校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・せきや
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
Page 547
いよのすけといひしは故院かくれさせ給て又のとしひたちになりてくたりしか
いよのすけといひしは故院かくれさせ給て又のとしひたちになりてくたりしか
はかのはゝき木もいさなはれにけりすまの御たひゐもはるかにきゝて人しれす
はかのはゝき木もいさなはれにけりすまの御たひゐもはるかにきゝて人しれす
おもひやりきこえぬにしもあらさりしかとつたへきこゆへきよすかたになくて
おもひやりきこえぬにしもあらさりしかとつたへきこゆへきよすかたになくて
つくはねの山をふきこす風もうきたる心ちしていさゝかかのつたへたになくて
つくはねの山をふきこす風もうきたる心ちしていさゝかかのつたへたになくて
とし月かさなりにけりかきれる事もなかりし御たひゐなれと京にかへりすみ給
とし月かさなりにけりかきれる事もなかりし御たひゐなれと京にかへりすみ給
て又のとしの秋そひたちはのほりけるせき入日しもこの殿いし山に御くわむは
て又のとしの秋そひたちはのほりけるせき入日しもこの殿いし山に御くわむは
たしにまうて給ひけり京よりかのきのかみなといひしこともむかへにきたる人
たしにまうて給ひけり京よりかのきのかみなといひしこともむかへにきたる人
〱この殿かくまうて給ふへしとつけゝれはみちのほとさはかしかりなむもの
〱この殿かくまうて給ふへしとつけゝれはみちのほとさはかしかりなむもの
そとてまたあか月よりいそきけるを女車おほくところせうゆるきくるにひたけ
そとてまたあか月よりいそきけるを女車おほくところせうゆるきくるにひたけ
ぬうちいてのはまくるほとにとのはあわた山こえ給ひぬとて御せむの人〱み
ぬうちいてのはまくるほとにとのはあわた山こえ給ひぬとて御せむの人〱み
ちもさりあへすきこみぬれはせき山にみなおりゐてこゝかしこのすきのしたに
ちもさりあへすきこみぬれはせき山にみなおりゐてこゝかしこのすきのしたに
車ともかきおろしこかくれにゐかしこまりてすくしたてまつる車なとかたへは
車ともかきおろしこかくれにゐかしこまりてすくしたてまつる車なとかたへは
をくらかしさきにたてなとしたれとなをるいひろくみゆくるまとをはかりそ袖
をくらかしさきにたてなとしたれとなをるいひろくみゆくるまとをはかりそ袖
くちものゝいろあひなとももりいてゝみえたるゐ中ひすよしありてさい宮の御
くちものゝいろあひなとももりいてゝみえたるゐ中ひすよしありてさい宮の御
Page 548
くたりなにそやうのおりのものみ車おほしいてらる殿もかく世にさかへいて給
くたりなにそやうのおりのものみ車おほしいてらる殿もかく世にさかへいて給
ふめつらしさにかすもなきこせむともみなめとゝめたり九月つこもりなれはも
ふめつらしさにかすもなきこせむともみなめとゝめたり九月つこもりなれはも
みちの色〱こきませしもかれの草むらむらおかしうみえわたるにせきやより
みちの色〱こきませしもかれの草むらむらおかしうみえわたるにせきやより
さとくつれいてたるたひすかたともの色〱のあをのつき〱しきぬいものく
さとくつれいてたるたひすかたともの色〱のあをのつき〱しきぬいものく
ゝりそめのさまもさるかたにおかしうみゆ御車はすたれおろし給ひてかのむか
ゝりそめのさまもさるかたにおかしうみゆ御車はすたれおろし給ひてかのむか
しのこきみいま右衛門のすけなるをめしよせてけふの御せきむかへはえおもひ
しのこきみいま右衛門のすけなるをめしよせてけふの御せきむかへはえおもひ
すて給はしなとの給ふ御心のうちいとあはれにおほしいつることおほかれとお
すて給はしなとの給ふ御心のうちいとあはれにおほしいつることおほかれとお
ほそうにてかひなし女も人しれすむかしのことわすれねはとりかへしてものあ
ほそうにてかひなし女も人しれすむかしのことわすれねはとりかへしてものあ
はれなり
はれなり
ゆくとくとせきとめかたき涙をやたえぬし水と人はみるらむえしり給はし
ゆくとくとせきとめかたき涙をやたえぬし水と人はみるらむえしり給はし
かしと思ふにいとかひなしいし山よりいて給ふ御むかへに右衛門のすけまいり
かしと思ふにいとかひなしいし山よりいて給ふ御むかへに右衛門のすけまいり
てそまかりすきしかしこまりなと申すむかしわらはにていとむつましうらうた
てそまかりすきしかしこまりなと申すむかしわらはにていとむつましうらうた
きものにし給ひしかはかうふりなとえしまてこの御とくにかくれたりしをおほ
きものにし給ひしかはかうふりなとえしまてこの御とくにかくれたりしをおほ
えぬよのさはきありしころものゝきこえにはゝかりてひたちにくたりしをそす
えぬよのさはきありしころものゝきこえにはゝかりてひたちにくたりしをそす
Page 549
こし心をきてとしころはおほしけれと色にもいたし給はすむかしのやうにこそ
こし心をきてとしころはおほしけれと色にもいたし給はすむかしのやうにこそ
あらねとなをしたしきいへ人のうちにはかそへたまひけりきのかみといひしも
あらねとなをしたしきいへ人のうちにはかそへたまひけりきのかみといひしも
いまはかうちのかみにそなりにけるそのをとうとの右近のそうとけて御ともに
いまはかうちのかみにそなりにけるそのをとうとの右近のそうとけて御ともに
くたりしをそとりわきてなしいて給ひけれはそれにそたれもおもひしりてなと
くたりしをそとりわきてなしいて給ひけれはそれにそたれもおもひしりてなと
てすこしもよにしたかふ心をつかひけんなとおもひいてけるすけめしよせて御
てすこしもよにしたかふ心をつかひけんなとおもひいてけるすけめしよせて御
せうそこありいまはおほしわすれぬへきことを心なかくもおはするかなと思ひ
せうそこありいまはおほしわすれぬへきことを心なかくもおはするかなと思ひ
ゐたりつるはちきりしられしをさはおほしゝりけむや
ゐたりつるはちきりしられしをさはおほしゝりけむや
わくらはにゆきあふ道をたのみしも猶かひなしやしほならぬうみせきもり
わくらはにゆきあふ道をたのみしも猶かひなしやしほならぬうみせきもり
のさもうらやましくめさましかりしかなとありとしころのとたえもうひ〱し
のさもうらやましくめさましかりしかなとありとしころのとたえもうひ〱し
くなりにけれと心にはいつとなくたゝいまのこゝちするならひになむすき〱し
くなりにけれと心にはいつとなくたゝいまのこゝちするならひになむすき〱し
ういとゝにくまれむやとて給へれはかたしけなくてもていきて猶きこえ給へ
ういとゝにくまれむやとて給へれはかたしけなくてもていきて猶きこえ給へ
むかしにはすこしおほしのくことあらむと思給ふるにおなしやうなる御心のな
むかしにはすこしおほしのくことあらむと思給ふるにおなしやうなる御心のな
つかしさなむいとゝありかたきすさひことそようなきことゝ思へとえこそすく
つかしさなむいとゝありかたきすさひことそようなきことゝ思へとえこそすく
よかにきこえかへさね女にてはまけきこえ給へらむにつみゆるされぬへしなと
よかにきこえかへさね女にてはまけきこえ給へらむにつみゆるされぬへしなと
Page 550
いふいまはましていとはつかしうよろつのことうひ〱しき心ちすれとめつら
いふいまはましていとはつかしうよろつのことうひ〱しき心ちすれとめつら
しきにやえしのはれさりけむ
しきにやえしのはれさりけむ
あふさかの関やいかなるせきなれはしけきなけきの中をわくらん夢のやう
あふさかの関やいかなるせきなれはしけきなけきの中をわくらん夢のやう
になむときこえたりあはれもつらさもわすれぬふしとおほしをかれたる人なれ
になむときこえたりあはれもつらさもわすれぬふしとおほしをかれたる人なれ
はおり〱は猶のたまひうこかしけりかゝるほとにこのひたちのかみおいのつ
はおり〱は猶のたまひうこかしけりかゝるほとにこのひたちのかみおいのつ
もりにやなやましくのみしてもの心ほそかりけれはこともにたゝこの君の御こ
もりにやなやましくのみしてもの心ほそかりけれはこともにたゝこの君の御こ
とをのみいひをきてよろつの事たゝこの御心にのみまかせてありつる世にかは
とをのみいひをきてよろつの事たゝこの御心にのみまかせてありつる世にかは
らてつかうまつれとのみあけくれいひけり女君心うきすくせありてこの人にさ
らてつかうまつれとのみあけくれいひけり女君心うきすくせありてこの人にさ
へをくれていかなるさまにはふれまとふへきにかあらんと思ひなけき給ふをみ
へをくれていかなるさまにはふれまとふへきにかあらんと思ひなけき給ふをみ
るにいのちのかきりあるものなれはおしみとゝむへきかたもなしいかてかこの
るにいのちのかきりあるものなれはおしみとゝむへきかたもなしいかてかこの
人の御ためにのこしをくたましひもかなわかことものこゝろもしらぬをとうし
人の御ためにのこしをくたましひもかなわかことものこゝろもしらぬをとうし
ろめたうかなしきことにいひ思へと心にえとゝめぬものにてうせぬしはしこそ
ろめたうかなしきことにいひ思へと心にえとゝめぬものにてうせぬしはしこそ
さのたまひしものをなとなさけつくれとうはへこそあれつらきことおほかりと
さのたまひしものをなとなさけつくれとうはへこそあれつらきことおほかりと
あるもかゝるもよのことはりなれはみひとつのうきことにてなけきあかしくら
あるもかゝるもよのことはりなれはみひとつのうきことにてなけきあかしくら
Page 551
すたゝこのかはちのかみのみそむかしよりすき心ありてすこしなさけかりける
すたゝこのかはちのかみのみそむかしよりすき心ありてすこしなさけかりける
あはれにのたまひをきしかすならすともおほしうとまてのたまはせよなとつい
あはれにのたまひをきしかすならすともおほしうとまてのたまはせよなとつい
そうしよりていとあさましき心のみえけれはうきすくせある身にてかくいきと
そうしよりていとあさましき心のみえけれはうきすくせある身にてかくいきと
まりてはて〱はめつらしきことともをきゝそふるかなと人しれす思ひしりて
まりてはて〱はめつらしきことともをきゝそふるかなと人しれす思ひしりて
人にさなむともしらせてあまになりにけりある人〱いふかひなしとおもひな
人にさなむともしらせてあまになりにけりある人〱いふかひなしとおもひな
けくかみもいとつらうをのれをいとひ給ふほとにのこりの御よはひはおほくも
けくかみもいとつらうをのれをいとひ給ふほとにのこりの御よはひはおほくも
のし給らむいかてかすくし給ふへきなとそあいなのさかしらやなとそはへるめ
のし給らむいかてかすくし給ふへきなとそあいなのさかしらやなとそはへるめ
る
る