校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・花のえん
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
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きさらきのはつかあまり南殿のさくらの宴せさせ給后春宮の御つほね左右にし
きさらきのはつかあまり南殿のさくらの宴せさせ給后春宮の御つほね左右にし
てまうのほりたまふ弘徽殿の女御中宮のかくておはするを折ふしことにやすか
てまうのほりたまふ弘徽殿の女御中宮のかくておはするを折ふしことにやすか
らすおほせとものみにはえすくし給はてまいり給日いとよくはれて空のけしき
らすおほせとものみにはえすくし給はてまいり給日いとよくはれて空のけしき
鳥のこゑも心ちよけなるにみこたちかむたちめよりはしめてその道のはみなた
鳥のこゑも心ちよけなるにみこたちかむたちめよりはしめてその道のはみなた
むゐむ給はりてふみつくり給ふ宰相中将春といふもし給はれりとの給ふこゑさ
むゐむ給はりてふみつくり給ふ宰相中将春といふもし給はれりとの給ふこゑさ
へれいの人にことなりつきに頭中将人のめうつしもたゝならすおほゆへかめれ
へれいの人にことなりつきに頭中将人のめうつしもたゝならすおほゆへかめれ
といとめやすくもてしつめてこはつかひなともの〱しくすくれたりさての人
といとめやすくもてしつめてこはつかひなともの〱しくすくれたりさての人
〱はみなをくしかちにはなしろめるおほかり地下の人はましてみかと春宮の
〱はみなをくしかちにはなしろめるおほかり地下の人はましてみかと春宮の
御さえかしこくすくれておはしますかゝるかたにやむことなき人おほくものし
御さえかしこくすくれておはしますかゝるかたにやむことなき人おほくものし
給ふころなるにはつかしくはる〱とくもりなきにはにたちいつるほとはした
給ふころなるにはつかしくはる〱とくもりなきにはにたちいつるほとはした
なくてやすき事なれとくるしけなりとしおいたるはかせとものなりあやしくや
なくてやすき事なれとくるしけなりとしおいたるはかせとものなりあやしくや
つれてれいなれたるもあはれにさま〱御らんするなむおかしかりけるかくと
つれてれいなれたるもあはれにさま〱御らんするなむおかしかりけるかくと
もなとはさらにもいはすととのへさせ給へりやう〱入日になるほと春の鴬さ
もなとはさらにもいはすととのへさせ給へりやう〱入日になるほと春の鴬さ
へつるといふまひいとおもしろくみゆるに源氏の御もみちの賀のおりおほしい
へつるといふまひいとおもしろくみゆるに源氏の御もみちの賀のおりおほしい
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てられて春宮かさしたまはせてせちにせめのたまはするにのかれかたくてたち
てられて春宮かさしたまはせてせちにせめのたまはするにのかれかたくてたち
てのとかにそてかへすところをひとをれけしきはかりまひ給へるににるへきも
てのとかにそてかへすところをひとをれけしきはかりまひ給へるににるへきも
のなくみゆ左のおとゝうらめしさもわすれて涙をとし給ふ頭中将いつらおそし
のなくみゆ左のおとゝうらめしさもわすれて涙をとし給ふ頭中将いつらおそし
とあれは柳花園といふまひをこれはいますこしすくしてかゝる事もやと心つか
とあれは柳花園といふまひをこれはいますこしすくしてかゝる事もやと心つか
ひやしけむいとおもしろけれは御そ給はりていとめつらしき事に人をもへりか
ひやしけむいとおもしろけれは御そ給はりていとめつらしき事に人をもへりか
むたちめみなみたれてまひ給へと夜に入てはことにけちめもみえすふみなとか
むたちめみなみたれてまひ給へと夜に入てはことにけちめもみえすふみなとか
うするにも源氏の君の御をはかうしもえよみやらすくことにすしのゝしるはか
うするにも源氏の君の御をはかうしもえよみやらすくことにすしのゝしるはか
せともの心にもいみしうおもへりかうやうのおりにもまつこの君をひかりにし
せともの心にもいみしうおもへりかうやうのおりにもまつこの君をひかりにし
たまへれはみかともいかてかをろかにおほされん中宮御めのとまるにつけて春
たまへれはみかともいかてかをろかにおほされん中宮御めのとまるにつけて春
宮の女御のあなかちににくみ給らむもあやしうわかかうおもふも心うしとそみ
宮の女御のあなかちににくみ給らむもあやしうわかかうおもふも心うしとそみ
つからおほしかへされける
つからおほしかへされける
おほかたに花のすかたをみましかは露も心のおかれましやは御心のうちな
おほかたに花のすかたをみましかは露も心のおかれましやは御心のうちな
りけんこといかてもりにけむ夜いたうふけてなむことはてける上達部をのをの
りけんこといかてもりにけむ夜いたうふけてなむことはてける上達部をのをの
あかれ后春宮かへらせ給ひぬれはのとやかになりぬるに月いとあかうさしいて
あかれ后春宮かへらせ給ひぬれはのとやかになりぬるに月いとあかうさしいて
Page 271
ゝおかしきを源氏の君ゑい心ちにみすくしかたくおほえ給ひけれはうへの人
ゝおかしきを源氏の君ゑい心ちにみすくしかたくおほえ給ひけれはうへの人
〱もうちやすみてかやうに思ひかけぬほとにもしさりぬへきひまもやあると
〱もうちやすみてかやうに思ひかけぬほとにもしさりぬへきひまもやあると
ふちつほわたりをわりなふしのひてうかゝひありけとかたらふへきとくちもさ
ふちつほわたりをわりなふしのひてうかゝひありけとかたらふへきとくちもさ
してけれはうちなけきてなをあらしに弘徽殿のほそとのにたちより給へれは三
してけれはうちなけきてなをあらしに弘徽殿のほそとのにたちより給へれは三
のくちあきたり女御はうへの御つほねにやかてまうのほり給にけれは人すくな
のくちあきたり女御はうへの御つほねにやかてまうのほり給にけれは人すくな
ゝるけはひなりおくのくるゝともあきて人をともせすかやうにて世中のあやま
ゝるけはひなりおくのくるゝともあきて人をともせすかやうにて世中のあやま
ちはするそかしと思ひてやをらのほりてのそき給人はみなねたるへしいとわか
ちはするそかしと思ひてやをらのほりてのそき給人はみなねたるへしいとわか
うおかしけなるこゑのなへての人とはきこえぬおほろ月夜ににるものそなきと
うおかしけなるこゑのなへての人とはきこえぬおほろ月夜ににるものそなきと
うちすしてこなたさまにはくるものかいとうれしくてふと袖をとらへたまふ女
うちすしてこなたさまにはくるものかいとうれしくてふと袖をとらへたまふ女
おそろしと思へるけしきにてあなむくつけこはたそとの給へとなにかうとまし
おそろしと思へるけしきにてあなむくつけこはたそとの給へとなにかうとまし
きとて
きとて
ふかき夜のあはれをしるも入月のおほろけならぬ契とそおもふとてやをら
ふかき夜のあはれをしるも入月のおほろけならぬ契とそおもふとてやをら
いたきおろしてとはをしたてつあさましきにあきれたるさまいとなつかしうお
いたきおろしてとはをしたてつあさましきにあきれたるさまいとなつかしうお
かしけなりわなゝく〱こゝに人とのたまへとまろはみな人にゆるされたれは
かしけなりわなゝく〱こゝに人とのたまへとまろはみな人にゆるされたれは
Page 272
めしよせたりともなむてう事かあらんたゝしのひてこそとの給ふこゑにこのき
めしよせたりともなむてう事かあらんたゝしのひてこそとの給ふこゑにこのき
みなりけりときゝさためていささかなくさめけりわひしとおもへるものからな
みなりけりときゝさためていささかなくさめけりわひしとおもへるものからな
さけなくこわ〱しうはみえしとおもへりゑい心ちやれいならさりけむゆるさ
さけなくこわ〱しうはみえしとおもへりゑい心ちやれいならさりけむゆるさ
ん事はくちおしきに女もわかうたをやきてつよき心もしらぬなるへしらうたし
ん事はくちおしきに女もわかうたをやきてつよき心もしらぬなるへしらうたし
とみ給ふにほとなくあけゆけは心あはたゝし女はましてさま〱におもひみた
とみ給ふにほとなくあけゆけは心あはたゝし女はましてさま〱におもひみた
れたるけしきなり猶なのりしたまへいかてきこゆへきかうてやみなむとはさり
れたるけしきなり猶なのりしたまへいかてきこゆへきかうてやみなむとはさり
ともおほされしとの給へは
ともおほされしとの給へは
うき身世にやかてきえなはたつねても草のはらをはとはしとやおもふとい
うき身世にやかてきえなはたつねても草のはらをはとはしとやおもふとい
ふさまえむになまめきたりことはりやきこえたかへたるもしかなとて
ふさまえむになまめきたりことはりやきこえたかへたるもしかなとて
いつれそと露のやとりをわかむまにこさゝかはらにかせもこそふけわつら
いつれそと露のやとりをわかむまにこさゝかはらにかせもこそふけわつら
はしくおほす事ならすはなにかつゝまむもしすかい給ふかともいひあへす人
はしくおほす事ならすはなにかつゝまむもしすかい給ふかともいひあへす人
〱おきさはきうへの御つほねにまひりちかふけしきともしけくまよへはいと
〱おきさはきうへの御つほねにまひりちかふけしきともしけくまよへはいと
はりなくてあふきはかりをしるしにとりかへていて給ひぬきりつほには人〱
はりなくてあふきはかりをしるしにとりかへていて給ひぬきりつほには人〱
おほくさふらひておとろきたるもあれはかゝるをさもたゆみなき御しのひあり
おほくさふらひておとろきたるもあれはかゝるをさもたゆみなき御しのひあり
Page 273
きかなとつきしろひつゝそらねをそしあへるいり給ひてふし給へれとねいられ
きかなとつきしろひつゝそらねをそしあへるいり給ひてふし給へれとねいられ
すおかしかりつる人のさまかな女御の御おとうとたちにこそはあらめまた世に
すおかしかりつる人のさまかな女御の御おとうとたちにこそはあらめまた世に
なれぬは五六の君ならんかしそちの宮の北の方頭中将のすさめぬ四の君なとこ
なれぬは五六の君ならんかしそちの宮の北の方頭中将のすさめぬ四の君なとこ
そよしときゝしかなか〱それならましかはいますこしおかしからまし六は春
そよしときゝしかなか〱それならましかはいますこしおかしからまし六は春
宮にたてまつらんと心さし給へるをいとおしうもあるへいかなわつらはしうた
宮にたてまつらんと心さし給へるをいとおしうもあるへいかなわつらはしうた
つねむ程もまきらはしさてたえなむとはおもはぬけしきなりつるをいかなれは
つねむ程もまきらはしさてたえなむとはおもはぬけしきなりつるをいかなれは
ことかよはすへきさまをゝしへすなりぬらんなとよろつにおもふも心のとまる
ことかよはすへきさまをゝしへすなりぬらんなとよろつにおもふも心のとまる
なるへしかうやうなるにつけてもまつかのわたりのありさまのこよなうおくま
なるへしかうやうなるにつけてもまつかのわたりのありさまのこよなうおくま
りたるはやとありかたふおもひくらへられ給ふその日は後宴の事ありてまきれ
りたるはやとありかたふおもひくらへられ給ふその日は後宴の事ありてまきれ
くらしたまひつさうのことつかうまつり給きのふの事よりもなまめかしうおも
くらしたまひつさうのことつかうまつり給きのふの事よりもなまめかしうおも
しろしふちつほはあかつきにまうのほり給にけりかのありあけいてやしぬらん
しろしふちつほはあかつきにまうのほり給にけりかのありあけいてやしぬらん
と心も空にておもひいたらぬくまなきよしきよこれみつをつけてうかゝはせ給
と心も空にておもひいたらぬくまなきよしきよこれみつをつけてうかゝはせ給
けれはおまへよりまかて給ひけるほとにたゝいま北のちんよりかねてよりかく
けれはおまへよりまかて給ひけるほとにたゝいま北のちんよりかねてよりかく
れたちて侍つる車ともまかりいつる御かた〱のさと人侍へる中に四位の少将
れたちて侍つる車ともまかりいつる御かた〱のさと人侍へる中に四位の少将
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右中弁なといそきいててをくりし侍へるや弘徽殿の御あかれならんとみ給へつ
右中弁なといそきいててをくりし侍へるや弘徽殿の御あかれならんとみ給へつ
るけしうはあらぬけはひともしるくてくるまみつはかり侍つときこゆるにもむ
るけしうはあらぬけはひともしるくてくるまみつはかり侍つときこゆるにもむ
ねうちつふれ給ふいかにしていつれとしらむちゝ おとゝ なときゝ てこと〱し
ねうちつふれ給ふいかにしていつれとしらむちゝ おとゝ なときゝ てこと〱し
うもてなさんもいかにそやまた人のありさまよくみさためぬほとはわつらはし
うもてなさんもいかにそやまた人のありさまよくみさためぬほとはわつらはし
かるへしさりとてしらてあらんはたいとくちおしかるへけれはいかにせましと
かるへしさりとてしらてあらんはたいとくちおしかるへけれはいかにせましと
おほしわつらひてつく〱となかめふし給へりひめ君いかにつれ〱ならんひ
おほしわつらひてつく〱となかめふし給へりひめ君いかにつれ〱ならんひ
ころになれはくしてやあらむとらうたくおほしやるかのしるしのあふきはさく
ころになれはくしてやあらむとらうたくおほしやるかのしるしのあふきはさく
らかさねにてこきかたにかすめる月をかきて水にうつしたる心はへめなれたる
らかさねにてこきかたにかすめる月をかきて水にうつしたる心はへめなれたる
事なれとゆへなつかしうもてならしたりくさのはらをはといひしさまのみ心に
事なれとゆへなつかしうもてならしたりくさのはらをはといひしさまのみ心に
かゝり給へは
かゝり給へは
世にしらぬ心ちこそすれ有明の月のゆくゑをそらにまかへてとかきつけ給
世にしらぬ心ちこそすれ有明の月のゆくゑをそらにまかへてとかきつけ給
ひてをき給へりおほいとのにもひさしうなりにけるとおほせとわか君も心くる
ひてをき給へりおほいとのにもひさしうなりにけるとおほせとわか君も心くる
しけれはこしらへむとおほして二条院へおはしぬみるまゝにいとうつくしけに
しけれはこしらへむとおほして二条院へおはしぬみるまゝにいとうつくしけに
おひなりてあいきやうつきらう〱しき心はえいとことなりあかぬ所なうわか
おひなりてあいきやうつきらう〱しき心はえいとことなりあかぬ所なうわか
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御心のまゝにをしへなさんとおほすにかなひぬへしおとこの御をしへなれはす
御心のまゝにをしへなさんとおほすにかなひぬへしおとこの御をしへなれはす
こし人なれたる事やましらむとおもふこそうしろめたけれ日ころの御ものかた
こし人なれたる事やましらむとおもふこそうしろめたけれ日ころの御ものかた
り御ことなとをしへくらしていて給ふをれいのとくちおしうおほせといまはい
り御ことなとをしへくらしていて給ふをれいのとくちおしうおほせといまはい
とようならはされてわりなくはしたひまつはさすおほいとのにはれいのふとも
とようならはされてわりなくはしたひまつはさすおほいとのにはれいのふとも
たいめんしたまはすつれ〱とよろつおほしめくらされてさうの御ことまさく
たいめんしたまはすつれ〱とよろつおほしめくらされてさうの御ことまさく
りてやはらかにぬる夜はなくてとうたひ給おとゝわたり給ひて一日のけふあり
りてやはらかにぬる夜はなくてとうたひ給おとゝわたり給ひて一日のけふあり
し事きこえ給ふこゝらのよはひにてめいわうの御代四代をなんみ侍ぬれとこの
し事きこえ給ふこゝらのよはひにてめいわうの御代四代をなんみ侍ぬれとこの
たひのやうにふみともきやうさくにまひかくものゝねともととのほりてよはひ
たひのやうにふみともきやうさくにまひかくものゝねともととのほりてよはひ
のふる事なむ侍らさりつる道〱のものの上手ともおほかるころをひくはしう
のふる事なむ侍らさりつる道〱のものの上手ともおほかるころをひくはしう
しろしめしとゝのへさせ給へるけなりおきなもほとほとまひいてぬへき心ちな
しろしめしとゝのへさせ給へるけなりおきなもほとほとまひいてぬへき心ちな
んし侍しときこえ給へはことにとゝのへおこなふ事も侍らすたゝおほやけ事に
んし侍しときこえ給へはことにとゝのへおこなふ事も侍らすたゝおほやけ事に
そしうなるものゝしともをこゝかしこにたつね侍しなりよろつのことよりは柳
そしうなるものゝしともをこゝかしこにたつね侍しなりよろつのことよりは柳
花園まことにこうたいのれいともなりぬへくみたまへしにましてさかゆくはる
花園まことにこうたいのれいともなりぬへくみたまへしにましてさかゆくはる
にたちいてさせ給へましかは世のめんほくにや侍らましときこえ給ふ弁中将な
にたちいてさせ給へましかは世のめんほくにや侍らましときこえ給ふ弁中将な
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とまいりあひてかうらむにせなかをしつゝとり〱にもののねともしらへあは
とまいりあひてかうらむにせなかをしつゝとり〱にもののねともしらへあは
せてあそひ給ふいとおもしろしかのありあけの君ははかなかりし夢をおほしい
せてあそひ給ふいとおもしろしかのありあけの君ははかなかりし夢をおほしい
てゝいとものなけかしうなかめ給ふ春宮には卯月はかりとおほしさためたれは
てゝいとものなけかしうなかめ給ふ春宮には卯月はかりとおほしさためたれは
いとわりなうおほしみたれたるをおとこもたつね給はむにあとはかなくはあら
いとわりなうおほしみたれたるをおとこもたつね給はむにあとはかなくはあら
ねといつれともしらてことにゆるし給はぬあたりにかかつらはむも人わるくお
ねといつれともしらてことにゆるし給はぬあたりにかかつらはむも人わるくお
もひわつらひ給ふにやよひの廿余日右大殿のゆみのけちにかむたちめみこたち
もひわつらひ給ふにやよひの廿余日右大殿のゆみのけちにかむたちめみこたち
おほくつとへ給てやかてふちの宴し給ふ花さかりはすきにたるをほかのちりな
おほくつとへ給てやかてふちの宴し給ふ花さかりはすきにたるをほかのちりな
むとやをしへられたりけむをくれてさくさくらふた木そいとおもしろきあたら
むとやをしへられたりけむをくれてさくさくらふた木そいとおもしろきあたら
しうつくり給へる殿を宮たちの御もきの日みかきしつらはれたりはなはなとも
しうつくり給へる殿を宮たちの御もきの日みかきしつらはれたりはなはなとも
のし給殿のやうにてなに事もいまめかしうもてなし給へり源氏の君にも一日う
のし給殿のやうにてなに事もいまめかしうもてなし給へり源氏の君にも一日う
ちにて御たいめんのついてにきこえ給しかとおはせねはくちおしうものゝはえ
ちにて御たいめんのついてにきこえ給しかとおはせねはくちおしうものゝはえ
なしとおほして御この四位の少将をたてまつりたまふ
なしとおほして御この四位の少将をたてまつりたまふ
わかやとの花しなへての色ならはなにかはさらに君をまたまし内におはす
わかやとの花しなへての色ならはなにかはさらに君をまたまし内におはす
るほとにてうへにそうし給ふしたりかほなりやとわらはせ給てわさとあめるを
るほとにてうへにそうし給ふしたりかほなりやとわらはせ給てわさとあめるを
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はやうものせよかし女みこたちなともおいいつる所なれはなへてのさまには思
はやうものせよかし女みこたちなともおいいつる所なれはなへてのさまには思
ましきをなとの給はす御よそひなとひきつくろひ給ていたうくるゝほとにまた
ましきをなとの給はす御よそひなとひきつくろひ給ていたうくるゝほとにまた
れてそわたり給さくらのからのきの御なをしえひそめのしたかさねしりいとな
れてそわたり給さくらのからのきの御なをしえひそめのしたかさねしりいとな
かくひきてみな人はうへのきぬなるにあされたるおほきみすかたのなまめきた
かくひきてみな人はうへのきぬなるにあされたるおほきみすかたのなまめきた
るにていつかれいりたまへる御さまけにいとことなり花のにほひもけおされて
るにていつかれいりたまへる御さまけにいとことなり花のにほひもけおされて
なか〱ことさましになむあそひなといとおもしろうし給て夜すこしふけゆく
なか〱ことさましになむあそひなといとおもしろうし給て夜すこしふけゆく
程に源氏のきみいたくゑいなやめるさまにもてなし給てまきれたち給ひぬしむ
程に源氏のきみいたくゑいなやめるさまにもてなし給てまきれたち給ひぬしむ
殿に女一宮女三宮のおはしますひむかしのとくちにおはしてよりゐたまへりふ
殿に女一宮女三宮のおはしますひむかしのとくちにおはしてよりゐたまへりふ
ちはこなたのつまにあたりてあれはみかうしともあけわたして人〱いてゐた
ちはこなたのつまにあたりてあれはみかうしともあけわたして人〱いてゐた
りそてくちなとたうかのおりおほえてことさらめきもていてたるをふさはしか
りそてくちなとたうかのおりおほえてことさらめきもていてたるをふさはしか
らすとまつふちつほわたりおほしいてらるなやましきにいといたうしひられて
らすとまつふちつほわたりおほしいてらるなやましきにいといたうしひられて
わひにて侍りかしこけれとこのおまへにこそはかけにもかくさせ給はめとてつ
わひにて侍りかしこけれとこのおまへにこそはかけにもかくさせ給はめとてつ
まとのみすをひきゝたまへはあなわつらはしよからぬ人こそやむことなきゆか
まとのみすをひきゝたまへはあなわつらはしよからぬ人こそやむことなきゆか
りはかこち侍なれといふけしきをみ給ふにおも〱しうはあらねとをしなへて
りはかこち侍なれといふけしきをみ給ふにおも〱しうはあらねとをしなへて
Page 278
のわかうとともにはあらすあてにおかしきけはひしるしそらたきものいとけふ
のわかうとともにはあらすあてにおかしきけはひしるしそらたきものいとけふ
たうくゆりてきぬのをとなひいとはなやかにふるまひなして心にくゝをくまり
たうくゆりてきぬのをとなひいとはなやかにふるまひなして心にくゝをくまり
たるけはひはたちをくれいまめかしき事をこのみたるわたりにてやむことなき
たるけはひはたちをくれいまめかしき事をこのみたるわたりにてやむことなき
御方〱ものみ給とてこのとくちはしめたまへるなるへしさしもあるましき事
御方〱ものみ給とてこのとくちはしめたまへるなるへしさしもあるましき事
なれとさすかにおかしうおもほされていつれならむとむねうちつふれてあふき
なれとさすかにおかしうおもほされていつれならむとむねうちつふれてあふき
をとられてからきめをみるとうちおほとけたるこゑにいひなしてよりゐたまへ
をとられてからきめをみるとうちおほとけたるこゑにいひなしてよりゐたまへ
りあやしくもさまかへけるこまうとかなといらふるは心しらぬにやあらんいら
りあやしくもさまかへけるこまうとかなといらふるは心しらぬにやあらんいら
へはせてたゝとき〱うちなけくけはひするかたによりかゝりてき丁こしに手
へはせてたゝとき〱うちなけくけはひするかたによりかゝりてき丁こしに手
をとらへて
をとらへて
あつさゆみいるさのやまにまとふ哉ほのみし月のかけやみゆるとなにゆへ
あつさゆみいるさのやまにまとふ哉ほのみし月のかけやみゆるとなにゆへ
かとをしあてにのたまふをえしのはぬなるへし
かとをしあてにのたまふをえしのはぬなるへし
心いるかたならませはゆみはりの月なき空にまよはましやはといふこゑた
心いるかたならませはゆみはりの月なき空にまよはましやはといふこゑた
ゝ それなりいとうれしきものから
ゝ それなりいとうれしきものから