校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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ひとしれぬ御心つからの物おもはしさはいつとなきことなめれとかくおほかた のよにつけてさへわつらはしうおほしみたるることのみまされはもの心ほそく 世中なへていとはしうおほしならるゝにさすかなることおほかりれいけいてん ときこえしは宮たちもおはせす院かくれさせたまひてのちいよ〱あはれなる 御ありさまをたゝこの大将殿の御心にもてかくされてすくしたまふなるへし御 をとうとの三のきみうちわたりにてはかなうほのめきたまひしなこりのれいの 御心なれはさすかにわすれもはてたまはすわさともゝてなしたまはぬに人の御 心をのみつくしはてたまふへかめるをもこのころのこることなくおほしみたる ゝよのあはれのくさはひには思いてたまふにはしのひかたくてさみたれのそら めつらしくはれたるくもまにわたり給なにはかりの御よそひなくうちやつして 御せんなともなくしのひてなかゝはのほとおはしすくるにさゝやかなるいへの こたちなとよしはめるによくなることをあつまにしらへてかきあはせにきはゝ しくひきなすなり御みゝとまりてかとちかなる所なれはすこしさしいてゝみい れたまへはおほきなるかつらのきのおひかせにまつりのころおほしいてられて
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そこはかとなくけはひおかしきをたゝひとめみ給しやとりなりとみたまふたゝ ならすほとへにけるおほめかしくやとつゝましけれとすきかてにやすらひたま ふおりしもほとときすなきてわたるもよをしきこえかほなれは御くるまをしか へさせてれいのこれみついれ給   おちかへりえそしのはれぬほとゝきすほのかたらひしやとのかきねにしん 殿とおほしきやのにしのつまに人〱ゐたりさき〱もきゝしこゑなれはこわ つくりけしきとりて御せうそこきこゆわかやかなるけしきともしておほめくな るへし   ほとゝきすことゝふこゑはそれなれとあなおほつかなさみたれのそらこと さらたとるとみれはよし〱うへしかきねもとていつるを人しれぬ心にはねた うもあはれにも思けりさもつゝむへきことそかしことわりにもあれはさすかな りかやうのきはにつくしのこせちからうたけなりしはやとまつおほしいついか なるにつけても御心のいとまなくゝるしけなりとし月をへても猶かやうにみし あたりなさけすくしたまはぬにしもなか〱あまたの人のものおもひくさなり
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かのほいのところはおほしやりつるもしるく人めなくしつかにておはするあり さまをみたまふもいとあはれなりまつ女御の御かたにてむかしの御ものかたり なときこえ給に夜ふけにけり廿日の月さしいつるほとにいとゝこたかきかけと もこくらくみえわたりてちかきたちはなのかほりなつかしくにほひて女御の御 けはひねひにたれとあくまてよういありあてにらうたけなりすくれてはなやか なる御をほえこそなかりしかとむつましうなつかしきかたにはおほしたりし物 をなと思いてきこえ給につけてもむかしのことかきつらねおほされてうちなき たまふほとゝきすありつるかきねのにやおなしこゑにうちなくしたひきにける よとおほさるるほともえんなりかしいかにしりてかなとしのひやかにうちすん し給   たち花のかをなつかしみほとゝきすはなちるさとをたつねてそとふいにし へのわすれかたきなくさめにはなをまいり侍ぬへかりけりこよなうこそまきる ゝこともかすそふこともはへりけれおほかたのよにしたかふものなれはむかし かたりもかきくつすへき人すくなうなりゆくをましてつれ〱もまきれなくお
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はさるらんときこえたまふにいとさらなるよなれとものをいとあはれにおほし つゝけたる御けしきのあさからぬも人の御さまからにやおほくあはれそゝひに ける   ひとめなくあれたるやとはたちはなのはなこそのきのつまとなりけれとは かりのたまへるさはいへと人にはいとことなりけりとおほしくらへらるにしお もてにはわさとなくしのひやかにうちふるまひたまひてのそき給へるもめつら しきにそへてよにめなれぬ御さまなれはつらさもわすれぬへしなにやかやとれ いのなつかしくかたらひたまふもおほさぬことにあらさるへしかりにもみたま ふかきりはをしなへてのきはにはあらすさま〱につけていふかひなしとおほ さるゝはなけれはにやにくけなくわれも人もなさけをかはしつゝすくしたまふ なりけりそれをあいなしと思人はとにかくにかはるもことはりのよのさかとお もひなしたまふありつるかきねもさやうにてありさまかはりにたるあたりなり けり
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