校異源氏物語 powerd by Gatsby CETEIcean
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校異源氏物語・うつせみ
池田亀鑑
Transcription
Misa Nakamura
Transcription
Michi Kigoshi
Transcription
Takashi Tamura
TEI Encoding
Satoru Nakamura
Advisor
Kiyonori Nagasaki
デジタル源氏物語
2020年08月22日
CC0 1.0 Universal (CC0 1.0) Public Domain Dedication
池田亀鑑
校異源氏物語
中央公論社
旧字は
史料編纂所データベース異体字同定一覧
を用いて新字に変換した。
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ねられたまはぬまゝには我はかく人ににくまれてもならはぬをこよひなむはし
ねられたまはぬまゝには我はかく人ににくまれてもならはぬをこよひなむはし
めてうしとよをおもひしりぬれははつかしくてなからふましうこそおもひなり
めてうしとよをおもひしりぬれははつかしくてなからふましうこそおもひなり
ぬれなとのたまへはなみたをさへこほしてふしたりいとらうたしとおほすてさ
ぬれなとのたまへはなみたをさへこほしてふしたりいとらうたしとおほすてさ
くりのほそくちいさきほとかみのいとなかゝらさりしけはひのさまかよひたる
くりのほそくちいさきほとかみのいとなかゝらさりしけはひのさまかよひたる
もおもひなしにやあはれなりあなかちにかゝつらひたとりよらむも人わろかる
もおもひなしにやあはれなりあなかちにかゝつらひたとりよらむも人わろかる
へくまめやかにめさましとおほしあかしつゝれいのやうにものたまひまつはさ
へくまめやかにめさましとおほしあかしつゝれいのやうにものたまひまつはさ
す夜ふかういてたまへはこのこはいといとをしくさう〱しと思ふ女もなみ
す夜ふかういてたまへはこのこはいといとをしくさう〱しと思ふ女もなみ
〱ならすかたはらいたしと思ふに御せうそこもたえてなしおほしこりにける
〱ならすかたはらいたしと思ふに御せうそこもたえてなしおほしこりにける
と思にもやかてつれなくてやみ給なましかはうからまししゐていとをしき御ふ
と思にもやかてつれなくてやみ給なましかはうからまししゐていとをしき御ふ
るまひのたえさらむもうたてあるへしよきほとにかくてとちめてんとおもふも
るまひのたえさらむもうたてあるへしよきほとにかくてとちめてんとおもふも
のからたゝならすなかめかちなりきみは心つきなしとおほしなからかくてはえ
のからたゝならすなかめかちなりきみは心つきなしとおほしなからかくてはえ
やむましう御こゝろにかゝり人わろくおもほしわひてこきみにいとつらうもう
やむましう御こゝろにかゝり人わろくおもほしわひてこきみにいとつらうもう
れたうもおほゆるにしゐておもひかへせと心にしもしたかはすくるしきをさり
れたうもおほゆるにしゐておもひかへせと心にしもしたかはすくるしきをさり
ぬへきおりみてたいめむすへくたはかれとのたまひわたれはわつらはしけれと
ぬへきおりみてたいめむすへくたはかれとのたまひわたれはわつらはしけれと
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かゝるかたにてものたまひまつはすはうれしうおほえけりおさなき心地にいか
かゝるかたにてものたまひまつはすはうれしうおほえけりおさなき心地にいか
ならんおりとまちわたるにきのかみくにゝくたりなとして女とちのとやかなる
ならんおりとまちわたるにきのかみくにゝくたりなとして女とちのとやかなる
ゆふやみのみちたと〱しけなるまきれにわかくるまにてゐてたてまつるこの
ゆふやみのみちたと〱しけなるまきれにわかくるまにてゐてたてまつるこの
こもおさなきをいかならむとおほせとさのみもえおほしのとむましけれはさり
こもおさなきをいかならむとおほせとさのみもえおほしのとむましけれはさり
けなきすかたにてかとなとさゝぬさきにといそきおはす人みぬかたよりひきい
けなきすかたにてかとなとさゝぬさきにといそきおはす人みぬかたよりひきい
れておろしたてまつるわらはなれはとのゐ人なともことにみいれついせうせす
れておろしたてまつるわらはなれはとのゐ人なともことにみいれついせうせす
心やすしひむかしのつまとにたてたてまつりてわれはみなみのすみのまよりか
心やすしひむかしのつまとにたてたてまつりてわれはみなみのすみのまよりか
うしたゝきのゝしりていりぬこたちあらはなりといふなりなそかうあつきにこ
うしたゝきのゝしりていりぬこたちあらはなりといふなりなそかうあつきにこ
のかうしはおろされたるととへはひるよりにしの御かたのわたらせ給てこうた
のかうしはおろされたるととへはひるよりにしの御かたのわたらせ給てこうた
せたまふといふさてむかひゐたらむをみはやとおもひてやをらあゆみいてゝす
せたまふといふさてむかひゐたらむをみはやとおもひてやをらあゆみいてゝす
たれのはさまにいり給ぬこのいりつるかうしはまたさゝねはひまみゆるにより
たれのはさまにいり給ぬこのいりつるかうしはまたさゝねはひまみゆるにより
てにしさまにみとをし給へはこのきはにたてたるひやう風はしのかたをしたゝ
てにしさまにみとをし給へはこのきはにたてたるひやう風はしのかたをしたゝ
まれたるにまきるへき几帳なともあつけれはにやうちかけていとよくみいれら
まれたるにまきるへき几帳なともあつけれはにやうちかけていとよくみいれら
る火ちかふともしたりもやのなかはしらにそはめる人やわか心かくるとまつめ
る火ちかふともしたりもやのなかはしらにそはめる人やわか心かくるとまつめ
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とゝめたまへはこきあやのひとへかさねなめりなにゝかあらむうへにきてかし
とゝめたまへはこきあやのひとへかさねなめりなにゝかあらむうへにきてかし
らつきほそやかにちいさき人のものけなきすかたそしたるかほなとはさしむか
らつきほそやかにちいさき人のものけなきすかたそしたるかほなとはさしむか
ひたらむ人なとにもわさとみゆましうもてなしたりてつきやせ〱にていたう
ひたらむ人なとにもわさとみゆましうもてなしたりてつきやせ〱にていたう
ひきかくしためりいまひとりはひむかしむきにてのこる所なくみゆしろきうす
ひきかくしためりいまひとりはひむかしむきにてのこる所なくみゆしろきうす
物のひとへかさね二あひのこうちきたつものないかしろにきなしてくれなゐの
物のひとへかさね二あひのこうちきたつものないかしろにきなしてくれなゐの
こしひきゆへるきはまてむねあらはにはうそくなるもてなしなりいとしろうお
こしひきゆへるきはまてむねあらはにはうそくなるもてなしなりいとしろうお
かしけにつふ〱とこゑてそゝろかなる人の頭つきひたいつきものあさやかに
かしけにつふ〱とこゑてそゝろかなる人の頭つきひたいつきものあさやかに
まみくちつきいとあひきやうつきはなやかなるかたちなりかみはいとふさやか
まみくちつきいとあひきやうつきはなやかなるかたちなりかみはいとふさやか
にてなかくはあらねとさかりはかたのほときよけにすへていとねちけたる所な
にてなかくはあらねとさかりはかたのほときよけにすへていとねちけたる所な
くおかしけなる人とみえたりむへこそおやのよになくは思らめとおかしくみ給
くおかしけなる人とみえたりむへこそおやのよになくは思らめとおかしくみ給
心ちそなをしつかなるけをそへはやとふとみゆるかとなきにはあるましこうち
心ちそなをしつかなるけをそへはやとふとみゆるかとなきにはあるましこうち
はてゝけちさすわたりこゝろとけにみえてきは〱とさうとけはおくの人はい
はてゝけちさすわたりこゝろとけにみえてきは〱とさうとけはおくの人はい
としつかにのとめてまち給へやそこは持にこそあらめこのわたりのこうをこそ
としつかにのとめてまち給へやそこは持にこそあらめこのわたりのこうをこそ
なといへといてこのたひはまけにけりすみの所いて〱とおよひをかゝめてと
なといへといてこのたひはまけにけりすみの所いて〱とおよひをかゝめてと
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をはたみそよそなとかさふるさまいよのゆけたもたと〱しかるましうみゆす
をはたみそよそなとかさふるさまいよのゆけたもたと〱しかるましうみゆす
こししなをくれたりたとしへなく〱ちおほひてさやかにもみせねとめをしつけ
こししなをくれたりたとしへなく〱ちおほひてさやかにもみせねとめをしつけ
たまへれはをのつからそはめもみゆめすこしはれたる心ちしてはななともあさ
たまへれはをのつからそはめもみゆめすこしはれたる心ちしてはななともあさ
やかなるところなふねひれてにほはしきところもみえすいひたつれはわろきに
やかなるところなふねひれてにほはしきところもみえすいひたつれはわろきに
よれるかたちをいといたうもてつけてこのまされる人よりは心あらむとめとゝ
よれるかたちをいといたうもてつけてこのまされる人よりは心あらむとめとゝ
めつへきさましたりにきわゝしうあひきやうつきおかしけなるをいよ〱ほこ
めつへきさましたりにきわゝしうあひきやうつきおかしけなるをいよ〱ほこ
りかにうちとけてわらひなとそほるれはにほひおほくみえてさるかたにいとお
りかにうちとけてわらひなとそほるれはにほひおほくみえてさるかたにいとお
かしき人さまなりあはつけしとはおほしなからまめならぬ御こゝろはこれもえ
かしき人さまなりあはつけしとはおほしなからまめならぬ御こゝろはこれもえ
おほしはなつましかりけりみたまふかきりの人はうちとけたる世なくひきつく
おほしはなつましかりけりみたまふかきりの人はうちとけたる世なくひきつく
ろひそはめたるうはへをのみこそみ給へかくうちとけたる人のありさまかいま
ろひそはめたるうはへをのみこそみ給へかくうちとけたる人のありさまかいま
みなとはまたし給はさりつることなれはなに心もなうさやかなるはいとおしな
みなとはまたし給はさりつることなれはなに心もなうさやかなるはいとおしな
からひさしうみたまはまほしきにこきみいてくる心ちすれはやをらいて給ぬわ
からひさしうみたまはまほしきにこきみいてくる心ちすれはやをらいて給ぬわ
たとのゝとくちによりゐたまへりいとかたしけなしとおもひてれいならぬ人侍
たとのゝとくちによりゐたまへりいとかたしけなしとおもひてれいならぬ人侍
てえちかふもより侍らすさてこよひもやかへしてんとするいとあさましうから
てえちかふもより侍らすさてこよひもやかへしてんとするいとあさましうから
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うこそあへけれとのたまへはなとてかあなたにかへり侍りなはたはかり侍なん
うこそあへけれとのたまへはなとてかあなたにかへり侍りなはたはかり侍なん
ときこゆさもなひかしつへきけしきにこそはあらめわらはなれとものゝこゝろ
ときこゆさもなひかしつへきけしきにこそはあらめわらはなれとものゝこゝろ
はへ人のけしきみつへくしつまれるをとおほすなりけり五うちはてつるにやあ
はへ人のけしきみつへくしつまれるをとおほすなりけり五うちはてつるにやあ
らむうちそよめく心ちしてひと〱あかるゝけはひなとす也わか君はいつくに
らむうちそよめく心ちしてひと〱あかるゝけはひなとす也わか君はいつくに
おはしますならむこのみかうしはさしてんとてならすなりしつまりぬなりいり
おはしますならむこのみかうしはさしてんとてならすなりしつまりぬなりいり
てさらはたはかれとの給このこもいもうとの御こゝろはたはむところなくまめ
てさらはたはかれとの給このこもいもうとの御こゝろはたはむところなくまめ
たちたれはいひあはせむかたなくて人すくなゝらんおりにいれたてまつらんと
たちたれはいひあはせむかたなくて人すくなゝらんおりにいれたてまつらんと
思なりけりきのかみのいもうともこなたにあるか我にかいまみせさせよとのた
思なりけりきのかみのいもうともこなたにあるか我にかいまみせさせよとのた
まへといかてかさは侍らんかうしには几帳そへて侍ときこゆさかしされともお
まへといかてかさは侍らんかうしには几帳そへて侍ときこゆさかしされともお
かしくおほせとみつとはしらせしいとおしとおほして夜ふくることの心もとな
かしくおほせとみつとはしらせしいとおしとおほして夜ふくることの心もとな
さをの給こたみはつまとをたゝきているみな人〱しつまりねにけりこのさう
さをの給こたみはつまとをたゝきているみな人〱しつまりねにけりこのさう
しくちにまろはねたらむかせふきとをせとてたゝみひろけてふすこたちひむか
しくちにまろはねたらむかせふきとをせとてたゝみひろけてふすこたちひむか
しのひさしにいとあまたねたるへしとはなちつるはらはへもそなたに入てふし
しのひさしにいとあまたねたるへしとはなちつるはらはへもそなたに入てふし
ぬれはとはかりそらねして火あかきかたにひやう風をひろけてかけほのかなる
ぬれはとはかりそらねして火あかきかたにひやう風をひろけてかけほのかなる
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にやをら入たてまつるいかにそおこかましき事もこそとおほすにいとつゝまし
にやをら入たてまつるいかにそおこかましき事もこそとおほすにいとつゝまし
けれとみちひくまゝにもやの木丁のかたひらひきあけていとやをらいり給とす
けれとみちひくまゝにもやの木丁のかたひらひきあけていとやをらいり給とす
れとみなしつまれるよの御そのけはひやはらかなるしもいとしるかりけり女は
れとみなしつまれるよの御そのけはひやはらかなるしもいとしるかりけり女は
さこそわすれ給をうれしきにおもひなせとあやしくゆめのやうなることをこゝ
さこそわすれ給をうれしきにおもひなせとあやしくゆめのやうなることをこゝ
ろにはなるゝおりなきころにて心とけたるいたにねられすなむひるはなかめ夜
ろにはなるゝおりなきころにて心とけたるいたにねられすなむひるはなかめ夜
はねさめかちなれは春ならぬこのめもいとなくなけかしきに五うちつる君こよ
はねさめかちなれは春ならぬこのめもいとなくなけかしきに五うちつる君こよ
ひはこなたにといまめかしくうちかたらひてねにけりわかき人はなにこゝろな
ひはこなたにといまめかしくうちかたらひてねにけりわかき人はなにこゝろな
くいとようまとろみたるへしかゝるけはひのいとかうはしくうちにほふにかほ
くいとようまとろみたるへしかゝるけはひのいとかうはしくうちにほふにかほ
をもたけたるにひとへうちかけたる几帳のすきまにくらけれとうちみしろきよ
をもたけたるにひとへうちかけたる几帳のすきまにくらけれとうちみしろきよ
るけはひいとしるしあさましくおほえてともかくも思わかれすやをらおきいて
るけはひいとしるしあさましくおほえてともかくも思わかれすやをらおきいて
ゝすゝしなるひとへをひとつきてすへりいてにけり君はいり給てたゝひとりふ
ゝすゝしなるひとへをひとつきてすへりいてにけり君はいり給てたゝひとりふ
したるをこゝろやすくおほすゆかのしもに二人はかりそふしたるきぬをゝしや
したるをこゝろやすくおほすゆかのしもに二人はかりそふしたるきぬをゝしや
りてより給へるにありしけはひよりはもの〱しくおほゆれとおもほしうもよ
りてより給へるにありしけはひよりはもの〱しくおほゆれとおもほしうもよ
らすかしいきたなきさまなとそあやしくかはりてやう〱みあらはし給てあさ
らすかしいきたなきさまなとそあやしくかはりてやう〱みあらはし給てあさ
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ましくこ〱ろやましけれと人たかへとたとりてみえんもおこかましくあやしと
ましくこ〱ろやましけれと人たかへとたとりてみえんもおこかましくあやしと
おもふへしほいの人をたつねよらむもかはかりのかるゝこゝろあめれはかひな
おもふへしほいの人をたつねよらむもかはかりのかるゝこゝろあめれはかひな
ふおこにこそおもはめとおほすかのおかしかりつるほかけならはいかゝはせむ
ふおこにこそおもはめとおほすかのおかしかりつるほかけならはいかゝはせむ
におほしなるもわろき御こゝろあさゝなめりかしやう〱めさめていとおほえ
におほしなるもわろき御こゝろあさゝなめりかしやう〱めさめていとおほえ
すあさましきにあきれたるけしきにてなにのこゝろふかくいとおしきようゐも
すあさましきにあきれたるけしきにてなにのこゝろふかくいとおしきようゐも
なし世中をまたおもひしらぬほとよりはされはみたるかたにてあえかにもおも
なし世中をまたおもひしらぬほとよりはされはみたるかたにてあえかにもおも
ひまとはすわれともしらせしとおほせといかにしてかゝることそとのちに思め
ひまとはすわれともしらせしとおほせといかにしてかゝることそとのちに思め
くらさむもわかためにはことにもあらねとあのつらき人のあなかちになをつゝ
くらさむもわかためにはことにもあらねとあのつらき人のあなかちになをつゝ
むもさすかにいとをしけれはたひ〱の御かたゝかへにことつけ給しさまをい
むもさすかにいとをしけれはたひ〱の御かたゝかへにことつけ給しさまをい
とかういひなし給ふたとらむ人は心えつへけれとまたいとわかき心地にさこそ
とかういひなし給ふたとらむ人は心えつへけれとまたいとわかき心地にさこそ
さしすきたるやうなれとえしも思わかすにくしとはなけれと御心とまるへきゆ
さしすきたるやうなれとえしも思わかすにくしとはなけれと御心とまるへきゆ
へもなき心ちしてなをかのうれたき人の心をいみしくおほすいつくにはいまき
へもなき心ちしてなをかのうれたき人の心をいみしくおほすいつくにはいまき
れてかたくなしとおもひゐたらむかくしうねき人はありかたきものをとおほす
れてかたくなしとおもひゐたらむかくしうねき人はありかたきものをとおほす
しもあやにくにまきれかたふおもひいてられ給この人のなま心なくわかやかな
しもあやにくにまきれかたふおもひいてられ給この人のなま心なくわかやかな
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るけはひもあはれなれはさすかになさけ〱しくちきりをかせ給人しりたるこ
るけはひもあはれなれはさすかになさけ〱しくちきりをかせ給人しりたるこ
とよりもかやうなるはあはれもそふ事となむ昔人もいひけるあひおもひたまへ
とよりもかやうなるはあはれもそふ事となむ昔人もいひけるあひおもひたまへ
よつゝむことなきにしもあらねはみなから心にもえまかすましくなんありける
よつゝむことなきにしもあらねはみなから心にもえまかすましくなんありける
またさるへき人〱もゆるされしかしとかねてむねいたくなん忘てまちたまへ
またさるへき人〱もゆるされしかしとかねてむねいたくなん忘てまちたまへ
よなとなを〱しくかたらひ給人の思侍らんことのはつかしきになんえきこえ
よなとなを〱しくかたらひ給人の思侍らんことのはつかしきになんえきこえ
さすましきとうらもなくいふなへて人にしらせはこそあらめこのちいさきうへ
さすましきとうらもなくいふなへて人にしらせはこそあらめこのちいさきうへ
人につたへてきこえんけしきなくもてなし給へなといひをきてかのぬきすへし
人につたへてきこえんけしきなくもてなし給へなといひをきてかのぬきすへし
たるとみゆるうす衣をとりていて給ぬこ君ちかふふしたるをおこし給へはうし
たるとみゆるうす衣をとりていて給ぬこ君ちかふふしたるをおこし給へはうし
ろめたうおもひつゝねけれはふとおとろきぬとをやをらをしあくるにおいたる
ろめたうおもひつゝねけれはふとおとろきぬとをやをらをしあくるにおいたる
こたちのこゑにてあれはたそとおとろ〱しくとふわつらはしくてまろそとい
こたちのこゑにてあれはたそとおとろ〱しくとふわつらはしくてまろそとい
らふ夜中にこはなそとありかせ給とさかしかりてとさまへくいとにくゝてあら
らふ夜中にこはなそとありかせ給とさかしかりてとさまへくいとにくゝてあら
すこゝもとへいつるそとて君ををしいてたてまつるにあかつきちかき月くまな
すこゝもとへいつるそとて君ををしいてたてまつるにあかつきちかき月くまな
くさしいてゝふと人のかけみえけれはまたおはするはたそとゝふ民部のおもと
くさしいてゝふと人のかけみえけれはまたおはするはたそとゝふ民部のおもと
なめりけしうはあらぬおもとのたけたちかなといふたけたかき人のつねにわら
なめりけしうはあらぬおもとのたけたちかなといふたけたかき人のつねにわら
Page 93
はるゝをいふ也けりおい人これをつらねてありきけるとおもひていまたゝ今た
はるゝをいふ也けりおい人これをつらねてありきけるとおもひていまたゝ今た
ちならひ給ひなむといふ〱われもこのとよりいててくわひしけれはえはたを
ちならひ給ひなむといふ〱われもこのとよりいててくわひしけれはえはたを
しかへさてわたとのゝくちにかひそひてかくれたち給へれはこのおもとさしよ
しかへさてわたとのゝくちにかひそひてかくれたち給へれはこのおもとさしよ
りておもとはこよひはうへにやさふらひ給つるおとゝひよりはらをやみていと
りておもとはこよひはうへにやさふらひ給つるおとゝひよりはらをやみていと
わりなけれはしもに侍つるを人すくななりとてめしゝかはよへまうのほりしか
わりなけれはしもに侍つるを人すくななりとてめしゝかはよへまうのほりしか
となをえたふましくなむとうれふいらへもきかてあなはら〱いまきこえんと
となをえたふましくなむとうれふいらへもきかてあなはら〱いまきこえんと
てすきぬるにからふしていてたまふなをかゝるありきはかろ〱しくあやしか
てすきぬるにからふしていてたまふなをかゝるありきはかろ〱しくあやしか
りけりといよ〱おほしこりぬへしこ君御くるまのしりにて二条院におはしま
りけりといよ〱おほしこりぬへしこ君御くるまのしりにて二条院におはしま
しぬありさまの給ひておさなかりけりとあはめ給てかの人のこ〱ろをつまはし
しぬありさまの給ひておさなかりけりとあはめ給てかの人のこ〱ろをつまはし
きをしつゝうらみ給いとをしうてものもえきこえすいとふかうにくみ給へかめ
きをしつゝうらみ給いとをしうてものもえきこえすいとふかうにくみ給へかめ
れは身もうくおもひはてぬなとかよそにてもなつかしきいらへはかりはし給ま
れは身もうくおもひはてぬなとかよそにてもなつかしきいらへはかりはし給ま
しき伊与の介におとりけるみこそなと心つきなしとおもひてのたまふありつる
しき伊与の介におとりけるみこそなと心つきなしとおもひてのたまふありつる
こうちきをさすかに御そのしたにひきいれておほとのこもれりこ君をおまへに
こうちきをさすかに御そのしたにひきいれておほとのこもれりこ君をおまへに
ふせてよろつにうらみかつはかたらひ給あこはらうたけれとつらきゆかりにこ
ふせてよろつにうらみかつはかたらひ給あこはらうたけれとつらきゆかりにこ
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そえおもひはつましけれとまめやかにのたまふをいとわひしと思たりしはしう
そえおもひはつましけれとまめやかにのたまふをいとわひしと思たりしはしう
ちやすみ給へとねられ給はす御すゝりいそきめしてさしはへたる御ふみにはあ
ちやすみ給へとねられ給はす御すゝりいそきめしてさしはへたる御ふみにはあ
らてたゝうかみにてならひのやうにかきすさひたまふ
らてたゝうかみにてならひのやうにかきすさひたまふ
うつせみのみをかへてける木のもとになを人からのなつかしきかなとかき
うつせみのみをかへてける木のもとになを人からのなつかしきかなとかき
たまへるをふところにひき入てもたりかの人もいかにおもふらんといとをしけ
たまへるをふところにひき入てもたりかの人もいかにおもふらんといとをしけ
れとかた〱おもほしかへして御ことつけもなしかのうす衣はこうちきのいと
れとかた〱おもほしかへして御ことつけもなしかのうす衣はこうちきのいと
なつかしき人かにしめるをみちかくならしてみゐたまへりこ君かしこにいきた
なつかしき人かにしめるをみちかくならしてみゐたまへりこ君かしこにいきた
れはあねきみまちつけていみしくの給ふあさましかりしにとかうまきらはして
れはあねきみまちつけていみしくの給ふあさましかりしにとかうまきらはして
も人のおもひけむことさり所なきにいとなむわりなきいとかう心おさなきをか
も人のおもひけむことさり所なきにいとなむわりなきいとかう心おさなきをか
つはいかにおもほすらんとてはつかしめ給ひたりみきにくるしう思へとかの御
つはいかにおもほすらんとてはつかしめ給ひたりみきにくるしう思へとかの御
てならひとりいてたりさすかにとりてみ給かのもぬけをいかに伊勢をのあまの
てならひとりいてたりさすかにとりてみ給かのもぬけをいかに伊勢をのあまの
しほなれてやなと思もたゝならすいとよろつにみたれてにしの君も物はつかし
しほなれてやなと思もたゝならすいとよろつにみたれてにしの君も物はつかし
き心ちしてわたり給にけりまたしる人もなきことなれは人しれすうちなかめて
き心ちしてわたり給にけりまたしる人もなきことなれは人しれすうちなかめて
ゐたりこきみのわたりありくにつけてもむねのみふたかれと御せうそこもなし
ゐたりこきみのわたりありくにつけてもむねのみふたかれと御せうそこもなし
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あさましと思ひうるかたもなくてされたる心にものあはれなるへしつれなき人
あさましと思ひうるかたもなくてされたる心にものあはれなるへしつれなき人
もさこそしつむれいとあさはかにもあらぬ御けしきをありしなからのわか身な
もさこそしつむれいとあさはかにもあらぬ御けしきをありしなからのわか身な
らはととり返すものならねとしのひかたけれはこの御たゝうかみのかたつかた
らはととり返すものならねとしのひかたけれはこの御たゝうかみのかたつかた
に
に
うつせみのはにをく露の木かくれてしのひ〱にぬるゝそてかな
うつせみのはにをく露の木かくれてしのひ〱にぬるゝそてかな