校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・こてふ
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
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やよひのはつかあまりのころほひ春の御前のありさまつねよりことにつくして
やよひのはつかあまりのころほひ春の御前のありさまつねよりことにつくして
にほふ花の色とりのこゑほかのさとにはまたふりぬにやとめつらしうみえきこ
にほふ花の色とりのこゑほかのさとにはまたふりぬにやとめつらしうみえきこ
ゆ山のこたちなかしまのわたりいろまさるこけのけしきなとわかき人〱のは
ゆ山のこたちなかしまのわたりいろまさるこけのけしきなとわかき人〱のは
つかに心もとなくおもふへかめるにからめいたるふねつくらせ給けるいそきさ
つかに心もとなくおもふへかめるにからめいたるふねつくらせ給けるいそきさ
うそかせ給ひておろしはしめさせ給ひはうたつかさの人めして舟のかくせらる
うそかせ給ひておろしはしめさせ給ひはうたつかさの人めして舟のかくせらる
みこたちかむたちめなとあまたまいり給へり中宮この比さとにおはしますかの
みこたちかむたちめなとあまたまいり給へり中宮この比さとにおはしますかの
春まつそのはとはけましきこえ給へりし御かへりもこの比やとおほしおとゝの
春まつそのはとはけましきこえ給へりし御かへりもこの比やとおほしおとゝの
君もいかてこの花のおり御らむせさせむとおほしのたまへとついてなくてか
君もいかてこの花のおり御らむせさせむとおほしのたまへとついてなくてか
るらかにはひわたりはなをもゝてあそひ給ふへきならねはわかき女はうたちの
るらかにはひわたりはなをもゝてあそひ給ふへきならねはわかき女はうたちの
ものめてしぬへきをふねにのせ給うてみなみのいけのこなたにとほしかよはし
ものめてしぬへきをふねにのせ給うてみなみのいけのこなたにとほしかよはし
なさせ給へるをちゐさき山をへたてのせきにみせたれとそのやまのさきよりこ
なさせ給へるをちゐさき山をへたてのせきにみせたれとそのやまのさきよりこ
きまひてひむかしのつり殿にこなたのわかき人〱あつめさせたまふ竜頭鷁首
きまひてひむかしのつり殿にこなたのわかき人〱あつめさせたまふ竜頭鷁首
をからのよそひにこと〱しうしつらひてかちとりのさをさすわらはへみなみ
をからのよそひにこと〱しうしつらひてかちとりのさをさすわらはへみなみ
つらゆひてもろこしたゝせてさるおほきなるいけのなかにさしいてたれはまこ
つらゆひてもろこしたゝせてさるおほきなるいけのなかにさしいてたれはまこ
Page 782
とのしらぬくにゝきたらむ心ちしてあはれにおもしろくみならはぬ女はうなと
とのしらぬくにゝきたらむ心ちしてあはれにおもしろくみならはぬ女はうなと
はおもふなかしまのいりえのいはかけにさしよせてみれははかなきいしのたゝ
はおもふなかしまのいりえのいはかけにさしよせてみれははかなきいしのたゝ
すまひもたゝゑにかいたらむやうなりこなたかなたかすみあひたるこすゑとも
すまひもたゝゑにかいたらむやうなりこなたかなたかすみあひたるこすゑとも
にしきをひきわたせるにおまへのかたははる〱とみやられていろをましたる
にしきをひきわたせるにおまへのかたははる〱とみやられていろをましたる
やなきえたをたれたる花もえもいはぬにほひをちらしたりほかにはさかりすき
やなきえたをたれたる花もえもいはぬにほひをちらしたりほかにはさかりすき
たるさくらもいまさかりにほおえみらうをめくれるふちの色もこまやかにひら
たるさくらもいまさかりにほおえみらうをめくれるふちの色もこまやかにひら
けゆきにけりましていけのみつにかけをうつしたるやまふききしよりこほれて
けゆきにけりましていけのみつにかけをうつしたるやまふききしよりこほれて
いみしきさかりなりみつとりとものつかひをはなれすあそひつゝほそきえたと
いみしきさかりなりみつとりとものつかひをはなれすあそひつゝほそきえたと
もをくひてとひちかふをしのなみのあやにもんをましへたるなとものゝゑやう
もをくひてとひちかふをしのなみのあやにもんをましへたるなとものゝゑやう
にもかきとらまほしきまことにをののえもくたいつへうおもひつゝひをくら
にもかきとらまほしきまことにをののえもくたいつへうおもひつゝひをくら
す
す
かせふけはなみの花さへ色みえてこやなにたてるやまふきのさき
かせふけはなみの花さへ色みえてこやなにたてるやまふきのさき
はるのいけやゐてのかはせにかよふらんきしの山ふきそこもにほへり
はるのいけやゐてのかはせにかよふらんきしの山ふきそこもにほへり
かめのうへの山もたつねしふねのうちにおいせぬなをはこゝにのこさむ
かめのうへの山もたつねしふねのうちにおいせぬなをはこゝにのこさむ
Page 783
春の日のうらゝにさしてゆくふねはさほのしつくも花そちりけるなとやう
春の日のうらゝにさしてゆくふねはさほのしつくも花そちりけるなとやう
のはかなことゝもを心〱にいひかはしつゝゆくかたもかへらむさともわすれ
のはかなことゝもを心〱にいひかはしつゝゆくかたもかへらむさともわすれ
ぬへうわかき人〱の心をうつすにことはりなる水のおもになむくれかゝるほ
ぬへうわかき人〱の心をうつすにことはりなる水のおもになむくれかゝるほ
とにわうしやうといふかくいとおもしろくきこゆるに心にもあらすつり殿にさ
とにわうしやうといふかくいとおもしろくきこゆるに心にもあらすつり殿にさ
しよせられておりぬこゝのしつらひいとことそきたるさまになまめかしきに御
しよせられておりぬこゝのしつらひいとことそきたるさまになまめかしきに御
方かたのわかき人とものわれおとらしとつくしたるさうすくかたちはなをこき
方かたのわかき人とものわれおとらしとつくしたるさうすくかたちはなをこき
ませたるにしきにおとらすみえわたる世にめなれすめつらかなるかくともつか
ませたるにしきにおとらすみえわたる世にめなれすめつらかなるかくともつか
うまつるまひ人なと心ことにえらはせ給て夜にいりぬれはいとあかぬ心ちして
うまつるまひ人なと心ことにえらはせ給て夜にいりぬれはいとあかぬ心ちして
御前のにはにかゝり火ともしてみはしのもとのこけのうへにかく人めしてかん
御前のにはにかゝり火ともしてみはしのもとのこけのうへにかく人めしてかん
たちめみこたちもみなをの〱ひきものふきものとりとりにしたまふものゝし
たちめみこたちもみなをの〱ひきものふきものとりとりにしたまふものゝし
ともことにすくれたるかきりそうてうふきてうへにまちとる御ことゝものしら
ともことにすくれたるかきりそうてうふきてうへにまちとる御ことゝものしら
へいとはなやかにかきたてゝあなたうとあそひ給ふほといけるかひありとなに
へいとはなやかにかきたてゝあなたうとあそひ給ふほといけるかひありとなに
のあやめもしらぬしつのをもみかとのわたりひまなきむまくるまのたちとにま
のあやめもしらぬしつのをもみかとのわたりひまなきむまくるまのたちとにま
しりてゑみさかへきゝけりそらのいろものゝねもはるのしらへひゝきはいとこ
しりてゑみさかへきゝけりそらのいろものゝねもはるのしらへひゝきはいとこ
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とにまさりけるけちめを人〱おほしわくらむかし夜もすからあそひあかし給
とにまさりけるけちめを人〱おほしわくらむかし夜もすからあそひあかし給
かへりこゑに喜春楽たちそひて兵部卿みやあをやきおりかへしおもしろくうた
かへりこゑに喜春楽たちそひて兵部卿みやあをやきおりかへしおもしろくうた
ひ給あるしのおとゝもことくはへ給ふ夜もあけぬあさほらけのとりのさえつり
ひ給あるしのおとゝもことくはへ給ふ夜もあけぬあさほらけのとりのさえつり
を中宮はものへたてゝねたうきこしめしけりいつも春の光をこめ給へるおほ殿
を中宮はものへたてゝねたうきこしめしけりいつも春の光をこめ給へるおほ殿
なれと心をつくるよすかのまたなきをあかぬ事におほす人〱もありけるにに
なれと心をつくるよすかのまたなきをあかぬ事におほす人〱もありけるにに
しのたいのひめ君こともなき御ありさまおとゝのきみもわさとおほしあかめき
しのたいのひめ君こともなき御ありさまおとゝのきみもわさとおほしあかめき
こえたまふ御けしきなとみなよにきこえいてゝおほししもしるく心なひかし給
こえたまふ御けしきなとみなよにきこえいてゝおほししもしるく心なひかし給
人おほかるへしわか身さはかりとおもひあかり給ふきはの人こそたよりにつけ
人おほかるへしわか身さはかりとおもひあかり給ふきはの人こそたよりにつけ
つゝけしきはみこといてきこえ給ふもありけれえしもうちいてぬ中の思ひにも
つゝけしきはみこといてきこえ給ふもありけれえしもうちいてぬ中の思ひにも
えぬへきわかきむたちなともあるへしそのうちにことの心をしらてうちのおほ
えぬへきわかきむたちなともあるへしそのうちにことの心をしらてうちのおほ
いとのの中将なとはすきぬへかめり兵部卿の宮はたとしころおはしけるきたの
いとのの中将なとはすきぬへかめり兵部卿の宮はたとしころおはしけるきたの
方もうせ給てこのみとせはかりひとりすみにてわひたまへはうけはりていまは
方もうせ給てこのみとせはかりひとりすみにてわひたまへはうけはりていまは
けしきはみたまふけさもいといたうそらみたれしてふちのはなをかさしてなよ
けしきはみたまふけさもいといたうそらみたれしてふちのはなをかさしてなよ
ひさうとき給へる御さまいとおかしおとゝもおほしゝさまかなふとしたにはお
ひさうとき給へる御さまいとおかしおとゝもおほしゝさまかなふとしたにはお
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ほせとせめてしらすかほゝつくり給御かはらけのついてにいみしうもてなやみ
ほせとせめてしらすかほゝつくり給御かはらけのついてにいみしうもてなやみ
たまうておもふ心侍らすはまかりにけ侍なましいとたえかたしやとすまひ給ふ
たまうておもふ心侍らすはまかりにけ侍なましいとたえかたしやとすまひ給ふ
むらさきのゆへにこゝろをしめたれはふちに身なけんなやはおしけきとて
むらさきのゆへにこゝろをしめたれはふちに身なけんなやはおしけきとて
おとゝの君におなしかさしをまいり給いといたうほをゑみ給ひて
おとゝの君におなしかさしをまいり給いといたうほをゑみ給ひて
ふちにみをなけつへしやとこの春は花のあたりをたちさらてみよとせちに
ふちにみをなけつへしやとこの春は花のあたりをたちさらてみよとせちに
とゝめたまへはえたちあかれ給はてけさの御あそひましていとおもしろしけふ
とゝめたまへはえたちあかれ給はてけさの御あそひましていとおもしろしけふ
は中宮のみと経のはしめなりけりやかてまかて給はてやすみ所とりつゝひの御
は中宮のみと経のはしめなりけりやかてまかて給はてやすみ所とりつゝひの御
よそひにかへ給ふ人〱もおほかりさはりあるはまかてなともしたまふむまの
よそひにかへ給ふ人〱もおほかりさはりあるはまかてなともしたまふむまの
時はかりにみなあなたにまいり給ふおとゝの君をはしめたてまつりてみなつき
時はかりにみなあなたにまいり給ふおとゝの君をはしめたてまつりてみなつき
わたり給ふ殿上人なとものこるなくまいるおほくはおとゝの御いきほひにもて
わたり給ふ殿上人なとものこるなくまいるおほくはおとゝの御いきほひにもて
なされ給ひてやむことなくいつくしき御ありさまなりはるのうへの御心さしに
なされ給ひてやむことなくいつくしき御ありさまなりはるのうへの御心さしに
ほとけにはなたてまつらせ給ふとりてふにさうそきわけたるわらはへ八人かた
ほとけにはなたてまつらせ給ふとりてふにさうそきわけたるわらはへ八人かた
ちなとことにとゝのへさせ給ひてとりにはしろかねのはなかめにさくらをさし
ちなとことにとゝのへさせ給ひてとりにはしろかねのはなかめにさくらをさし
てふはこかねのかめにやまふきをおなしきはなのふさいかめしう世になきにほ
てふはこかねのかめにやまふきをおなしきはなのふさいかめしう世になきにほ
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ひをつくさせ給へりみなみの御まへのやまきはよりこきいてゝをまへにいつる
ひをつくさせ給へりみなみの御まへのやまきはよりこきいてゝをまへにいつる
ほと風ふきてかめのさくらすこしうちゝりまかふいとうらゝかにはれてかすみ
ほと風ふきてかめのさくらすこしうちゝりまかふいとうらゝかにはれてかすみ
のまよりたちいてたるはいとあはれになまめきてみゆわさとひらはりなともう
のまよりたちいてたるはいとあはれになまめきてみゆわさとひらはりなともう
つされすおまへにわたれるらうをかくやのさまにしてかりにあくらともをめし
つされすおまへにわたれるらうをかくやのさまにしてかりにあくらともをめし
たりわらはへともみはしのもとによりてはなともたてまつる行香の人〱とり
たりわらはへともみはしのもとによりてはなともたてまつる行香の人〱とり
つきてあかにくはへさせ給御せうそこ殿の中将の君してきこえ給へり
つきてあかにくはへさせ給御せうそこ殿の中将の君してきこえ給へり
はなそのゝこてふをさへやしたくさに秋まつむしはうとくみるらむ宮かの
はなそのゝこてふをさへやしたくさに秋まつむしはうとくみるらむ宮かの
紅葉の御かへりなりけりとほおゑみて御らむすきのふの女はうたちもけに春の
紅葉の御かへりなりけりとほおゑみて御らむすきのふの女はうたちもけに春の
いろはえおとさせ給ましかりけりとはなにおれつゝきこえあへりうくひすのう
いろはえおとさせ給ましかりけりとはなにおれつゝきこえあへりうくひすのう
らゝかなるねにとりのかくはなやかにきゝわたされていけのみつとりもそこは
らゝかなるねにとりのかくはなやかにきゝわたされていけのみつとりもそこは
かとなくさへつりわたるにきうになりはつるほとあかすおもしろしてうはまし
かとなくさへつりわたるにきうになりはつるほとあかすおもしろしてうはまし
てはかなきさまにとひたちてやまふきのませのもとにさきこほれたる花のかけ
てはかなきさまにとひたちてやまふきのませのもとにさきこほれたる花のかけ
にまひいつる宮のすけをはしめてさるへきうへ人ともろくとりつゝきてわらは
にまひいつる宮のすけをはしめてさるへきうへ人ともろくとりつゝきてわらは
へにたふとりにはさくらのほそなかてふにはやまふきかさね給はるかねてしも
へにたふとりにはさくらのほそなかてふにはやまふきかさね給はるかねてしも
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とりあへたるやうなりものゝしともはしろきひとかさねこしさしなとつき〱
とりあへたるやうなりものゝしともはしろきひとかさねこしさしなとつき〱
にたまふ中将の君にはふちのほそなかそへて女のさうそくかつけ給ふ御かへり
にたまふ中将の君にはふちのほそなかそへて女のさうそくかつけ給ふ御かへり
きのふはねになきぬへくこそは
きのふはねになきぬへくこそは
こてふにもさそはれなましこゝろありてやへ山ふきをへたてさりせはとそ
こてふにもさそはれなましこゝろありてやへ山ふきをへたてさりせはとそ
ありけるすくれたる御らうともにかやうの事はたへぬにやありけむおもふやう
ありけるすくれたる御らうともにかやうの事はたへぬにやありけむおもふやう
にこそみえぬ御くちつきともなめれまことやかのみものゝ女はうたち宮のには
にこそみえぬ御くちつきともなめれまことやかのみものゝ女はうたち宮のには
みなけしきあるをくりものともせさせ給ふけりさやうのことくはしけれはむつ
みなけしきあるをくりものともせさせ給ふけりさやうのことくはしけれはむつ
かしあけくれにつけてもかやうのはかなき御あそひしけく心をやりてすくし給
かしあけくれにつけてもかやうのはかなき御あそひしけく心をやりてすくし給
へはさふらふ人もをのつからものおもひなきこゝちしてなむこなたかなたにも
へはさふらふ人もをのつからものおもひなきこゝちしてなむこなたかなたにも
きこえかはし給ふにしのたいの御方はかのたうかのおりの御たいめんのゝちは
きこえかはし給ふにしのたいの御方はかのたうかのおりの御たいめんのゝちは
こなたにもきこえかはし給ふかき御心もちゐやあさくもいかにもあらむけしき
こなたにもきこえかはし給ふかき御心もちゐやあさくもいかにもあらむけしき
いとらうありなつかしき心はへとみえて人の心へたつへくもゝのしたまはぬひ
いとらうありなつかしき心はへとみえて人の心へたつへくもゝのしたまはぬひ
とさまなれはいつかたにもみな心よせきこえ給へりきこえ給人いとあまたもの
とさまなれはいつかたにもみな心よせきこえ給へりきこえ給人いとあまたもの
し給されとおとゝおほろけにおほしさたむへくもあらすわか御心にもすくよか
し給されとおとゝおほろけにおほしさたむへくもあらすわか御心にもすくよか
Page 788
におやかりはつましき御心やそふらむちゝおとゝにもしらせやしてましなとお
におやかりはつましき御心やそふらむちゝおとゝにもしらせやしてましなとお
ほしよるおり〱もありとのゝ中将はすこしけちかくみすのもとなとにもより
ほしよるおり〱もありとのゝ中将はすこしけちかくみすのもとなとにもより
て御いらへ身つからなとするも女はつゝましうおほせとさるへきほとゝ人〱
て御いらへ身つからなとするも女はつゝましうおほせとさるへきほとゝ人〱
もしりきこえたれは中将はすく〱しくておもひもよらす内のおほいとのゝ君
もしりきこえたれは中将はすく〱しくておもひもよらす内のおほいとのゝ君
たちはこの君にひかれてよろつにけしきはみわひありくをその方のあはれには
たちはこの君にひかれてよろつにけしきはみわひありくをその方のあはれには
あらてしたに心くるしうまことのおやにさもしられたてまつりにしかなと人し
あらてしたに心くるしうまことのおやにさもしられたてまつりにしかなと人し
れぬ心にかけたまへれとさやうにもゝらしきこえ給はすひとへにうちとけたの
れぬ心にかけたまへれとさやうにもゝらしきこえ給はすひとへにうちとけたの
みきこえ給心むけなとらうたけにわかやかなりにるとはなけれとなをはゝ君の
みきこえ給心むけなとらうたけにわかやかなりにるとはなけれとなをはゝ君の
けはひにいとよくおほえてこれはかとめいたるところそゝひたるころもかへの
けはひにいとよくおほえてこれはかとめいたるところそゝひたるころもかへの
いまめかしうあらたまれるころほひそらのけしきなとさへあやしうそこはかと
いまめかしうあらたまれるころほひそらのけしきなとさへあやしうそこはかと
なくおかしきをのとやかにおはしませはよろつの御あそひにてすくし給ふにた
なくおかしきをのとやかにおはしませはよろつの御あそひにてすくし給ふにた
いの御方に人〱の御ふみしけくなりゆくをおもひしことゝおかしうおほいて
いの御方に人〱の御ふみしけくなりゆくをおもひしことゝおかしうおほいて
ともすれはわたり給ひつゝこらむしさるへきには御かへりそゝのかしきこえ給
ともすれはわたり給ひつゝこらむしさるへきには御かへりそゝのかしきこえ給
ひなとするをうちとけすくるしいことにおほいたり兵部卿の宮のほとなくいら
ひなとするをうちとけすくるしいことにおほいたり兵部卿の宮のほとなくいら
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れかましきわひことゝもをかきあつめたまへるおほむふみをこらむしつけてこ
れかましきわひことゝもをかきあつめたまへるおほむふみをこらむしつけてこ
まやかにわらひ給ふはやうよりへたつることなうあまたのみこたちの御なかに
まやかにわらひ給ふはやうよりへたつることなうあまたのみこたちの御なかに
このきみをなんかたみにとりわきておもひしにたゝかやうのすちのことなむゐ
このきみをなんかたみにとりわきておもひしにたゝかやうのすちのことなむゐ
みしうへたておもふ給ひてやみにしをよのすゑにかくすき給へる心はえをみる
みしうへたておもふ給ひてやみにしをよのすゑにかくすき給へる心はえをみる
かおかしうもあはれにもおほゆるかなゝを御かへりなときこえ給へすこしもゆ
かおかしうもあはれにもおほゆるかなゝを御かへりなときこえ給へすこしもゆ
へあらむ女のかのみこよりほかにまたことのはをかはすへき人こそ世におほえ
へあらむ女のかのみこよりほかにまたことのはをかはすへき人こそ世におほえ
ねいとけしきある人の御さまそやとわかき人はめて給ひぬへくきこえしらせ給
ねいとけしきある人の御さまそやとわかき人はめて給ひぬへくきこえしらせ給
へとつつましくのみおほいたり右大将のいとまめやかにこと〱しきさました
へとつつましくのみおほいたり右大将のいとまめやかにこと〱しきさました
る人のこひのやまにはくしのたうれまねひつへきけしきにうれへたるもさるか
る人のこひのやまにはくしのたうれまねひつへきけしきにうれへたるもさるか
たにおかしとみなみくらへ給なかにからのはなたのかみのいとなつかしうしみ
たにおかしとみなみくらへ給なかにからのはなたのかみのいとなつかしうしみ
ふかうにほへるをいとほそくちひさくむすひたるありこれはいかなれはかくむ
ふかうにほへるをいとほそくちひさくむすひたるありこれはいかなれはかくむ
すほゝれたるにかとてひきあけたまへりていとおかしうて
すほゝれたるにかとてひきあけたまへりていとおかしうて
おもふとも君はしらしなわきかへりいはもるみつにいろしみえねはかきさ
おもふとも君はしらしなわきかへりいはもるみつにいろしみえねはかきさ
まゐまめかしうそほれたりこれはいかなるそとゝひきこえ給へとはか〱しう
まゐまめかしうそほれたりこれはいかなるそとゝひきこえ給へとはか〱しう
Page 790
もきこえ給はす右近をめしいてゝかやうにをとつれきこえん人をはひとえりし
もきこえ給はす右近をめしいてゝかやうにをとつれきこえん人をはひとえりし
ていらへなとはせさせよすき〱しうあされかましきいまやうの人のひんない
ていらへなとはせさせよすき〱しうあされかましきいまやうの人のひんない
ことしいてなとするをのこのとかにしもあらぬ事なりわれにて思ひしにもあな
ことしいてなとするをのこのとかにしもあらぬ事なりわれにて思ひしにもあな
ゝさけなうらめしうもとそのおりにこそむしむなるにやもしはめさましかるへ
ゝさけなうらめしうもとそのおりにこそむしむなるにやもしはめさましかるへ
ききはゝけやけうなともおほえけれわさとふかゝらてはなてふにつけたるたよ
ききはゝけやけうなともおほえけれわさとふかゝらてはなてふにつけたるたよ
りことは心ねたうもてないたるなか〱心たつやうにもありまたさてわすれぬ
りことは心ねたうもてないたるなか〱心たつやうにもありまたさてわすれぬ
るはなにのとかゝはあらむものゝたよりはかりのなをさりことにくちとう心え
るはなにのとかゝはあらむものゝたよりはかりのなをさりことにくちとう心え
たるもさらてありぬへかりけるのちのなむとありぬへきわさなりすへて女のも
たるもさらてありぬへかりけるのちのなむとありぬへきわさなりすへて女のも
のつゝみせす心のまゝにものゝあはれもしりかほつくりおかしき事をもみしら
のつゝみせす心のまゝにものゝあはれもしりかほつくりおかしき事をもみしら
んなんそのつもりあちきなかるへきを宮大将はおほな〱なをさりことをうち
んなんそのつもりあちきなかるへきを宮大将はおほな〱なをさりことをうち
いて給へきにもあらすまたあまりものゝほとしらぬやうならんも御ありさまに
いて給へきにもあらすまたあまりものゝほとしらぬやうならんも御ありさまに
たかへりそのきはよりしもは心さしのおもむきにしたかひてあはれをもわき給
たかへりそのきはよりしもは心さしのおもむきにしたかひてあはれをもわき給
へらうをもかそへ給へなときこえ給へはきみはうちそむきておはするそはめい
へらうをもかそへ給へなときこえ給へはきみはうちそむきておはするそはめい
とおかしけなりなてしこのほそなかにこのころのはなのいろなる御こうちきあ
とおかしけなりなてしこのほそなかにこのころのはなのいろなる御こうちきあ
Page 791
はひけちかういまめきてもてなしなともさはいへとゐなかひ給へりしなこりこ
はひけちかういまめきてもてなしなともさはいへとゐなかひ給へりしなこりこ
そたゝありにおほとかなるかたにのみはみえ給ひけれ人のありさまをもみしり
そたゝありにおほとかなるかたにのみはみえ給ひけれ人のありさまをもみしり
給ふまゝにいとさまようなよひかにけさうなとも心してもてつけたまへれはい
給ふまゝにいとさまようなよひかにけさうなとも心してもてつけたまへれはい
とゝあかぬ所なくはなやかにうつくしけなりこと人とみなさむはいとくちおし
とゝあかぬ所なくはなやかにうつくしけなりこと人とみなさむはいとくちおし
かへうおほさるうこむもうちゑみつゝみたてまつりておやときこえんにはにけ
かへうおほさるうこむもうちゑみつゝみたてまつりておやときこえんにはにけ
なうわかくおはしますめりさしならひたまへらんはしもあはひめてたしかしと
なうわかくおはしますめりさしならひたまへらんはしもあはひめてたしかしと
おもひゐたりさらに人の御せうそこなとはきこえつたふる事侍らすさきさきも
おもひゐたりさらに人の御せうそこなとはきこえつたふる事侍らすさきさきも
しろしめし御らむしたるみつよつはひきかへしはしたなめきこえむもいかゝと
しろしめし御らむしたるみつよつはひきかへしはしたなめきこえむもいかゝと
て御ふみはかりとりいれなとし侍めれと御かへりはさらにきこえさせ給ふおり
て御ふみはかりとりいれなとし侍めれと御かへりはさらにきこえさせ給ふおり
はかりなむそれをたにくるしいことにおほいたるときこゆさてこのわかやかに
はかりなむそれをたにくるしいことにおほいたるときこゆさてこのわかやかに
むすほゝれたるはたかそいといたうかいたるけしきかなとほゝゑみて御らんす
むすほゝれたるはたかそいといたうかいたるけしきかなとほゝゑみて御らんす
れはかれはしふねうとゝめてまかりにけるにこそ内のおほいとのゝ中将のこの
れはかれはしふねうとゝめてまかりにけるにこそ内のおほいとのゝ中将のこの
さふらふみるこをそもとよりみしり給へりけるつたへにて侍けるまたみいるゝ
さふらふみるこをそもとよりみしり給へりけるつたへにて侍けるまたみいるゝ
人も侍らさりしにこそときこゆれはいとらうたき事かなけらうなりともかのぬ
人も侍らさりしにこそときこゆれはいとらうたき事かなけらうなりともかのぬ
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したちをはいかゝいとさはゝしたなめむ公卿といへとこの人のおほえにかなら
したちをはいかゝいとさはゝしたなめむ公卿といへとこの人のおほえにかなら
すしもならふましきこそおほかれさるなかにもいとしつまりたる人なりをのつ
すしもならふましきこそおほかれさるなかにもいとしつまりたる人なりをのつ
から思ひあはする世もこそあれけちえむにはあらてこそいひまきらはさめみと
から思ひあはする世もこそあれけちえむにはあらてこそいひまきらはさめみと
ころあるふみかきかなゝととみにもうちをきたまはすかうなにやかやときこゆ
ころあるふみかきかなゝととみにもうちをきたまはすかうなにやかやときこゆ
るをもおほす所やあらむとやゝましきをかのおとゝにしられたてまつり給はむ
るをもおほす所やあらむとやゝましきをかのおとゝにしられたてまつり給はむ
事もまたわか〱しうなにとなきほとにこゝらとしへ給へる御なかにさしいて
事もまたわか〱しうなにとなきほとにこゝらとしへ給へる御なかにさしいて
給はむ事はいかゝとおもひめくらし侍るなを世のひとのあめるかたにさたまり
給はむ事はいかゝとおもひめくらし侍るなを世のひとのあめるかたにさたまり
てこそはひとひとしうさるへきついてもゝのしたまはめとおもふを宮はひとり
てこそはひとひとしうさるへきついてもゝのしたまはめとおもふを宮はひとり
ものし給やうなれとひとからいといたうあためいてかよひたまふところあまた
ものし給やうなれとひとからいといたうあためいてかよひたまふところあまた
きこえめしうとゝかにくけなるなのりする人ともなむかすあまたきこゆるさや
きこえめしうとゝかにくけなるなのりする人ともなむかすあまたきこゆるさや
うならむ事はにくけなうてみなほいたまはむ人はいとようなたらかにもてけち
うならむ事はにくけなうてみなほいたまはむ人はいとようなたらかにもてけち
てむすこし心にくせありては人にあかれぬへきことなむをのつからいてきぬへ
てむすこし心にくせありては人にあかれぬへきことなむをのつからいてきぬへ
きをその御心つかひなむあへき大将はとしへたる人のいたうねひすきたるをい
きをその御心つかひなむあへき大将はとしへたる人のいたうねひすきたるをい
とひかてにともとむなれとそれも人〱わつらはしかるなりさもあへい事なれ
とひかてにともとむなれとそれも人〱わつらはしかるなりさもあへい事なれ
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はさまさまになむ人しれす思ひさためかね侍るかうさまのことはおやなとにも
はさまさまになむ人しれす思ひさためかね侍るかうさまのことはおやなとにも
さはやかにわかおもふさまとてかたりいてかたきことなれとさはかりの御よは
さはやかにわかおもふさまとてかたりいてかたきことなれとさはかりの御よは
ひにもあらすいまはなとかなにことをも御心にわいたまはさらむまろをむかし
ひにもあらすいまはなとかなにことをも御心にわいたまはさらむまろをむかし
さまになすらへてはゝ君と思ひないたまへ御心にあかさらむことは心くるしく
さまになすらへてはゝ君と思ひないたまへ御心にあかさらむことは心くるしく
なといとまめやかにてきこえ給へはくるしうて御いらへきこえむともおほえ給
なといとまめやかにてきこえ給へはくるしうて御いらへきこえむともおほえ給
はすいとわか〱しきもうたておほえてなにこともおもひしり侍らさりけるほ
はすいとわか〱しきもうたておほえてなにこともおもひしり侍らさりけるほ
とよりおやなとはみぬものにならひ侍てともかくも思ふたまへられすなむとき
とよりおやなとはみぬものにならひ侍てともかくも思ふたまへられすなむとき
こえ給さまのいとおいらかなれはけにとおほいてさらは世のたとひのゝちのお
こえ給さまのいとおいらかなれはけにとおほいてさらは世のたとひのゝちのお
やをそれとおほいてをろかならぬ心さしのほともみあらはしはて給てむやなと
やをそれとおほいてをろかならぬ心さしのほともみあらはしはて給てむやなと
うちかたらひ給おほすさまのことはまはゆけれはえうちいて給はすけしきある
うちかたらひ給おほすさまのことはまはゆけれはえうちいて給はすけしきある
ことはゝとき〱ませ給へとみしらぬさまなれはすゝろにうちなけかれてわた
ことはゝとき〱ませ給へとみしらぬさまなれはすゝろにうちなけかれてわた
り給おまへちかきくれたけのいとわかやかにおいたちてうちなひくさまのなつ
り給おまへちかきくれたけのいとわかやかにおいたちてうちなひくさまのなつ
かしきにたちとまり給うて
かしきにたちとまり給うて
ませのうちにねふかくうへし竹のこのをのかよゝにやおひわかるへきおも
ませのうちにねふかくうへし竹のこのをのかよゝにやおひわかるへきおも
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へはうらめしかへい事そかしとみすをひきあけてきこえ給へはゐさりいてゝ
へはうらめしかへい事そかしとみすをひきあけてきこえ給へはゐさりいてゝ
いまさらにいかならむよかわかたけのおいはしめけむねをはたつねんなか
いまさらにいかならむよかわかたけのおいはしめけむねをはたつねんなか
〱にこそ侍らめときこえ給ふをいとあはれとおほしけりさるは心のうちには
〱にこそ侍らめときこえ給ふをいとあはれとおほしけりさるは心のうちには
さもおもはすかしいかならむおりきこえいてむとすらむと心もとなくあはれな
さもおもはすかしいかならむおりきこえいてむとすらむと心もとなくあはれな
れとこのおとゝの御心はへのいとありかたきをおやときこゆとももとよりみな
れとこのおとゝの御心はへのいとありかたきをおやときこゆとももとよりみな
れたまはぬはえかうしもこまやかならすやとむかしものかたりをみ給にもやう
れたまはぬはえかうしもこまやかならすやとむかしものかたりをみ給にもやう
〱人のありさま世中のあるやうをみしり給へはいとつゝましう心としられた
〱人のありさま世中のあるやうをみしり給へはいとつゝましう心としられた
てまつらむことはかたかるへうおほすとのはいとゝらうたしとおもひきこえ給
てまつらむことはかたかるへうおほすとのはいとゝらうたしとおもひきこえ給
ふうへにもかたり申たまふあやしうなつかしき人のありさまにもあるかなかの
ふうへにもかたり申たまふあやしうなつかしき人のありさまにもあるかなかの
いにしへのはあまりはるけ所なくそありしこの君はものゝありさまもみしりぬ
いにしへのはあまりはるけ所なくそありしこの君はものゝありさまもみしりぬ
へくけちかきこゝろさまそひてうしろめたからすこそみゆれなとほめたまふた
へくけちかきこゝろさまそひてうしろめたからすこそみゆれなとほめたまふた
ゝにしもおほすましき御心さまをみしり給へれはおほしよりてものゝ心えつへ
ゝにしもおほすましき御心さまをみしり給へれはおほしよりてものゝ心えつへ
くはものし給ふめるをうらなくしもうちとけたのみきこえ給らんこそ心くるし
くはものし給ふめるをうらなくしもうちとけたのみきこえ給らんこそ心くるし
けれとのたまへはなとたのもしけなくやはあるへきときこえ給へはいてやわれ
けれとのたまへはなとたのもしけなくやはあるへきときこえ給へはいてやわれ
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にてもまたしのひかたうものおもはしきおりおりありし御心さまの思いてらる
にてもまたしのひかたうものおもはしきおりおりありし御心さまの思いてらる
ゝふしふしなくやはとほゝゑみてきこえ給へはあな心とゝおほいてうたてもお
ゝふしふしなくやはとほゝゑみてきこえ給へはあな心とゝおほいてうたてもお
ほしよるかないとみしらすしもあらしとてわつらはしけれはの給ひさして心の
ほしよるかないとみしらすしもあらしとてわつらはしけれはの給ひさして心の
うちに人のかうをしはかり給ふにもいかゝはあへからむとおほしみたれかつは
うちに人のかうをしはかり給ふにもいかゝはあへからむとおほしみたれかつは
ひか〱しうけしからぬわかこゝろのほともおもひしられ給ふけり心にかゝれ
ひか〱しうけしからぬわかこゝろのほともおもひしられ給ふけり心にかゝれ
るまゝにしは〱わたり給ひつゝみたてまつり給あめのうちふりたるなこりの
るまゝにしは〱わたり給ひつゝみたてまつり給あめのうちふりたるなこりの
いとものしめやかなるゆふつかた御まへのわかゝえてかしわきなとのあをやか
いとものしめやかなるゆふつかた御まへのわかゝえてかしわきなとのあをやか
にしけりあひたるかなにとなく心ちよけなるそらをみいたし給ひてわしてまた
にしけりあひたるかなにとなく心ちよけなるそらをみいたし給ひてわしてまた
きよしとうちすし給うてまつこのひめ君の御さまのにほひやかけさをおほしい
きよしとうちすし給うてまつこのひめ君の御さまのにほひやかけさをおほしい
てられてれいのしのひやかにわたり給へりてならひなとしてうちとけ給へりけ
てられてれいのしのひやかにわたり給へりてならひなとしてうちとけ給へりけ
るをおきあかり給てはちらひ給へるかほのいろあひいとおかしなこやかなるけ
るをおきあかり給てはちらひ給へるかほのいろあひいとおかしなこやかなるけ
はひのふとむかしおほしいてらるゝにもしのひかたくてみそめたてまつりしは
はひのふとむかしおほしいてらるゝにもしのひかたくてみそめたてまつりしは
いとかうしもおほえ給はすと思ひしをあやしうたゝそれかとおもひまかへらる
いとかうしもおほえ給はすと思ひしをあやしうたゝそれかとおもひまかへらる
ゝおり〱こそあれあはれなるわさなりけり中将のさらにむかしさまのにほひ
ゝおり〱こそあれあはれなるわさなりけり中将のさらにむかしさまのにほひ
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にもみえぬならひにさしもにぬものと思ふにかゝる人もゝのしたまうけるよと
にもみえぬならひにさしもにぬものと思ふにかゝる人もゝのしたまうけるよと
てなみたくみ給へりはこのふたなる御くたものゝなかにたちはなのあるをまさ
てなみたくみ給へりはこのふたなる御くたものゝなかにたちはなのあるをまさ
くりて
くりて
たちはなのかほりしそてによそふれはかはれるみともおもほえぬかなよと
たちはなのかほりしそてによそふれはかはれるみともおもほえぬかなよと
ゝもの心にかけてわすれかたきになくさむことなくてすきつるとしころをかく
ゝもの心にかけてわすれかたきになくさむことなくてすきつるとしころをかく
てみたてまつるはゆめにやとのみおもひなすをなをえこそしのふましけれおほ
てみたてまつるはゆめにやとのみおもひなすをなをえこそしのふましけれおほ
しうとむなよとて御てをとらへたまへれは女かやうにもならひ給はさりつるを
しうとむなよとて御てをとらへたまへれは女かやうにもならひ給はさりつるを
いとうたておほゆれとおほとかなるさまにてものし給ふ
いとうたておほゆれとおほとかなるさまにてものし給ふ
そてのかをよそふるからにたちはなのみさへはかなくなりもこそすれむつ
そてのかをよそふるからにたちはなのみさへはかなくなりもこそすれむつ
かしとおもひてうつふし給へるさまいみしうなつかしうてつきのつふ〱とこ
かしとおもひてうつふし給へるさまいみしうなつかしうてつきのつふ〱とこ
ゑ給へるみなりはたつきのこまやかにうつくしけなるに中〱なるものおもひ
ゑ給へるみなりはたつきのこまやかにうつくしけなるに中〱なるものおもひ
そふこゝちしたまてけふはすこしおもふこときこえしらせ給ひける女は心うく
そふこゝちしたまてけふはすこしおもふこときこえしらせ給ひける女は心うく
いかにせむとおほえてわなゝかるけしきもしるけれとなにかゝくうとましとは
いかにせむとおほえてわなゝかるけしきもしるけれとなにかゝくうとましとは
おほいたるいとよくもてかくして人にとかめらるへくもあらぬ心のほとそよさ
おほいたるいとよくもてかくして人にとかめらるへくもあらぬ心のほとそよさ
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りけなくてをもてかくし給へあさくも思きこえさせぬ心さしにまたそふへけれ
りけなくてをもてかくし給へあさくも思きこえさせぬ心さしにまたそふへけれ
は世にたくひあるましきこゝちなんするをこのをとつれきこゆる人〱にはお
は世にたくひあるましきこゝちなんするをこのをとつれきこゆる人〱にはお
ほしおとすへくやはあるいとかうふかき心ある人は世にありかたかるへきわさ
ほしおとすへくやはあるいとかうふかき心ある人は世にありかたかるへきわさ
なれはうしろめたくのみこそとのたまふいとさかしらなる御おや心なりかしあ
なれはうしろめたくのみこそとのたまふいとさかしらなる御おや心なりかしあ
めはやみてかせのたけになるほとはなやかにさしいてたる月かけおかしきよの
めはやみてかせのたけになるほとはなやかにさしいてたる月かけおかしきよの
さまもしめやかなるに人〱はこまやかなる御ものかたりにかしこまりをきて
さまもしめやかなるに人〱はこまやかなる御ものかたりにかしこまりをきて
けちかくもさふらはすつねにみたてまつり給ふ御なかなれとかくよきおりしも
けちかくもさふらはすつねにみたてまつり給ふ御なかなれとかくよきおりしも
ありかたけれはことにいてたまへるついての御ひたふる心にやなつかしい程な
ありかたけれはことにいてたまへるついての御ひたふる心にやなつかしい程な
る御そとものけはひはいとようまきらはしすへしたまひてちかやかにふし給へ
る御そとものけはひはいとようまきらはしすへしたまひてちかやかにふし給へ
はいと心うく人のおもはむ事もめつらかにいみしうおほゆまことのおやの御あ
はいと心うく人のおもはむ事もめつらかにいみしうおほゆまことのおやの御あ
たりならましかはおろかにはみはなち給ふともかくさまのうき事はあらましや
たりならましかはおろかにはみはなち給ふともかくさまのうき事はあらましや
とかなしきにつゝむとすれとこほれいてつゝいとこゝろくるしき御けしきなれ
とかなしきにつゝむとすれとこほれいてつゝいとこゝろくるしき御けしきなれ
はかうおほすこそつらけれもてはなれしらぬ人たによのことはりにてみなゆる
はかうおほすこそつらけれもてはなれしらぬ人たによのことはりにてみなゆる
すわさなめるをかくとしへぬるむつましさにかはかりみえたてまつるやなにの
すわさなめるをかくとしへぬるむつましさにかはかりみえたてまつるやなにの
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うとましかるへきそこれよりあなかちなる心はよもみせたてまつらしおほろけ
うとましかるへきそこれよりあなかちなる心はよもみせたてまつらしおほろけ
にしのふるにあまるほとをなくさむるそやとてあはれけになつかしうきこえ給
にしのふるにあまるほとをなくさむるそやとてあはれけになつかしうきこえ給
事おほかりましてかやうなるけはひはたゝむかしの心ちしていみしうあはれな
事おほかりましてかやうなるけはひはたゝむかしの心ちしていみしうあはれな
りわか御心なからもゆくりかにあはつけきこととおほししらるれはいとよくお
りわか御心なからもゆくりかにあはつけきこととおほししらるれはいとよくお
ほしかへしつゝ人もあやしとおもふへけれはいたう夜もふかさていて給ぬおも
ほしかへしつゝ人もあやしとおもふへけれはいたう夜もふかさていて給ぬおも
ひうとみたまはゝいと心うくこそあるへけれよその人はかうほれ〱しうはあ
ひうとみたまはゝいと心うくこそあるへけれよその人はかうほれ〱しうはあ
らぬものそよかきりなくそこひしらぬこゝろさしなれはひとのとかむへきさま
らぬものそよかきりなくそこひしらぬこゝろさしなれはひとのとかむへきさま
にはよもあらしたゝむかしこひしきなくさめにはかなきことをもきこえんおな
にはよもあらしたゝむかしこひしきなくさめにはかなきことをもきこえんおな
し心にいらへなとし給へといとこまかにきこへ給へとわれにもあらぬさまして
し心にいらへなとし給へといとこまかにきこへ給へとわれにもあらぬさまして
いと〱うしとおほいたれはいとさはかりにはみたてまつらぬ御心はへをいと
いと〱うしとおほいたれはいとさはかりにはみたてまつらぬ御心はへをいと
こよなくもにくみたまふへかめるかなとなけきたまいてゆめけしきなくてをと
こよなくもにくみたまふへかめるかなとなけきたまいてゆめけしきなくてをと
ていて給ひぬ女君も御としこそすくし給ひにたるほとなれ世中をしりたまはぬ
ていて給ひぬ女君も御としこそすくし給ひにたるほとなれ世中をしりたまはぬ
なかにもすこしうちよなれたる人のありさまをたにみしりたまはねはこれより
なかにもすこしうちよなれたる人のありさまをたにみしりたまはねはこれより
けちかきさまにもおほしよらすおもひのほかにもありけるよかなとなけかしき
けちかきさまにもおほしよらすおもひのほかにもありけるよかなとなけかしき
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にいとけしきもあしけれはひと〱御心ちなやましけにみえ給ふともてなやみ
にいとけしきもあしけれはひと〱御心ちなやましけにみえ給ふともてなやみ
きこゆとのゝ御けしきのこまやかにかたしけなくもおはしますかなまことの御
きこゆとのゝ御けしきのこまやかにかたしけなくもおはしますかなまことの御
おやときこゆともさらにかはかりおほしよらぬことなくはもてなしきこえ給は
おやときこゆともさらにかはかりおほしよらぬことなくはもてなしきこえ給は
しなと兵部なともしのひてきこゆるにつけていとゝおもはすに心つきなき御心
しなと兵部なともしのひてきこゆるにつけていとゝおもはすに心つきなき御心
のありさまをうとましう思はてたまふにも身そ心うかりけるまたのあした御文
のありさまをうとましう思はてたまふにも身そ心うかりけるまたのあした御文
とくありなやましかりてふし給へれと人〱御すゝりなとまいりて御かへりと
とくありなやましかりてふし給へれと人〱御すゝりなとまいりて御かへりと
くときこゆれはしふ〱にみたまふしろきかみのうはへはおひらかにすく〱
くときこゆれはしふ〱にみたまふしろきかみのうはへはおひらかにすく〱
しきにいとめてたうかいたまへりたくひなかりし御けしきこそつらきしもわす
しきにいとめてたうかいたまへりたくひなかりし御けしきこそつらきしもわす
れかたういかに人みたてまつりけむ
れかたういかに人みたてまつりけむ
うちとけてねもみぬものをわかくさのことありかほにむすほゝるらむおさ
うちとけてねもみぬものをわかくさのことありかほにむすほゝるらむおさ
なくこそものし給ひけれとさすかにおやかりたる御ことはもいとにくしとみた
なくこそものし給ひけれとさすかにおやかりたる御ことはもいとにくしとみた
まひて御かへり事きこえさらむも人めあやしけれはふくよかなるみちのくにか
まひて御かへり事きこえさらむも人めあやしけれはふくよかなるみちのくにか
みにたゝうけたまはりぬみたり心ちのあしう侍れはきこえさせぬとのみあるに
みにたゝうけたまはりぬみたり心ちのあしう侍れはきこえさせぬとのみあるに
かやうのけしきはさすかにすくよかなりとほゝゑみてうらみ所ある心ちしたま
かやうのけしきはさすかにすくよかなりとほゝゑみてうらみ所ある心ちしたま
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ふうたてある心かないろにゐてたまひてのちはおほたのまつのとおもはせたる
ふうたてある心かないろにゐてたまひてのちはおほたのまつのとおもはせたる
ことなくむつかしうきこえ給ことおほかれはいとゝところせきこゝちしてをき
ことなくむつかしうきこえ給ことおほかれはいとゝところせきこゝちしてをき
所なきものおもひつきていとなやましうさへし給ふかくてことの心しる人はす
所なきものおもひつきていとなやましうさへし給ふかくてことの心しる人はす
くなうてうときもしたしきもむけのおやさまに思きこえたるをかうやうのけし
くなうてうときもしたしきもむけのおやさまに思きこえたるをかうやうのけし
きのもりいてはいみしう人わらはれにうきなにもあるへきかなちゝおとゝなと
きのもりいてはいみしう人わらはれにうきなにもあるへきかなちゝおとゝなと
のたつねしり給にてもまめまめしき御心はへにもあらさらむものからましてい
のたつねしり給にてもまめまめしき御心はへにもあらさらむものからましてい
とあはつけうまちきゝおほさんことゝよろつにやすけなうおほしみたる宮大将
とあはつけうまちきゝおほさんことゝよろつにやすけなうおほしみたる宮大将
なとはとのゝ御けしきもてはなれぬさまにつたへきゝ給うていとねんころにき
なとはとのゝ御けしきもてはなれぬさまにつたへきゝ給うていとねんころにき
こえたまふこのいはもる中将もおとゝの御ゆるしをみてこそかたよりにほのき
こえたまふこのいはもる中将もおとゝの御ゆるしをみてこそかたよりにほのき
ゝてまことのすちをはしらすたゝひとへにうれしくてをりたちうらみきこえま
ゝてまことのすちをはしらすたゝひとへにうれしくてをりたちうらみきこえま
とひありくめり
とひありくめり