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校異源氏物語・花ちるさと
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
Page 387
ひとしれぬ御心つからの物おもはしさはいつとなきことなめれとかくおほかた
ひとしれぬ御心つからの物おもはしさはいつとなきことなめれとかくおほかた
のよにつけてさへわつらはしうおほしみたるることのみまされはもの心ほそく
のよにつけてさへわつらはしうおほしみたるることのみまされはもの心ほそく
世中なへていとはしうおほしならるゝにさすかなることおほかりれいけいてん
世中なへていとはしうおほしならるゝにさすかなることおほかりれいけいてん
ときこえしは宮たちもおはせす院かくれさせたまひてのちいよ〱あはれなる
ときこえしは宮たちもおはせす院かくれさせたまひてのちいよ〱あはれなる
御ありさまをたゝこの大将殿の御心にもてかくされてすくしたまふなるへし御
御ありさまをたゝこの大将殿の御心にもてかくされてすくしたまふなるへし御
をとうとの三のきみうちわたりにてはかなうほのめきたまひしなこりのれいの
をとうとの三のきみうちわたりにてはかなうほのめきたまひしなこりのれいの
御心なれはさすかにわすれもはてたまはすわさともゝてなしたまはぬに人の御
御心なれはさすかにわすれもはてたまはすわさともゝてなしたまはぬに人の御
心をのみつくしはてたまふへかめるをもこのころのこることなくおほしみたる
心をのみつくしはてたまふへかめるをもこのころのこることなくおほしみたる
ゝよのあはれのくさはひには思いてたまふにはしのひかたくてさみたれのそら
ゝよのあはれのくさはひには思いてたまふにはしのひかたくてさみたれのそら
めつらしくはれたるくもまにわたり給なにはかりの御よそひなくうちやつして
めつらしくはれたるくもまにわたり給なにはかりの御よそひなくうちやつして
御せんなともなくしのひてなかゝはのほとおはしすくるにさゝやかなるいへの
御せんなともなくしのひてなかゝはのほとおはしすくるにさゝやかなるいへの
こたちなとよしはめるによくなることをあつまにしらへてかきあはせにきはゝ
こたちなとよしはめるによくなることをあつまにしらへてかきあはせにきはゝ
しくひきなすなり御みゝとまりてかとちかなる所なれはすこしさしいてゝみい
しくひきなすなり御みゝとまりてかとちかなる所なれはすこしさしいてゝみい
れたまへはおほきなるかつらのきのおひかせにまつりのころおほしいてられて
れたまへはおほきなるかつらのきのおひかせにまつりのころおほしいてられて
Page 388
そこはかとなくけはひおかしきをたゝひとめみ給しやとりなりとみたまふたゝ
そこはかとなくけはひおかしきをたゝひとめみ給しやとりなりとみたまふたゝ
ならすほとへにけるおほめかしくやとつゝましけれとすきかてにやすらひたま
ならすほとへにけるおほめかしくやとつゝましけれとすきかてにやすらひたま
ふおりしもほとときすなきてわたるもよをしきこえかほなれは御くるまをしか
ふおりしもほとときすなきてわたるもよをしきこえかほなれは御くるまをしか
へさせてれいのこれみついれ給
へさせてれいのこれみついれ給
おちかへりえそしのはれぬほとゝきすほのかたらひしやとのかきねにしん
おちかへりえそしのはれぬほとゝきすほのかたらひしやとのかきねにしん
殿とおほしきやのにしのつまに人〱ゐたりさき〱もきゝしこゑなれはこわ
殿とおほしきやのにしのつまに人〱ゐたりさき〱もきゝしこゑなれはこわ
つくりけしきとりて御せうそこきこゆわかやかなるけしきともしておほめくな
つくりけしきとりて御せうそこきこゆわかやかなるけしきともしておほめくな
るへし
るへし
ほとゝきすことゝふこゑはそれなれとあなおほつかなさみたれのそらこと
ほとゝきすことゝふこゑはそれなれとあなおほつかなさみたれのそらこと
さらたとるとみれはよし〱うへしかきねもとていつるを人しれぬ心にはねた
さらたとるとみれはよし〱うへしかきねもとていつるを人しれぬ心にはねた
うもあはれにも思けりさもつゝむへきことそかしことわりにもあれはさすかな
うもあはれにも思けりさもつゝむへきことそかしことわりにもあれはさすかな
りかやうのきはにつくしのこせちからうたけなりしはやとまつおほしいついか
りかやうのきはにつくしのこせちからうたけなりしはやとまつおほしいついか
なるにつけても御心のいとまなくゝるしけなりとし月をへても猶かやうにみし
なるにつけても御心のいとまなくゝるしけなりとし月をへても猶かやうにみし
あたりなさけすくしたまはぬにしもなか〱あまたの人のものおもひくさなり
あたりなさけすくしたまはぬにしもなか〱あまたの人のものおもひくさなり
Page 389
かのほいのところはおほしやりつるもしるく人めなくしつかにておはするあり
かのほいのところはおほしやりつるもしるく人めなくしつかにておはするあり
さまをみたまふもいとあはれなりまつ女御の御かたにてむかしの御ものかたり
さまをみたまふもいとあはれなりまつ女御の御かたにてむかしの御ものかたり
なときこえ給に夜ふけにけり廿日の月さしいつるほとにいとゝこたかきかけと
なときこえ給に夜ふけにけり廿日の月さしいつるほとにいとゝこたかきかけと
もこくらくみえわたりてちかきたちはなのかほりなつかしくにほひて女御の御
もこくらくみえわたりてちかきたちはなのかほりなつかしくにほひて女御の御
けはひねひにたれとあくまてよういありあてにらうたけなりすくれてはなやか
けはひねひにたれとあくまてよういありあてにらうたけなりすくれてはなやか
なる御をほえこそなかりしかとむつましうなつかしきかたにはおほしたりし物
なる御をほえこそなかりしかとむつましうなつかしきかたにはおほしたりし物
をなと思いてきこえ給につけてもむかしのことかきつらねおほされてうちなき
をなと思いてきこえ給につけてもむかしのことかきつらねおほされてうちなき
たまふほとゝきすありつるかきねのにやおなしこゑにうちなくしたひきにける
たまふほとゝきすありつるかきねのにやおなしこゑにうちなくしたひきにける
よとおほさるるほともえんなりかしいかにしりてかなとしのひやかにうちすん
よとおほさるるほともえんなりかしいかにしりてかなとしのひやかにうちすん
し給
し給
たち花のかをなつかしみほとゝきすはなちるさとをたつねてそとふいにし
たち花のかをなつかしみほとゝきすはなちるさとをたつねてそとふいにし
へのわすれかたきなくさめにはなをまいり侍ぬへかりけりこよなうこそまきる
へのわすれかたきなくさめにはなをまいり侍ぬへかりけりこよなうこそまきる
ゝこともかすそふこともはへりけれおほかたのよにしたかふものなれはむかし
ゝこともかすそふこともはへりけれおほかたのよにしたかふものなれはむかし
かたりもかきくつすへき人すくなうなりゆくをましてつれ〱もまきれなくお
かたりもかきくつすへき人すくなうなりゆくをましてつれ〱もまきれなくお
Page 390
はさるらんときこえたまふにいとさらなるよなれとものをいとあはれにおほし
はさるらんときこえたまふにいとさらなるよなれとものをいとあはれにおほし
つゝけたる御けしきのあさからぬも人の御さまからにやおほくあはれそゝひに
つゝけたる御けしきのあさからぬも人の御さまからにやおほくあはれそゝひに
ける
ける
ひとめなくあれたるやとはたちはなのはなこそのきのつまとなりけれとは
ひとめなくあれたるやとはたちはなのはなこそのきのつまとなりけれとは
かりのたまへるさはいへと人にはいとことなりけりとおほしくらへらるにしお
かりのたまへるさはいへと人にはいとことなりけりとおほしくらへらるにしお
もてにはわさとなくしのひやかにうちふるまひたまひてのそき給へるもめつら
もてにはわさとなくしのひやかにうちふるまひたまひてのそき給へるもめつら
しきにそへてよにめなれぬ御さまなれはつらさもわすれぬへしなにやかやとれ
しきにそへてよにめなれぬ御さまなれはつらさもわすれぬへしなにやかやとれ
いのなつかしくかたらひたまふもおほさぬことにあらさるへしかりにもみたま
いのなつかしくかたらひたまふもおほさぬことにあらさるへしかりにもみたま
ふかきりはをしなへてのきはにはあらすさま〱につけていふかひなしとおほ
ふかきりはをしなへてのきはにはあらすさま〱につけていふかひなしとおほ
さるゝはなけれはにやにくけなくわれも人もなさけをかはしつゝすくしたまふ
さるゝはなけれはにやにくけなくわれも人もなさけをかはしつゝすくしたまふ
なりけりそれをあいなしと思人はとにかくにかはるもことはりのよのさかとお
なりけりそれをあいなしと思人はとにかくにかはるもことはりのよのさかとお
もひなしたまふありつるかきねもさやうにてありさまかはりにたるあたりなり
もひなしたまふありつるかきねもさやうにてありさまかはりにたるあたりなり
けり
けり