはひにまたかくさはかしき野わき
にこそあはさりつれとたゝわなゝきにわなゝき給おほきなる木のえたなとのを
にこそあはさりつれとたゝわなゝきにわなゝき給おほきなる木のえたなとのを
Page 867
るゝをともいとうたてありおとゝのかはらさへのこるましくふきちらすにかく
るゝをともいとうたてありおとゝのかはらさへのこるましくふきちらすにかく
てものし給へる事とかつはのたまふそこらところせかりし御いきをひのしつま
てものし給へる事とかつはのたまふそこらところせかりし御いきをひのしつま
りてこの君をたのもし人におほしたるつねなきよなりいまもおほかたのおほえ
りてこの君をたのもし人におほしたるつねなきよなりいまもおほかたのおほえ
のうすらきたまふことはなけれとうちのおほとのゝ御けはひはなか〱すこし
のうすらきたまふことはなけれとうちのおほとのゝ御けはひはなか〱すこし
うとくそありける中将よもすからあらき風のをとにもすゝろにものあはれなり
うとくそありける中将よもすからあらき風のをとにもすゝろにものあはれなり
心にかけて恋しと思人の御事はさしをかれてありつる御おもかけのわすられぬ
心にかけて恋しと思人の御事はさしをかれてありつる御おもかけのわすられぬ
をこはいかにおほゆる心そあるましき思ひもこそゝへいとおそろしきことゝみ
をこはいかにおほゆる心そあるましき思ひもこそゝへいとおそろしきことゝみ
つからおもひまきらはしこと〱に思ひうつれとなをふとおほえつゝきしかた
つからおもひまきらはしこと〱に思ひうつれとなをふとおほえつゝきしかた
ゆくすゑありかたくもものし給ひけるかなかゝる御なからひにいかてひんかし
ゆくすゑありかたくもものし給ひけるかなかゝる御なからひにいかてひんかし
の御方さるものゝかすにてたちならひ給つらむたとしへなかりけりやあないと
の御方さるものゝかすにてたちならひ給つらむたとしへなかりけりやあないと
をしとおほゆおとゝの御心はへをありかたしと思ひしり給人からのいとまめや
をしとおほゆおとゝの御心はへをありかたしと思ひしり給人からのいとまめや
かなれはにけなさをおもひよらねとさやうならむ人をこそおなしくはみてあか
かなれはにけなさをおもひよらねとさやうならむ人をこそおなしくはみてあか
しくらさめかきりあらむいのちのほともいますこしはかならすのひなむかしと
しくらさめかきりあらむいのちのほともいますこしはかならすのひなむかしと
おもひつゝけらるあか月かたにかせすこしゝめりてむらさめのやうにふりいつ
おもひつゝけらるあか月かたにかせすこしゝめりてむらさめのやうにふりいつ
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六条院にははなれたるやともたふれたりなと人〻申かせのふきまふほとひろく
六条院にははなれたるやともたふれたりなと人〻申かせのふきまふほとひろく
そこらたかき心ちする院に人〻おはしますおとゝのあたりにこそしけゝれひん
そこらたかき心ちする院に人〻おはしますおとゝのあたりにこそしけゝれひん
かしのまちなとは人すくなにおほされつらむとおとろき給ひてまたほの〱と
かしのまちなとは人すくなにおほされつらむとおとろき給ひてまたほの〱と
するにまいり給みちのほとよこさまあめいとひやゝにふきいる空のけしきもす
するにまいり給みちのほとよこさまあめいとひやゝにふきいる空のけしきもす
こきにあやしくあくかれたる心ちしてなに事そやまたわか心に思ひくはゝれる
こきにあやしくあくかれたる心ちしてなに事そやまたわか心に思ひくはゝれる
よと思ひいつれはいとにけなき事なりけりあなものくるおしととさまかうさま
よと思ひいつれはいとにけなき事なりけりあなものくるおしととさまかうさま
に思つゝひんかしの御方にまつまうてたまへれはをちこうしておはしけるにと
に思つゝひんかしの御方にまつまうてたまへれはをちこうしておはしけるにと
かくきこえなくさめて人めしてところ〱つくろはすへきよしなといひをきて
かくきこえなくさめて人めしてところ〱つくろはすへきよしなといひをきて
みなみのおとゝにまいり給へれはまたみかうしもまいらすおはしますにあたれ
みなみのおとゝにまいり給へれはまたみかうしもまいらすおはしますにあたれ
るかうらんにをしかゝりてみわたせは山の木ともゝふきなひかしてえたともお
るかうらんにをしかゝりてみわたせは山の木ともゝふきなひかしてえたともお
ほくおれふしたり草むらはさらにもいはすひはたかはら所〱のたてしとみす
ほくおれふしたり草むらはさらにもいはすひはたかはら所〱のたてしとみす
いかいなとやうのものみたりかはし日のわつかにさしいてたるにうれへかほな
いかいなとやうのものみたりかはし日のわつかにさしいてたるにうれへかほな
るにはの露きら〱として空はいとすこくきりわたれるにそこはかとなく涙の
るにはの露きら〱として空はいとすこくきりわたれるにそこはかとなく涙の
おつるををしのこひかくしてうちしはふき給へれは中将のこはつくるにそあな
おつるををしのこひかくしてうちしはふき給へれは中将のこはつくるにそあな
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るよはまたふかゝらむはとておき給なりなに事にかあらんきこえ給ふこゑはせ
るよはまたふかゝらむはとておき給なりなに事にかあらんきこえ給ふこゑはせ
ておとゝうちわらひ給ていにしへたにしらせたてまつらすなりにしあか月のわ
ておとゝうちわらひ給ていにしへたにしらせたてまつらすなりにしあか月のわ
かれよいまならひたまはむに心くるしからむとてとはかりかたらひきこえたま
かれよいまならひたまはむに心くるしからむとてとはかりかたらひきこえたま
ふけはひともいとをかし女の御いらへはきこえねとほの〱かやうにきこえた
ふけはひともいとをかし女の御いらへはきこえねとほの〱かやうにきこえた
はふれ給事のはのおもむきにゆるひなき御なからひかなときゝゐたまへりみか
はふれ給事のはのおもむきにゆるひなき御なからひかなときゝゐたまへりみか
うしを御てつからひきあけ給へはけちかきかたはらいたさにたちのきてさふら
うしを御てつからひきあけ給へはけちかきかたはらいたさにたちのきてさふら
ひ給ふいかにそよへ宮はまちよろこひ給きやしかはかなきことにつけても涙も
ひ給ふいかにそよへ宮はまちよろこひ給きやしかはかなきことにつけても涙も
ろにものし給へはいとふひんにこそ侍れと申給へはわらひ給ていまいくはくも
ろにものし給へはいとふひんにこそ侍れと申給へはわらひ給ていまいくはくも
おはせしまめやかにつかうまつりみえたてまつれ内のおとゝはこまかにしもあ
おはせしまめやかにつかうまつりみえたてまつれ内のおとゝはこまかにしもあ
るましうこそうれへ給しか人からあやしうはなやかにをゝしきかたによりてお
るましうこそうれへ給しか人からあやしうはなやかにをゝしきかたによりてお
やなとの御けうをもいかめしきさまをはたてゝ人にもみおとろかさんの心あり
やなとの御けうをもいかめしきさまをはたてゝ人にもみおとろかさんの心あり
まことにしみてふかき所はなき人になむものせられけるさるは心のくまおほく
まことにしみてふかき所はなき人になむものせられけるさるは心のくまおほく
いとかしこき人のすゑのよにあまるまてさえたくひなくうるさなから人として
いとかしこき人のすゑのよにあまるまてさえたくひなくうるさなから人として
かくなむなき事はかたかりけるなとの給ふいとおとろ〱しかりつるかせに中
かくなむなき事はかたかりけるなとの給ふいとおとろ〱しかりつるかせに中
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宮にはかはかしき宮つかさなとさふらひつらむやとてこの君して御せうそこき
宮にはかはかしき宮つかさなとさふらひつらむやとてこの君して御せうそこき
こえたまふよるのかせのをとはいかゝきこしめしつらむふきみたり侍しにおこ
こえたまふよるのかせのをとはいかゝきこしめしつらむふきみたり侍しにおこ
りあひ侍ていとたえかたきためらひはへるほとになむときこえたまふ中将おり
りあひ侍ていとたえかたきためらひはへるほとになむときこえたまふ中将おり
てなかのらうのとよりとをりてまいり給ふあさほらけのかたちいとめてたくお
てなかのらうのとよりとをりてまいり給ふあさほらけのかたちいとめてたくお
かしけなりひんかしのたいのみなみのそはにたちて御前のかたをみやり給へは
かしけなりひんかしのたいのみなみのそはにたちて御前のかたをみやり給へは
みかうしまたふたまはかりあけてほのかなるあさほらけのほとにみすまきあけ
みかうしまたふたまはかりあけてほのかなるあさほらけのほとにみすまきあけ
て人〻ゐたりかうらんにをしかゝりつゝわかやかなるかきりあまたみゆうちと
て人〻ゐたりかうらんにをしかゝりつゝわかやかなるかきりあまたみゆうちと
けたるはいかゝあらむさやかならぬあけほのゝほといろ〱なるすかたはいつ
けたるはいかゝあらむさやかならぬあけほのゝほといろ〱なるすかたはいつ
れともなくおかしはらはへおろさせ給てむしのこともに露かはせ給なりけりし
れともなくおかしはらはへおろさせ給てむしのこともに露かはせ給なりけりし
をんなてしこゝきうすきあこめともにをむなへしのかさみなとやうの時にあひ
をんなてしこゝきうすきあこめともにをむなへしのかさみなとやうの時にあひ
たるさまにて四五人つれてこゝかしこのくさむらによりていろ〱のこともを
たるさまにて四五人つれてこゝかしこのくさむらによりていろ〱のこともを
もてさまよひなてしこなとのいとあはれけなるえたともとりもてまいるきりの
もてさまよひなてしこなとのいとあはれけなるえたともとりもてまいるきりの
まよひはいとえむにそみえける吹くるおひ風はしをにこと〱にゝほふ空もか
まよひはいとえむにそみえける吹くるおひ風はしをにこと〱にゝほふ空もか
うのかほりもふれはひ給へる御けはひにやといと思ひやりめてたく心けさうせ
うのかほりもふれはひ給へる御けはひにやといと思ひやりめてたく心けさうせ
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られてたちいてにくけれとしのひやかにうちをとなひてあゆみいて給へるに人
られてたちいてにくけれとしのひやかにうちをとなひてあゆみいて給へるに人
〻けさやかにおとろきかほにはあらねとみなすへりいりぬ御まいりのほとなと
〻けさやかにおとろきかほにはあらねとみなすへりいりぬ御まいりのほとなと
わらはなりしにいりたちなれ給へる女房なともいとけうとくはあらす御せうそ
わらはなりしにいりたちなれ給へる女房なともいとけうとくはあらす御せうそ
こけいせさせ給てさい将の君ないしなとけはひすれはわたくし事もしのひやか
こけいせさせ給てさい将の君ないしなとけはひすれはわたくし事もしのひやか
にかたらひ給これはたさいへとけたかくすみたるけはひありさまをみるにもさ
にかたらひ給これはたさいへとけたかくすみたるけはひありさまをみるにもさ
ま〱にもの思ひいてらるみなみのおとゝにはみかうしまいりわたしてよへみ
ま〱にもの思ひいてらるみなみのおとゝにはみかうしまいりわたしてよへみ
すてかたかりしはなとものゆくゑもしらぬやうにてしほれふしたるをみたまひ
すてかたかりしはなとものゆくゑもしらぬやうにてしほれふしたるをみたまひ
けり中将みはしにゐ給て御返きこえ給ふあらきかせをもふせかせ給ふへくやと
けり中将みはしにゐ給て御返きこえ給ふあらきかせをもふせかせ給ふへくやと
わか〱しく心ほそくおほえ侍をいまなむなくさみ侍ぬるときこえ給へれはあ
わか〱しく心ほそくおほえ侍をいまなむなくさみ侍ぬるときこえ給へれはあ
やしくあえかにおはする宮なりをむなとちはものおそろしくおほしぬへかりつ
やしくあえかにおはする宮なりをむなとちはものおそろしくおほしぬへかりつ
るよのさまなれはけにおろかなりともおほひつらむとてやかてまいり給ふ御な
るよのさまなれはけにおろかなりともおほひつらむとてやかてまいり給ふ御な
をしなとたてまつるとてみすひきあけていりたまふにみしかき御木丁ひきよせ
をしなとたてまつるとてみすひきあけていりたまふにみしかき御木丁ひきよせ
てはつかにみゆる御そてくちはさにこそはあらめと思ふにむねつふ〱となる
てはつかにみゆる御そてくちはさにこそはあらめと思ふにむねつふ〱となる
心ちするもうたてあれはほかさまにみやりつとの御かゝみなとみたまひてしの
心ちするもうたてあれはほかさまにみやりつとの御かゝみなとみたまひてしの
Page 872
ひて中将のあさけのすかたはきよけなりなたゝいまはきひはなるへきほとをか
ひて中将のあさけのすかたはきよけなりなたゝいまはきひはなるへきほとをか
たくなしからすみゆるも心のやみにやとてわか御かほはふりかたくよしとみ給
たくなしからすみゆるも心のやみにやとてわか御かほはふりかたくよしとみ給
へかめりいといたう心けさうし給て宮にみえたてまつるはゝつかしうこそあれ
へかめりいといたう心けさうし給て宮にみえたてまつるはゝつかしうこそあれ
なにはかりあらはなるゆへ〱しさもみえ給はぬ人のおくゆかしく心つかひせ
なにはかりあらはなるゆへ〱しさもみえ給はぬ人のおくゆかしく心つかひせ
られ給そかしいとおほとかにをんなしきものからけしきつきてそおはするやと
られ給そかしいとおほとかにをんなしきものからけしきつきてそおはするやと
ていて給ふに中将なかめいりてとみにもおとろくましきけしきにてゐたまへる
ていて給ふに中将なかめいりてとみにもおとろくましきけしきにてゐたまへる
を心とき人の御めにはいかゝみ給けむたちかへり女君にきのふ風のまきれに中
を心とき人の御めにはいかゝみ給けむたちかへり女君にきのふ風のまきれに中
将はみたてまつりやしてけんかのとのあきたりしによとのたまへはおもてうち
将はみたてまつりやしてけんかのとのあきたりしによとのたまへはおもてうち
あかみていかてかはさはあらむわたとのゝかたには人のをともせさりしものを
あかみていかてかはさはあらむわたとのゝかたには人のをともせさりしものを
ときこえ給ふなをあやしとひとりこちてわたり給ひぬみすのうちにいり給ひぬ
ときこえ給ふなをあやしとひとりこちてわたり給ひぬみすのうちにいり給ひぬ
れは中将わたとのゝとくちに人〻のけはひするによりてものなといひたはふる
れは中将わたとのゝとくちに人〻のけはひするによりてものなといひたはふる
れとおもふことのすち〱なけかしくてれいよりもしめりてゐたまへりこなた
れとおもふことのすち〱なけかしくてれいよりもしめりてゐたまへりこなた
よりやかてきたにとをりてあかしの御方をみやりたまへははか〱しきけいし
よりやかてきたにとをりてあかしの御方をみやりたまへははか〱しきけいし
たつ人なともみえすなれたるしもつかひともそくさの中にましりてありくはら
たつ人なともみえすなれたるしもつかひともそくさの中にましりてありくはら
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はへなとおかしきあこめすかたうちとけて心とゝめとりわきうへ給ふりんたう
はへなとおかしきあこめすかたうちとけて心とゝめとりわきうへ給ふりんたう
あさかほのはいましれるませもみなちりみたれたるをとかくひきいてたつぬる
あさかほのはいましれるませもみなちりみたれたるをとかくひきいてたつぬる
なるへしものゝあはれにおほえけるまゝにしやうのことをかきまさくりつゝは
なるへしものゝあはれにおほえけるまゝにしやうのことをかきまさくりつゝは
しちかうゐたまへるに御さきをふこゑのしけれはうちとけなへはめるすかたに
しちかうゐたまへるに御さきをふこゑのしけれはうちとけなへはめるすかたに
こうちきひきおとしてけちめみせたるいといたしはしのかたについゐたまひて
こうちきひきおとしてけちめみせたるいといたしはしのかたについゐたまひて
かせのさはきはかりをとふらひ給ひてつれなくたちかへり給心やましけなり
かせのさはきはかりをとふらひ給ひてつれなくたちかへり給心やましけなり
おほかたにおきのはすくる風のをともうき身ひとつにしむ心ちしてとひと
おほかたにおきのはすくる風のをともうき身ひとつにしむ心ちしてとひと
りこちけりにしのたいにはおそろしと思ひあかし給ひけるなこりにねすくして
りこちけりにしのたいにはおそろしと思ひあかし給ひけるなこりにねすくして
いまそかゝみなともみたまひけること〱しくさきなをひそとの給へはことに
いまそかゝみなともみたまひけること〱しくさきなをひそとの給へはことに
をとせていり給ふひやうふなともみなたゝみよせものしとけなくしなしたるに
をとせていり給ふひやうふなともみなたゝみよせものしとけなくしなしたるに
日のはなやかにさしいてたるほとけさ〱とものきよけなるさましてゐたまへ
日のはなやかにさしいてたるほとけさ〱とものきよけなるさましてゐたまへ
りちかくゐ給ひてれいの風につけてもおなしすちにむつかしうきこえたはふれ
りちかくゐ給ひてれいの風につけてもおなしすちにむつかしうきこえたはふれ
給へはたえすうたてと思ひてかう心うけれはこそこよひの風にもあくかれなま
給へはたえすうたてと思ひてかう心うけれはこそこよひの風にもあくかれなま
ほしく侍つれとむつかり給へはいとよくうちわらひ給ひて風につきてあくかれ
ほしく侍つれとむつかり給へはいとよくうちわらひ給ひて風につきてあくかれ
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たまはむやかる〱しからむさりともとまるかたありなむかしやう〱かゝる
たまはむやかる〱しからむさりともとまるかたありなむかしやう〱かゝる
御心むけこそそひにけれことはりやとのたまへはけにうち思ひのまゝにきこえ
御心むけこそそひにけれことはりやとのたまへはけにうち思ひのまゝにきこえ
てけるかなとおほしてみつからもうちゑみ給へるいとおかしきいろあひつらつ
てけるかなとおほしてみつからもうちゑみ給へるいとおかしきいろあひつらつ
きなりほをつきなといふめるやうにふくらかにてかみのかゝれるひま〱うつ
きなりほをつきなといふめるやうにふくらかにてかみのかゝれるひま〱うつ
くしうおほゆまみのあまりわらゝかなるそいとしもしなたかくみえさりけるそ
くしうおほゆまみのあまりわらゝかなるそいとしもしなたかくみえさりけるそ
のほかはつゆなむつくへうもあらす中将いとこまやかにきこえ給をいかてこの
のほかはつゆなむつくへうもあらす中将いとこまやかにきこえ給をいかてこの
御かたちみてしかなと思ひわたる心にてすみのまのみすのき丁はそひなからし
御かたちみてしかなと思ひわたる心にてすみのまのみすのき丁はそひなからし
とけなきをやをらひきあけてみるにまきるゝものともゝとりやりたれはいとよ
とけなきをやをらひきあけてみるにまきるゝものともゝとりやりたれはいとよ
くみゆかくたはふれ給けしきのしるきをあやしのわさやおやこときこえなから
くみゆかくたはふれ給けしきのしるきをあやしのわさやおやこときこえなから
かくふところはなれすものちかゝへきほとかはとめとまりぬみやつけたまはむ
かくふところはなれすものちかゝへきほとかはとめとまりぬみやつけたまはむ
とおそろしけれとあやしきに心もおとろきて猶みれはゝしらかくれにすこしそ
とおそろしけれとあやしきに心もおとろきて猶みれはゝしらかくれにすこしそ
はみ給へりつるをひきよせ給へるに御くしのなみよりてはら〱とこほれかゝ
はみ給へりつるをひきよせ給へるに御くしのなみよりてはら〱とこほれかゝ
りたるほと女もいとむつかしくくるしと思ふたまへるけしきなからさすかにい
りたるほと女もいとむつかしくくるしと思ふたまへるけしきなからさすかにい
となこやかなるさましてよりかゝり給へるはことゝなれ〱しきにこそあめれ
となこやかなるさましてよりかゝり給へるはことゝなれ〱しきにこそあめれ
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いてあなうたていかなることにかあらむおもひよらぬくまなくおはしける御心
いてあなうたていかなることにかあらむおもひよらぬくまなくおはしける御心
にてもとよりみなれおほしたて給はぬはかゝる御おもひそい給へるなめりむへ
にてもとよりみなれおほしたて給はぬはかゝる御おもひそい給へるなめりむへ
なりけりやあなうとましと思ふ心もはつかし女の御さまけにはらからといふと
なりけりやあなうとましと思ふ心もはつかし女の御さまけにはらからといふと
もすこしたちのきてことはらそかしなと思はむはなとか心あやまりもせさらむ
もすこしたちのきてことはらそかしなと思はむはなとか心あやまりもせさらむ
とおほゆきのふみし御けはひにはけおとりたれとみるにゑまるゝさまはたちも
とおほゆきのふみし御けはひにはけおとりたれとみるにゑまるゝさまはたちも
ならひぬへくみゆるやえやまふきのさきみたれたるさかりに露のかゝれるゆふ
ならひぬへくみゆるやえやまふきのさきみたれたるさかりに露のかゝれるゆふ
はへそふと思ひいてらるゝおりにあはぬよそへともなれとなをうちおほゆるや
はへそふと思ひいてらるゝおりにあはぬよそへともなれとなをうちおほゆるや
うよはなはかきりこそあれそゝけたるしへなともましるかし人の御かたちのよ
うよはなはかきりこそあれそゝけたるしへなともましるかし人の御かたちのよ
きはたとへんかたなきものなりけりおまへに人もいてこすいとこまやかにうち
きはたとへんかたなきものなりけりおまへに人もいてこすいとこまやかにうち
さゝめきかたらひきこえ給ふにいかゝあらむまめたちてそたち給ふ女君
さゝめきかたらひきこえ給ふにいかゝあらむまめたちてそたち給ふ女君
ふきみたる風のけしきにをみなへしゝほれしぬへき心ちこそすれくはしく
ふきみたる風のけしきにをみなへしゝほれしぬへき心ちこそすれくはしく
もきこえぬにうちすむし給ふをほのきくににくきものゝおかしけれはなをみは
もきこえぬにうちすむし給ふをほのきくににくきものゝおかしけれはなをみは
てまほしけれとちかゝりけりとみえたてまつらしとおもひてたちさりぬ御かへ
てまほしけれとちかゝりけりとみえたてまつらしとおもひてたちさりぬ御かへ
り
り
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した露になひかましかはをみなへしあらきかせにはしほれさらましなよた
した露になひかましかはをみなへしあらきかせにはしほれさらましなよた
けをみ給へかしなとひかみゝにやありけむきゝよくもあらすそひんかしの御か
けをみ給へかしなとひかみゝにやありけむきゝよくもあらすそひんかしの御か
たへこれよりそわたり給ふけさのあさゝむなるうちとけわさにやものたちなと
たへこれよりそわたり給ふけさのあさゝむなるうちとけわさにやものたちなと
するねひこたちおまへにあまたしてほそひつめくものにわたひきかけてまさく
するねひこたちおまへにあまたしてほそひつめくものにわたひきかけてまさく
るわか人ともありいときよらなるくちはのうすものいまやういろのになくうち
るわか人ともありいときよらなるくちはのうすものいまやういろのになくうち
たるなとひきちらしたまへり中将のしたかさねか御前のつほせむさいのえんも
たるなとひきちらしたまへり中将のしたかさねか御前のつほせむさいのえんも
とまりぬらむかしかくふきちらしてむにはなに事かせられむすさましかるへき
とまりぬらむかしかくふきちらしてむにはなに事かせられむすさましかるへき
秋なめりなとのたまひてなにゝかあらむさま〱なるものゝ色とものいときよ
秋なめりなとのたまひてなにゝかあらむさま〱なるものゝ色とものいときよ
らなれはかやうなるかたはみなみのうへにもおとらすかしとおほす御なをし花
らなれはかやうなるかたはみなみのうへにもおとらすかしとおほす御なをし花
文れうをこのころつみいたしたるはなしてはかなくそめいて給へるいとあらま
文れうをこのころつみいたしたるはなしてはかなくそめいて給へるいとあらま
ほしきいろしたり中将にこそかやうにてはきせ給はめわかき人のにてめやすか
ほしきいろしたり中将にこそかやうにてはきせ給はめわかき人のにてめやすか
めりなとやうのことをきこえ給ひてわたり給ぬむつかしき方〱めくり給ふ御
めりなとやうのことをきこえ給ひてわたり給ぬむつかしき方〱めくり給ふ御
ともにありきて中将はなま心やましうかゝまほしきふみなとひたけぬるを思ひ
ともにありきて中将はなま心やましうかゝまほしきふみなとひたけぬるを思ひ
つゝひめ君の御かたにまいり給へりまたあなたになむおはします風にをちさせ
つゝひめ君の御かたにまいり給へりまたあなたになむおはします風にをちさせ
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給ひてけさはえおきあかり給はさりつると御めのとそきこゆるものさはかしけ
給ひてけさはえおきあかり給はさりつると御めのとそきこゆるものさはかしけ
なりしかはとのゐもつかうまつらむとおもひ給へしを宮のいとも心くるしうお
なりしかはとのゐもつかうまつらむとおもひ給へしを宮のいとも心くるしうお
ほいたりしかはなむひゐなのとのはいかゝおはすらむとゝひ給へは人〻わらひ
ほいたりしかはなむひゐなのとのはいかゝおはすらむとゝひ給へは人〻わらひ
てあふきの風たにまいれはいみしきことにおほいたるをほと〱しくこそふき
てあふきの風たにまいれはいみしきことにおほいたるをほと〱しくこそふき
みたり侍しかこの御とのあつかひにわひにて侍なとかたること〱しからぬか
みたり侍しかこの御とのあつかひにわひにて侍なとかたること〱しからぬか
みやはへる御つほねのすゝりとこひ給へはみつしによりてかみひとまき御すゝ
みやはへる御つほねのすゝりとこひ給へはみつしによりてかみひとまき御すゝ
りのふたにとりをろしてたてまつれはいなこれはかたはらいたしとの給へとき
りのふたにとりをろしてたてまつれはいなこれはかたはらいたしとの給へとき
たのおとゝのおほえをおもふにすこしなのめなる心ちしてふみかき給ふむらさ
たのおとゝのおほえをおもふにすこしなのめなる心ちしてふみかき給ふむらさ
きのうすやうなりけりすみ心とめてをしすりふてのさきうちみつゝこまやかに
きのうすやうなりけりすみ心とめてをしすりふてのさきうちみつゝこまやかに
かきやすらひ給へるいとよしされとあやしくさたまりてにくきくちつきこそも
かきやすらひ給へるいとよしされとあやしくさたまりてにくきくちつきこそも
のしたまへ
のしたまへ
風さはきむら雲まかふ夕にもわするゝまなくわすられぬ君ふきみたれたる
風さはきむら雲まかふ夕にもわするゝまなくわすられぬ君ふきみたれたる
かるかやにつけたまへれはひと〱かたのゝ少将はかみのいろにこそとゝのへ
かるかやにつけたまへれはひと〱かたのゝ少将はかみのいろにこそとゝのへ
侍りけれときこゆさはかりの色も思ひわかさりけりやいつこのゝへのほとりの
侍りけれときこゆさはかりの色も思ひわかさりけりやいつこのゝへのほとりの
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花なとかやうの人〻にもことすくなにみえて心とくへくもゝてなさすいとすく
花なとかやうの人〻にもことすくなにみえて心とくへくもゝてなさすいとすく
〱しうけたかしまたもかいたまうてむまのすけに給へれはおかしきわらはま
〱しうけたかしまたもかいたまうてむまのすけに給へれはおかしきわらはま
たいとなれたる御すいしんなとにうちさゝめきてとらするをわかき人〻たゝな
たいとなれたる御すいしんなとにうちさゝめきてとらするをわかき人〻たゝな
らすゆかしかるわたらせ給ふとて人〻うちそよめきき丁ひきなをしなとすみつ
らすゆかしかるわたらせ給ふとて人〻うちそよめきき丁ひきなをしなとすみつ
るはなのかほともゝおもひくらへまほしうてれいはものゆかしからぬ心ちにあ
るはなのかほともゝおもひくらへまほしうてれいはものゆかしからぬ心ちにあ
なかちにつまとのみすをひきゝてき丁のほころひよりみれはものゝそはよりた
なかちにつまとのみすをひきゝてき丁のほころひよりみれはものゝそはよりた
ゝはひわたり給ふほとそふとうちみえたる人のしけくまかへはなにのあやめも
ゝはひわたり給ふほとそふとうちみえたる人のしけくまかへはなにのあやめも
みえぬほとにいと心もとなしうすいろの御そにかみのまたゝけにはゝつれたる
みえぬほとにいと心もとなしうすいろの御そにかみのまたゝけにはゝつれたる
すゑのひきひろけたるやうにていとほそくちいさきやうたいらうたけに心くる
すゑのひきひろけたるやうにていとほそくちいさきやうたいらうたけに心くる
しをとゝしはかりはたまさかにもほのみたてまつりしにまたこよなくおひまさ
しをとゝしはかりはたまさかにもほのみたてまつりしにまたこよなくおひまさ
り給ふなめりかしましてさかりいかならむとおもふかのみつるさき〱のさく
り給ふなめりかしましてさかりいかならむとおもふかのみつるさき〱のさく
らやまふきといはゝこれはふちのはなとやいふへからむこたかき木よりさきか
らやまふきといはゝこれはふちのはなとやいふへからむこたかき木よりさきか
ゝりて風になひきたるにほひはかくそあるかしと思ひよそへらるかゝる人〻を
ゝりて風になひきたるにほひはかくそあるかしと思ひよそへらるかゝる人〻を
心にまかせてあけくれみたてまつらはやさもありぬへきほとなからへたて〱
心にまかせてあけくれみたてまつらはやさもありぬへきほとなからへたて〱
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のけさやかなるこそつらけれなと思ふにまめ心もなまあくかるゝ心ちすをは宮
のけさやかなるこそつらけれなと思ふにまめ心もなまあくかるゝ心ちすをは宮
の御もとにもまいり給へれはのとやかにて御をこなひし給ふよろしきわか人な
の御もとにもまいり給へれはのとやかにて御をこなひし給ふよろしきわか人な
とこゝにもさふらへともてなしけはひさうそくともゝさかりなるあたりにはに
とこゝにもさふらへともてなしけはひさうそくともゝさかりなるあたりにはに
るへくもあらすかたちよきあま君たちのすみそめにやつれたるそなか〱かゝ
るへくもあらすかたちよきあま君たちのすみそめにやつれたるそなか〱かゝ
る所につけてはさるかたにてあはれなりける内のおとゝもまいり給へるに御と
る所につけてはさるかたにてあはれなりける内のおとゝもまいり給へるに御と
なあふらなとまいりてのとやかに御物かたりなときこえ給ふひめ君をひさしく
なあふらなとまいりてのとやかに御物かたりなときこえ給ふひめ君をひさしく
みたてまつらぬかあさましきことゝてたゝなきになき給ふいまこのころのほと
みたてまつらぬかあさましきことゝてたゝなきになき給ふいまこのころのほと
にまいらせむ心つからものおもはしけにてくちをしうをとろへにてなむはへめ
にまいらせむ心つからものおもはしけにてくちをしうをとろへにてなむはへめ
る女こそよくいはゝもち侍ましきものなりけれとあるにつけても心のみなむつ
る女こそよくいはゝもち侍ましきものなりけれとあるにつけても心のみなむつ
くされ侍けるなとなを心とけす思をきたるけしきしてのたまへは心うくてせち
くされ侍けるなとなを心とけす思をきたるけしきしてのたまへは心うくてせち
にもきこえ給はすそのついてにもいとふてうなるむすめまうけ侍てもてわつら
にもきこえ給はすそのついてにもいとふてうなるむすめまうけ侍てもてわつら
ひ侍ぬとうれへきこえ給てわらひ給宮いてあやしむすめといふなはしてさかな
ひ侍ぬとうれへきこえ給てわらひ給宮いてあやしむすめといふなはしてさかな
かるやうやあるとのたまへはそれなんみくるしきことになむはへるいかて御ら
かるやうやあるとのたまへはそれなんみくるしきことになむはへるいかて御ら
むせさせむときこえ給とや
むせさせむときこえ給とや