校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・初音
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
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としたちかへるあしたのそらのけしきなこりなくゝもらぬうらゝけさにはかす
としたちかへるあしたのそらのけしきなこりなくゝもらぬうらゝけさにはかす
ならぬかきねのうちたにゆきまの草わかやかにいろつきはしめいつしかとけし
ならぬかきねのうちたにゆきまの草わかやかにいろつきはしめいつしかとけし
きたつかすみのこのめもうちけふりおのつから人のこゝろものひらかにそみゆ
きたつかすみのこのめもうちけふりおのつから人のこゝろものひらかにそみゆ
るかしましていとゝたまをしける御まへは庭よりはしめみところおほくみかき
るかしましていとゝたまをしける御まへは庭よりはしめみところおほくみかき
ましたまへる御方〱の有さまゝねひたてんもことのはたるましくなん春のお
ましたまへる御方〱の有さまゝねひたてんもことのはたるましくなん春のお
とゝの御まへとりわきて梅のかもみすのうちのにほひにふきまかひていける仏
とゝの御まへとりわきて梅のかもみすのうちのにほひにふきまかひていける仏
のみくにとおほゆさすかにうちとけてやすらかにすみなし給へりさふらふ人
のみくにとおほゆさすかにうちとけてやすらかにすみなし給へりさふらふ人
〱もわかやかにすくれたるをひめ君の御かたにとえらせ給てすこしをとなひ
〱もわかやかにすくれたるをひめ君の御かたにとえらせ給てすこしをとなひ
たるかきりなか〱よし〱ゝしくさうそくありさまよりはしめてめやすくもて
たるかきりなか〱よし〱ゝしくさうそくありさまよりはしめてめやすくもて
つけてこゝかしこにむれゐつゝはかためのいはゐしてもちゐかゝみをさへとり
つけてこゝかしこにむれゐつゝはかためのいはゐしてもちゐかゝみをさへとり
よせてちとせのかけにしるきとしのうちのいはひ事ともしてそほれあへるにお
よせてちとせのかけにしるきとしのうちのいはひ事ともしてそほれあへるにお
とゝのきみさしのそきたまへれはふところてひきなをしつゝいとはしたなきわ
とゝのきみさしのそきたまへれはふところてひきなをしつゝいとはしたなきわ
さかなとわひあへりいとしたゝかなる身つからのいはひ事ともかなみなおの
さかなとわひあへりいとしたゝかなる身つからのいはひ事ともかなみなおの
〱思事のみち〱あらんかしすこしきかせよや我ことふきせんとうちわらひ
〱思事のみち〱あらんかしすこしきかせよや我ことふきせんとうちわらひ
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給へる御有さまをとしのはしめのさかへにみたてまつるわれはと思あかれる中
給へる御有さまをとしのはしめのさかへにみたてまつるわれはと思あかれる中
将の君そかねてそみゆるなとこそかゝみのかけにもかたらひ侍りつれわたくし
将の君そかねてそみゆるなとこそかゝみのかけにもかたらひ侍りつれわたくし
のいのりはなにはかりのことをかなときこゆあしたの程は人〱まいりこみて
のいのりはなにはかりのことをかなときこゆあしたの程は人〱まいりこみて
ものさはかしかりけるをゆふつかた御方〱のさむさし給はんとて心ことにひ
ものさはかしかりけるをゆふつかた御方〱のさむさし給はんとて心ことにひ
きつくろひけさうしたまふ御かけこそけにみるかひあめれけさの人〱のたは
きつくろひけさうしたまふ御かけこそけにみるかひあめれけさの人〱のたは
ふれかはしつるいとうらやましくみえつるをうゑには我みせたてまつらんとて
ふれかはしつるいとうらやましくみえつるをうゑには我みせたてまつらんとて
みたれたることすこしうちませつゝいはひきこえたまふ
みたれたることすこしうちませつゝいはひきこえたまふ
うすこほりとけぬるいけのかゝみにはよにたくひなきかけそならへるけに
うすこほりとけぬるいけのかゝみにはよにたくひなきかけそならへるけに
めてたき御あはひともなり
めてたき御あはひともなり
くもりなきいけのかゝみによろつ世をすむへきかけそしるくみえけるなに
くもりなきいけのかゝみによろつ世をすむへきかけそしるくみえけるなに
ことにつけてもすゑとをき御契をあらまほしくきこへかはし給今日はねのひな
ことにつけてもすゑとをき御契をあらまほしくきこへかはし給今日はねのひな
りけりけにちとせの春をかけていはゝんにことはりなる日なりひめきみの御か
りけりけにちとせの春をかけていはゝんにことはりなる日なりひめきみの御か
たにわたり給へれはわらはしもつかへなとおまへの山のこまつひきあそふわか
たにわたり給へれはわらはしもつかへなとおまへの山のこまつひきあそふわか
き人〱の心ちともおきところなくみゆきたのおとゝよりわさとかましくしあ
き人〱の心ちともおきところなくみゆきたのおとゝよりわさとかましくしあ
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つめたるひけこともわりこなとたてまつれ給へりえならぬ五えうのえたにうつ
つめたるひけこともわりこなとたてまつれ給へりえならぬ五えうのえたにうつ
るうくひすもおもふ心あらんかし
るうくひすもおもふ心あらんかし
とし月をまつにひかれてふる人にけふうくひすのはつねきかせよをとせぬ
とし月をまつにひかれてふる人にけふうくひすのはつねきかせよをとせぬ
さとのときこへたまへるをけにあはれとおほしゝることいみもえし給はぬけし
さとのときこへたまへるをけにあはれとおほしゝることいみもえし給はぬけし
きなりこの御かへりはみつからきこえたまへはつねをしみ給へきかたにもあら
きなりこの御かへりはみつからきこえたまへはつねをしみ給へきかたにもあら
すかしとて御すゝりとりまかなひかゝせたてまつらせたまふいとうつくしけに
すかしとて御すゝりとりまかなひかゝせたてまつらせたまふいとうつくしけに
てあけくれみたてまつる人たにあかす思きこゆる御有さまをいまゝておほつか
てあけくれみたてまつる人たにあかす思きこゆる御有さまをいまゝておほつか
なきとし月のへたゝりけるもつみへかましくこゝろくるしとおほす
なきとし月のへたゝりけるもつみへかましくこゝろくるしとおほす
ひきわかれとしはふれともうくひすのすたちしまつのねをわすれめやおさ
ひきわかれとしはふれともうくひすのすたちしまつのねをわすれめやおさ
なき御こゝろにまかせてくた〱しくそある夏の御すまひをみたまへはときな
なき御こゝろにまかせてくた〱しくそある夏の御すまひをみたまへはときな
らぬけにやいとしつかにみえてわさとこのましきこともなくあてやかにすみな
らぬけにやいとしつかにみえてわさとこのましきこともなくあてやかにすみな
し給へるけはひみえわたるとし月にそへて御心のへたてもなくあはれなる御中
し給へるけはひみえわたるとし月にそへて御心のへたてもなくあはれなる御中
らひなりいまはあなかちにちかやかなる御有さまももてなしきこへたまはさり
らひなりいまはあなかちにちかやかなる御有さまももてなしきこへたまはさり
けりいとむつましくありかたからむいもせのちきりはかりきこえかはし給みき
けりいとむつましくありかたからむいもせのちきりはかりきこえかはし給みき
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帳へたてたれとすこしおしやり給へは又さてをはすはなたはけにゝほひおほか
帳へたてたれとすこしおしやり給へは又さてをはすはなたはけにゝほひおほか
らぬあはひにて御くしなともいたくさかりすきにけりやさしきかたにあらねと
らぬあはひにて御くしなともいたくさかりすきにけりやさしきかたにあらねと
えひかつらしてそつくろひ給へき我ならさらんひとはみさめしぬへき御有さま
えひかつらしてそつくろひ給へき我ならさらんひとはみさめしぬへき御有さま
をかくてみるこそうれしくほいあれこゝろかろき人のつらにて我にそむきたま
をかくてみるこそうれしくほいあれこゝろかろき人のつらにて我にそむきたま
ひなましかはなと御たいめんのをりをりにはまつわか御こゝろのなかさをも人
ひなましかはなと御たいめんのをりをりにはまつわか御こゝろのなかさをも人
の御こゝろのおもきをもうれしく思やうなりとおほしけりこまやかにふるとし
の御こゝろのおもきをもうれしく思やうなりとおほしけりこまやかにふるとし
の御ものかたりなとなつかしうきこえたまひてにしのたいへわたり給またいた
の御ものかたりなとなつかしうきこえたまひてにしのたいへわたり給またいた
くもすみなれたまはぬ程よりはけはひをかしくしなしてをかしけなるわらはへ
くもすみなれたまはぬ程よりはけはひをかしくしなしてをかしけなるわらはへ
のすかたなまめかしくひとかけあまたして御しつらひあるへきかきりなれとも
のすかたなまめかしくひとかけあまたして御しつらひあるへきかきりなれとも
こまやかなる御てうとはいとしもとゝのへ給はぬをさるかたにものきよけにす
こまやかなる御てうとはいとしもとゝのへ給はぬをさるかたにものきよけにす
みなしたまへりさうしみもあなをかしけとふとみえてやまふきにもてはやし給
みなしたまへりさうしみもあなをかしけとふとみえてやまふきにもてはやし給
へる御かたちなといとはなやかにこゝそくもれるとみゆるところなくゝまなく
へる御かたちなといとはなやかにこゝそくもれるとみゆるところなくゝまなく
にほひきらきらしくみまほしきさまそし給へる物おもひにしつみ給へるほとの
にほひきらきらしくみまほしきさまそし給へる物おもひにしつみ給へるほとの
しわさにやかみのすそすこしほそりてさはらかにかゝれるしもいとものきよけ
しわさにやかみのすそすこしほそりてさはらかにかゝれるしもいとものきよけ
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にこゝかしこいとけさやかなるさまし給へるをかくてみさらましかはとおもほ
にこゝかしこいとけさやかなるさまし給へるをかくてみさらましかはとおもほ
すにつけてはえしもみすくし給ましくやかていとへたてなくみたてまつり給へ
すにつけてはえしもみすくし給ましくやかていとへたてなくみたてまつり給へ
となを思にへたゝりおほくあやしきかうつゝのこゝちもし給はねはまほならす
となを思にへたゝりおほくあやしきかうつゝのこゝちもし給はねはまほならす
もてなし給へるもいとをかしとしころになりぬる心ちしてみたてまつるも心や
もてなし給へるもいとをかしとしころになりぬる心ちしてみたてまつるも心や
すくほいかなひぬるをつゝみなくもてなし給てあなたなとにもわたり給へかし
すくほいかなひぬるをつゝみなくもてなし給てあなたなとにもわたり給へかし
いはけなきうひことならふ人もあめるをもろともにきゝならし給へうしろめた
いはけなきうひことならふ人もあめるをもろともにきゝならし給へうしろめた
くあはつけきこゝろもたる人なきところなりときこえたまへはのたまはせんま
くあはつけきこゝろもたる人なきところなりときこえたまへはのたまはせんま
ゝにこそはときこえたまふさもあることそかしくれかたになるほとにあかしの
ゝにこそはときこえたまふさもあることそかしくれかたになるほとにあかしの
御かたにわたり給ちかきわたとのゝとおしあくるよりみすのうちのおひかせな
御かたにわたり給ちかきわたとのゝとおしあくるよりみすのうちのおひかせな
まめかしくふきにほはかしてものよりことにけたかくおほさるさうしみはみえ
まめかしくふきにほはかしてものよりことにけたかくおほさるさうしみはみえ
すいつらとみまはし給にすゝりのあたりにきはゝしくさうしともとりちらした
すいつらとみまはし給にすゝりのあたりにきはゝしくさうしともとりちらした
るをとりつゝみたまふからのきのこと〱しきはしさしたるしとねにをかしけ
るをとりつゝみたまふからのきのこと〱しきはしさしたるしとねにをかしけ
なるきむうちをきわさとめきよしある火をけにしゝうをくゆらかしてものこと
なるきむうちをきわさとめきよしある火をけにしゝうをくゆらかしてものこと
にしめたるにえひかうのかのまかへるいとえんなりてならひとものみたれうち
にしめたるにえひかうのかのまかへるいとえんなりてならひとものみたれうち
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とけたるもすちかはりゆへあるかきさまなりこと〱しうさうかちなとにもさ
とけたるもすちかはりゆへあるかきさまなりこと〱しうさうかちなとにもさ
へかかすめやすくかきすましたりこまつの御返をめつらしとみけるまゝにあは
へかかすめやすくかきすましたりこまつの御返をめつらしとみけるまゝにあは
れなるふる事ともかきませて
れなるふる事ともかきませて
めつらしやはなのねくらにこつたひてたにのふるすをとつるうくひすこゑ
めつらしやはなのねくらにこつたひてたにのふるすをとつるうくひすこゑ
まちいてたるなともありさけるおかへにいゑしあれはなとひきかへしなくさめ
まちいてたるなともありさけるおかへにいゑしあれはなとひきかへしなくさめ
たるすちなとかきませつゝあるをとりてみ給つゝほゝゑみ給へるはつかしけな
たるすちなとかきませつゝあるをとりてみ給つゝほゝゑみ給へるはつかしけな
りふてさしぬらしてかきすさみたまふほとにゐさりいてゝさすかに身つからの
りふてさしぬらしてかきすさみたまふほとにゐさりいてゝさすかに身つからの
もてなしはかしこまりをきてめやすきよういなるを猶人よりはことなりとおほ
もてなしはかしこまりをきてめやすきよういなるを猶人よりはことなりとおほ
すしろきにけさやかなるかみのかゝりのすこしさはらかなるほとにうすらきに
すしろきにけさやかなるかみのかゝりのすこしさはらかなるほとにうすらきに
けるもいとゝなまめかしさそひてなつかしけれはあたらしきとしの御さはかれ
けるもいとゝなまめかしさそひてなつかしけれはあたらしきとしの御さはかれ
もやとつゝましけれとこなたにとまり給ぬなをおほえことなりかしとかた〱
もやとつゝましけれとこなたにとまり給ぬなをおほえことなりかしとかた〱
にこゝろをきておほすみなみのおとゝにはましてめさましかる人〱ありまた
にこゝろをきておほすみなみのおとゝにはましてめさましかる人〱ありまた
あけほのゝほとにわたり給ぬかくしもあるましき夜ふかさそかしと思になこり
あけほのゝほとにわたり給ぬかくしもあるましき夜ふかさそかしと思になこり
もたゝならすあはれに思まちとり給へるはたなまけやけしとおほすへかめる心
もたゝならすあはれに思まちとり給へるはたなまけやけしとおほすへかめる心
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のうちはゝかられ給てあやしきうたゝねをしてわか〱しかりけるいきたなさ
のうちはゝかられ給てあやしきうたゝねをしてわか〱しかりけるいきたなさ
をさしもおとろかしたまはてと御けしきとり給もをかしくみゆことなる御いら
をさしもおとろかしたまはてと御けしきとり給もをかしくみゆことなる御いら
へもなけれはわつらはしくてそらねをしつゝひたかくおほとのこもりおきたり
へもなけれはわつらはしくてそらねをしつゝひたかくおほとのこもりおきたり
今日は臨時客の事にまきらはしてそおもかくし給かむたちめみこたちなとれい
今日は臨時客の事にまきらはしてそおもかくし給かむたちめみこたちなとれい
のゝこるなくまいり給へり御あそひありてひきいてものろくなとになしそこら
のゝこるなくまいり給へり御あそひありてひきいてものろくなとになしそこら
つとひ給へるか我もおとらしともてなし給へる中にもすこしなすらひなるたに
つとひ給へるか我もおとらしともてなし給へる中にもすこしなすらひなるたに
みえ給はぬ物かなとりはなちてはいうそくおほくものし給ころなれとおまへに
みえ給はぬ物かなとりはなちてはいうそくおほくものし給ころなれとおまへに
てはけをされたまふわろしかしなにのかすならぬしもへともなとたにこの院に
てはけをされたまふわろしかしなにのかすならぬしもへともなとたにこの院に
まいるには心つかひことなりけりましてわかやかなるかむたちめなとはおもふ
まいるには心つかひことなりけりましてわかやかなるかむたちめなとはおもふ
こゝろなと物し給てすゝろにこゝろけさうし給つゝつねのとしよりもことなり
こゝろなと物し給てすゝろにこゝろけさうし給つゝつねのとしよりもことなり
花のかさそふゆふかせのとかにうちふきたるにおまへのむめやう〱ひもとき
花のかさそふゆふかせのとかにうちふきたるにおまへのむめやう〱ひもとき
てあはれなるたそかれときなるに物のしらへともおもしろくこのとのうたひた
てあはれなるたそかれときなるに物のしらへともおもしろくこのとのうたひた
るひやうしいとはなやかなりおとゝもときときこゑうちそへたまへるさきくさ
るひやうしいとはなやかなりおとゝもときときこゑうちそへたまへるさきくさ
のすゑつかたいとなつかしうめてたくきこゆなに事もさしいてし給御ひかりに
のすゑつかたいとなつかしうめてたくきこゆなに事もさしいてし給御ひかりに
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はやされていろをもねをもますけちめことになんわかれけるかくのゝしるむま
はやされていろをもねをもますけちめことになんわかれけるかくのゝしるむま
くるまのをとも物へたてゝきゝたまふ御方〱はゝちすの中のせかいにまたひ
くるまのをとも物へたてゝきゝたまふ御方〱はゝちすの中のせかいにまたひ
らけさらむ心ちもかくやと心やましけなりましてひんかしの院にはなれたまへ
らけさらむ心ちもかくやと心やましけなりましてひんかしの院にはなれたまへ
る御方〱はとし月にそへてつれ〱のかすのみまされとよのうきめみえぬ山
る御方〱はとし月にそへてつれ〱のかすのみまされとよのうきめみえぬ山
ちに思なすらへてつれなき人の御こゝろをはなにとかはみたてまつりとかめん
ちに思なすらへてつれなき人の御こゝろをはなにとかはみたてまつりとかめん
そのほかの心もとなくさひしき事はたなけれはおこなひのかたの人はそのまき
そのほかの心もとなくさひしき事はたなけれはおこなひのかたの人はそのまき
れなくつとめかなのよろつのさうしのかくもん心にいれたまはん人は又そのね
れなくつとめかなのよろつのさうしのかくもん心にいれたまはん人は又そのね
かひにしたかひものまめやかにはか〱しきをきてにもたゝ心のねかひにした
かひにしたかひものまめやかにはか〱しきをきてにもたゝ心のねかひにした
かひたるすまゐなりさはかしきひころすくしてわたり給へりひたちの宮の御方
かひたるすまゐなりさはかしきひころすくしてわたり給へりひたちの宮の御方
には人の程あれは心くるしくおほして人めのかさりはかりはいとよくもてなし
には人の程あれは心くるしくおほして人めのかさりはかりはいとよくもてなし
きこへたまふいにしへさかりとみえし御わかゝみもとしころにおとろへゆきま
きこへたまふいにしへさかりとみえし御わかゝみもとしころにおとろへゆきま
してたきのよとみはつかしけなる御かたわらめなとをいとをしとおほせはまほ
してたきのよとみはつかしけなる御かたわらめなとをいとをしとおほせはまほ
にもむかひたまはすやなきはけにこそすさましかりけれとみゆるもきなし給へ
にもむかひたまはすやなきはけにこそすさましかりけれとみゆるもきなし給へ
る人からなるへしひかりもなくゝろきかいねりのさひ〱しくはりたるひとか
る人からなるへしひかりもなくゝろきかいねりのさひ〱しくはりたるひとか
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さねさるをりもののうちきおき給へるさむけに心くるしかゝさねのうちきなと
さねさるをりもののうちきおき給へるさむけに心くるしかゝさねのうちきなと
はいかにしなしたるにかあらん御はなのいろはかりかすみにもまきるましくは
はいかにしなしたるにかあらん御はなのいろはかりかすみにもまきるましくは
なやかなるに御心にもあらすうちなけかれ給てことさらにみき丁ひきつくろひ
なやかなるに御心にもあらすうちなけかれ給てことさらにみき丁ひきつくろひ
へたて給中〱女はさしもおほしたらすいまはかくあはれになかき御こゝろの
へたて給中〱女はさしもおほしたらすいまはかくあはれになかき御こゝろの
程ををたしきものにうちとけたのみきこえ給へる御さまあはれなりかゝるかた
程ををたしきものにうちとけたのみきこえ給へる御さまあはれなりかゝるかた
にもをしなへての人ならすいとをしくかなしき人の御さまとおほせはあはれに
にもをしなへての人ならすいとをしくかなしき人の御さまとおほせはあはれに
我たにこそはと御こゝろとゝめ給へるもありかたきそかし御こゑもいとさむけ
我たにこそはと御こゝろとゝめ給へるもありかたきそかし御こゑもいとさむけ
にうちわなゝきつゝかたらひきこえ給みわつらひ給て御そものなとうしろみき
にうちわなゝきつゝかたらひきこえ給みわつらひ給て御そものなとうしろみき
こゆる人は侍りやかく心やすき御すまゐはたゝいとうちとけたるさまにふくみ
こゆる人は侍りやかく心やすき御すまゐはたゝいとうちとけたるさまにふくみ
なへたるこそよけれうわへはかりつくろひたる御よそひはあいなくなときこへ
なへたるこそよけれうわへはかりつくろひたる御よそひはあいなくなときこへ
給へはこち〱しくさすかにわらひ給てたいこのあさりのきみの御あつかひし
給へはこち〱しくさすかにわらひ給てたいこのあさりのきみの御あつかひし
侍るとてきぬともゝえぬひ侍らてなんかはきぬをさへとられにしのちさむく侍
侍るとてきぬともゝえぬひ侍らてなんかはきぬをさへとられにしのちさむく侍
ときこえ給はいとはなあかき御せうとなりけり心うつくしといひなからあまり
ときこえ給はいとはなあかき御せうとなりけり心うつくしといひなからあまり
うちとけすきたりとおほせとこゝにてはいとまめにきすくの人にてをはすかは
うちとけすきたりとおほせとこゝにてはいとまめにきすくの人にてをはすかは
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きぬはいとよし山ふしのみのしろ衣にゆつり給てあへなんさてこのいたはりな
きぬはいとよし山ふしのみのしろ衣にゆつり給てあへなんさてこのいたはりな
きしろたへのころもはなゝへにもなとかゝさねたまはぬさるへきをり〱はう
きしろたへのころもはなゝへにもなとかゝさねたまはぬさるへきをり〱はう
ちわすれたらん事もおとろかし給へかしもとよりをれ〱しくたゆき心のおこ
ちわすれたらん事もおとろかし給へかしもとよりをれ〱しくたゆき心のおこ
たりにましてかた〱のまきらはしきゝほいにもおのつからなんとのたまひて
たりにましてかた〱のまきらはしきゝほいにもおのつからなんとのたまひて
むかひの院のみくらあけさせてきぬあやなとたてまつらせ給あれたるところも
むかひの院のみくらあけさせてきぬあやなとたてまつらせ給あれたるところも
なけれとすみ給はぬ所のけはひはしつかにておまへのこたちはかりそいとをも
なけれとすみ給はぬ所のけはひはしつかにておまへのこたちはかりそいとをも
しろくこうはいのさきいてたるにほひなとみはやす人もなきをみわたし給て
しろくこうはいのさきいてたるにほひなとみはやす人もなきをみわたし給て
ふるさとの春のこすゑにたつねきてよのつねならぬはなをみるかなひとり
ふるさとの春のこすゑにたつねきてよのつねならぬはなをみるかなひとり
こち給へときゝしり給はさりけんかしうつせみのあま君にもにもさしのそき給
こち給へときゝしり給はさりけんかしうつせみのあま君にもにもさしのそき給
へりうけはりたるさまにもあらすかこやかにつほねすみにしなして仏はかりに
へりうけはりたるさまにもあらすかこやかにつほねすみにしなして仏はかりに
ところえさせたてまつりておこなひつとめけるさまあはれにみえて経仏のかさ
ところえさせたてまつりておこなひつとめけるさまあはれにみえて経仏のかさ
りはかなくしたるあかのくなともをかしけになまめかしく猶こゝろはせありと
りはかなくしたるあかのくなともをかしけになまめかしく猶こゝろはせありと
みゆるひとのけはひなりあをにひの木丁心はへをかしきにいたくゐかくれて袖
みゆるひとのけはひなりあをにひの木丁心はへをかしきにいたくゐかくれて袖
くちはかりそいろことなるしもなつかしけれはなみたくみたまひて松かうらし
くちはかりそいろことなるしもなつかしけれはなみたくみたまひて松かうらし
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まをはるかに思てそやみぬへかりけるむかしよりこゝろうかりける御契かなさ
まをはるかに思てそやみぬへかりけるむかしよりこゝろうかりける御契かなさ
すかにかはかりのむつひはたゆましかりけるよなとのたまふあまきみも物あは
すかにかはかりのむつひはたゆましかりけるよなとのたまふあまきみも物あは
れなるけはひにてかゝるかたにたのみきこえさするしもなんあさくはあらす思
れなるけはひにてかゝるかたにたのみきこえさするしもなんあさくはあらす思
給へしられ侍りけるときこゆつらきおり〱かさねて心まとはしたまひしよの
給へしられ侍りけるときこゆつらきおり〱かさねて心まとはしたまひしよの
むくひなとを仏にかしこまりきこゆるこそくるしけれおほしゝるやかくいとす
むくひなとを仏にかしこまりきこゆるこそくるしけれおほしゝるやかくいとす
なをにしもあらぬものをと思あはせたまふこともあらしやはとなんおもふとの
なをにしもあらぬものをと思あはせたまふこともあらしやはとなんおもふとの
たまふかのあさましかりしよのふる事をきゝおき給へるなんめりとはつかしく
たまふかのあさましかりしよのふる事をきゝおき給へるなんめりとはつかしく
かゝる有さまを御覧しはてらるゝよりほかのむくひはいつこにか侍らんとてま
かゝる有さまを御覧しはてらるゝよりほかのむくひはいつこにか侍らんとてま
ことにうちなきぬいにしへよりもゝのふかくはつかしけさまさりてかくもては
ことにうちなきぬいにしへよりもゝのふかくはつかしけさまさりてかくもては
なれたる事とおほすしもみはなちかたくおほさるれとはかなきことをのたまひ
なれたる事とおほすしもみはなちかたくおほさるれとはかなきことをのたまひ
かくへくもあらすおほかたのむかしいまの物かたりをし給てかはかりのいふか
かくへくもあらすおほかたのむかしいまの物かたりをし給てかはかりのいふか
ひたにあれかしとあなたをみやり給かやうにても御かけにかくれたる人〱お
ひたにあれかしとあなたをみやり給かやうにても御かけにかくれたる人〱お
ほかりみなさしのそきわたし給ておほつかなき日かすつもるをり〱あれと心
ほかりみなさしのそきわたし給ておほつかなき日かすつもるをり〱あれと心
のうちはおこたらすなんたゝかきりある道のわかれのみこそうしろめたけれい
のうちはおこたらすなんたゝかきりある道のわかれのみこそうしろめたけれい
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のちそしらぬなとなつかしくの給いつれをもほと〱につけてあはれとおほし
のちそしらぬなとなつかしくの給いつれをもほと〱につけてあはれとおほし
たり我はとおほしあかりぬへき御身の程なれとさしもこと〱しくもてなし給
たり我はとおほしあかりぬへき御身の程なれとさしもこと〱しくもてなし給
はす所につけ人のほとにつけつゝあまねくなつかしくおはしませはたゝかはか
はす所につけ人のほとにつけつゝあまねくなつかしくおはしませはたゝかはか
りの御こゝろにかゝりてなんおほくの人〱としをへけることしはおとこたう
りの御こゝろにかゝりてなんおほくの人〱としをへけることしはおとこたう
か有内より朱雀院にまいりてつきにこの院へまいる道のほとゝをくて夜あけか
か有内より朱雀院にまいりてつきにこの院へまいる道のほとゝをくて夜あけか
たになりにけり月もくもりなくすみまさりてうす雪すこしふれるにはのえなら
たになりにけり月もくもりなくすみまさりてうす雪すこしふれるにはのえなら
ぬに殿上人なと物ゝ上手おほかるころほひにてふゑのねもいとをもしろくふき
ぬに殿上人なと物ゝ上手おほかるころほひにてふゑのねもいとをもしろくふき
たてゝこの御前へはことにこゝろつかひしたり御方〱も物みにわたりたまふ
たてゝこの御前へはことにこゝろつかひしたり御方〱も物みにわたりたまふ
へくかねて御せうそくとも有けれは左右のたいわたとのなとに御つほねしつゝ
へくかねて御せうそくとも有けれは左右のたいわたとのなとに御つほねしつゝ
をはすにしのたいのひめ君はしむてんのみなみの御方にわたり給てこなたのひ
をはすにしのたいのひめ君はしむてんのみなみの御方にわたり給てこなたのひ
め君御たいめんありけりうゑもひとゝころにおはしませはみ木丁はかりへたて
め君御たいめんありけりうゑもひとゝころにおはしませはみ木丁はかりへたて
ゝきこえ給朱雀院のきさいの宮の御かたなとめくりける程に夜もやう〱あけ
ゝきこえ給朱雀院のきさいの宮の御かたなとめくりける程に夜もやう〱あけ
ゆけはみつむまやにてことそかせ給へきをれいあることよりもさまことに事く
ゆけはみつむまやにてことそかせ給へきをれいあることよりもさまことに事く
はへていみしくもてはやさせ給かけすさましきあか月つき夜にゆきはやう〱
はへていみしくもてはやさせ給かけすさましきあか月つき夜にゆきはやう〱
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ふりつむまつかせこたかくふきおろしものすさましくも有ぬへきほとにあを色
ふりつむまつかせこたかくふきおろしものすさましくも有ぬへきほとにあを色
のなへはめるにしらかさねのいろあひなにのかさりかはみゆるかさしのわたは
のなへはめるにしらかさねのいろあひなにのかさりかはみゆるかさしのわたは
にほひもなきものなれとゝころからにやおもしろく心ゆきいのちのふるほとな
にほひもなきものなれとゝころからにやおもしろく心ゆきいのちのふるほとな
り殿の中将のきみ内の大いとのゝきみたちそこらにすくれてめやすくはなやか
り殿の中将のきみ内の大いとのゝきみたちそこらにすくれてめやすくはなやか
なりほの〱とあけ行にゆきやゝちりてそゝろさむきにたけかはうたひてかよ
なりほの〱とあけ行にゆきやゝちりてそゝろさむきにたけかはうたひてかよ
れるすかたなつかしきこゑ〱のゑにもかきとゝめかたからんこそくちをしけ
れるすかたなつかしきこゑ〱のゑにもかきとゝめかたからんこそくちをしけ
れ御方〱いつれも〱おとらぬ袖くちともこほれいてたるこちたさものゝい
れ御方〱いつれも〱おとらぬ袖くちともこほれいてたるこちたさものゝい
ろあひなともあけほのゝそらに春のにしきたちいてたるかすみのうちかとみわ
ろあひなともあけほのゝそらに春のにしきたちいてたるかすみのうちかとみわ
たさるあやしく心ゆくみものにそありけるさるはかうこんしのよはなれたるさ
たさるあやしく心ゆくみものにそありけるさるはかうこんしのよはなれたるさ
まことふきのみたりかはしきをこめきたる事もこと〱しくとりなしたる中
まことふきのみたりかはしきをこめきたる事もこと〱しくとりなしたる中
〱なにはかりのおもしろかるへきひやうしもきこへぬものをれいのわたかつ
〱なにはかりのおもしろかるへきひやうしもきこへぬものをれいのわたかつ
きわたりてまかてぬ夜あけはてぬれは御かた〱かへりわたり給ぬおとゝのき
きわたりてまかてぬ夜あけはてぬれは御かた〱かへりわたり給ぬおとゝのき
みすこしおほとのこもりて日たかくおき給へり中将のこゑは弁少将のにをさ
みすこしおほとのこもりて日たかくおき給へり中将のこゑは弁少将のにをさ
〱おとらさむめるはあやしくいうそくともおひいつるころほひにこそあれい
〱おとらさむめるはあやしくいうそくともおひいつるころほひにこそあれい
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にしへの人はまことにかしこきかたやすくれたることもおほかりけんなさけた
にしへの人はまことにかしこきかたやすくれたることもおほかりけんなさけた
ちたるすちはこのころの人にえしもまさらさりけんかし中将なとをはすく〱
ちたるすちはこのころの人にえしもまさらさりけんかし中将なとをはすく〱
しきおほやけひとにしなしてんとなむ思おきてしみつからのあされはみたるか
しきおほやけひとにしなしてんとなむ思おきてしみつからのあされはみたるか
たくなしさをもてはなれよと思しかと猶したにはほのすきたるすちの心をこそ
たくなしさをもてはなれよと思しかと猶したにはほのすきたるすちの心をこそ
とゝむへかめれもてしつめすくよかなるうわへはかりはうるさかんめりなとい
とゝむへかめれもてしつめすくよかなるうわへはかりはうるさかんめりなとい
とうつくしとおほしたり万春楽御くちすさみにのたまひて人〱のこなたにつ
とうつくしとおほしたり万春楽御くちすさみにのたまひて人〱のこなたにつ
とひ給へるついてにいかてものゝねこゝろみてしかなわたくしのこえんすへし
とひ給へるついてにいかてものゝねこゝろみてしかなわたくしのこえんすへし
とのたまひて御ことゝものうるはしきふくろともしてひめをかせ給へるみなひ
とのたまひて御ことゝものうるはしきふくろともしてひめをかせ給へるみなひ
きいてゝおしのこひてゆるへるをとゝのへさせ給なとす御方〱心つかひいた
きいてゝおしのこひてゆるへるをとゝのへさせ給なとす御方〱心つかひいた
くしつゝ心けさうをつくし給らんかし
くしつゝ心けさうをつくし給らんかし