校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・かゝり火
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
Page 855
このころ世の人のことくさに内のおほいとのゝいまひめ君とことにふれつゝい
このころ世の人のことくさに内のおほいとのゝいまひめ君とことにふれつゝい
ひちらすを源氏のおとゝきこしめしてともあれかくもあれ人みるましくてこも
ひちらすを源氏のおとゝきこしめしてともあれかくもあれ人みるましくてこも
りゐたらむ女こをなをさりのかことにてもさはかりにものめかしいてゝかく人
りゐたらむ女こをなをさりのかことにてもさはかりにものめかしいてゝかく人
にみせいひつたへらるゝこそ心えぬことなれいときは〱しうものし給ふあま
にみせいひつたへらるゝこそ心えぬことなれいときは〱しうものし給ふあま
りにふかき心をもたつねすもていてゝ心にもかなはねはかくはしたなきなるへ
りにふかき心をもたつねすもていてゝ心にもかなはねはかくはしたなきなるへ
しよろつの事もてなしからにこそなたらかなるものなめれといとおしかり給ふ
しよろつの事もてなしからにこそなたらかなるものなめれといとおしかり給ふ
かゝるにつけてもけによくこそとおやときこえなからもとしころの御心をしり
かゝるにつけてもけによくこそとおやときこえなからもとしころの御心をしり
きこえすなれたてまつらましにはちかましきことやあらましとたいのひめ君お
きこえすなれたてまつらましにはちかましきことやあらましとたいのひめ君お
ほししるを右近もいとよくきこえしらせけりにくき御心こそゝひたれとさりと
ほししるを右近もいとよくきこえしらせけりにくき御心こそゝひたれとさりと
て御心のまゝにをしたちてなともてなし給はすいとゝふかき御心のみまさり給
て御心のまゝにをしたちてなともてなし給はすいとゝふかき御心のみまさり給
へはやう〱なつかしうゝちとけきこえ給ふ秋になりぬはつかせすゝしくふき
へはやう〱なつかしうゝちとけきこえ給ふ秋になりぬはつかせすゝしくふき
いてゝせこか衣もうらさひしき心ちしたまふにしのひかねつゝいとしは〱わ
いてゝせこか衣もうらさひしき心ちしたまふにしのひかねつゝいとしは〱わ
たり給ておはしましくらし御ことなともならはしきこえ給ふ五六日の夕つく夜
たり給ておはしましくらし御ことなともならはしきこえ給ふ五六日の夕つく夜
はとくいりてすこしくもかくるゝけしきおきのをともやう〱あはれなる程に
はとくいりてすこしくもかくるゝけしきおきのをともやう〱あはれなる程に
Page 856
なりにけり御ことをまくらにてもろともにそひふし給へりかゝるたくひあらむ
なりにけり御ことをまくらにてもろともにそひふし給へりかゝるたくひあらむ
やとうちなけきかちにて夜ふかし給ふも人のとかめたてまつらむ事をおほせは
やとうちなけきかちにて夜ふかし給ふも人のとかめたてまつらむ事をおほせは
わたり給ひなむとて御まへのかゝり火のすこしきえかたなるを御ともなる右近
わたり給ひなむとて御まへのかゝり火のすこしきえかたなるを御ともなる右近
のたいふをめしてともしつけさせ給ふいとすゝしけなるやり水のほとりにけし
のたいふをめしてともしつけさせ給ふいとすゝしけなるやり水のほとりにけし
きことにひろこりふしたるまゆみの木のしたにうちまつおとろ〱しからぬほ
きことにひろこりふしたるまゆみの木のしたにうちまつおとろ〱しからぬほ
とにをきてさしゝりそきてともしたれは御前のかたはいとすゝしくおかしきほ
とにをきてさしゝりそきてともしたれは御前のかたはいとすゝしくおかしきほ
となるひかりに女の御さまみるにかひあり御くしのてあたりなといとひやゝか
となるひかりに女の御さまみるにかひあり御くしのてあたりなといとひやゝか
にあてはかなる心ちしてうちとけぬさまにものをつゝましとおほしたるけしき
にあてはかなる心ちしてうちとけぬさまにものをつゝましとおほしたるけしき
いとらうたけなりかへりうくおほしやすらふたえす人さふらひてともしつけよ
いとらうたけなりかへりうくおほしやすらふたえす人さふらひてともしつけよ
なつの月なきほとはにはのひかりなきいとものむつかしくおほつかなしやとの
なつの月なきほとはにはのひかりなきいとものむつかしくおほつかなしやとの
たまふ
たまふ
かゝり火にたちそふこひのけふりこそよにはたえせぬほのをなりけれいつ
かゝり火にたちそふこひのけふりこそよにはたえせぬほのをなりけれいつ
まてとかやふすふるならてもくるしきしたもえなりけりときこえ給ふ女君あや
まてとかやふすふるならてもくるしきしたもえなりけりときこえ給ふ女君あや
しのありさまやとおほすに
しのありさまやとおほすに
Page 857
行ゑなき空にけちてよかゝり火のたよりにたくふけふりとならはひとのあ
行ゑなき空にけちてよかゝり火のたよりにたくふけふりとならはひとのあ
やしとおもひ侍らむことゝわひたまへはくはやとていて給ふにひんかしのたい
やしとおもひ侍らむことゝわひたまへはくはやとていて給ふにひんかしのたい
のかたにおもしろきふえのねさうにふきあはせたり中将のれいのあたりはなれ
のかたにおもしろきふえのねさうにふきあはせたり中将のれいのあたりはなれ
ぬとちあそふにそあなる頭中将にこそあなれいとわさともふきなるねかなとて
ぬとちあそふにそあなる頭中将にこそあなれいとわさともふきなるねかなとて
たちとまり給ふ御せうそこゝなたになむいとかけすゝしきかゝり火にとゝめら
たちとまり給ふ御せうそこゝなたになむいとかけすゝしきかゝり火にとゝめら
れてものするとのたまへれはうちつれて三人まいり給へりかせのをと秋になり
れてものするとのたまへれはうちつれて三人まいり給へりかせのをと秋になり
けりときこえつるふえのねにしのはれてなむとて御ことひきいてゝなつかしき
けりときこえつるふえのねにしのはれてなむとて御ことひきいてゝなつかしき
ほとにひき給ふ源中将はゝむしきてうにいとおもしろくふきたり頭中将心つか
ほとにひき給ふ源中将はゝむしきてうにいとおもしろくふきたり頭中将心つか
ひしていたしたてかたうすをそしとあれは弁少将ひやうしうちいてゝしのひや
ひしていたしたてかたうすをそしとあれは弁少将ひやうしうちいてゝしのひや
かにうたふこゑすゝ虫にまかひたりふたかへりはかりうたはせ給て御ことは中
かにうたふこゑすゝ虫にまかひたりふたかへりはかりうたはせ給て御ことは中
将にゆつらせ給つけにかのちゝおとゝの御つまをとにおさ〱おとらすはなや
将にゆつらせ給つけにかのちゝおとゝの御つまをとにおさ〱おとらすはなや
かにおもしろしみすのうちにものゝねきゝわく人ものし給らんかしこよひはさ
かにおもしろしみすのうちにものゝねきゝわく人ものし給らんかしこよひはさ
かつきなと心してをさかりすきたる人はゑひなきのついてにしのはぬこともこ
かつきなと心してをさかりすきたる人はゑひなきのついてにしのはぬこともこ
そとのたまへはひめ君もけにあはれときゝたまふたえせぬなかの御契をろかな
そとのたまへはひめ君もけにあはれときゝたまふたえせぬなかの御契をろかな
Page 858
るましきものなれはにやこの君たちを人しれすめにもみゝにもとゝめ給へとか
るましきものなれはにやこの君たちを人しれすめにもみゝにもとゝめ給へとか
けてさたに思ひよらす此中将は心のかきりつくして思ふすちにそかゝるついて
けてさたに思ひよらす此中将は心のかきりつくして思ふすちにそかゝるついて
にもえしのひはつましき心ちすれとさまよくもてなしておさ〱こゝろとけて
にもえしのひはつましき心ちすれとさまよくもてなしておさ〱こゝろとけて
もかきわたさす
もかきわたさす